「で、どうやって、母親を見つけるの?」
テーブルを囲み、これからの事を話し合います。
早速シモーネさんが、質問を投げかけてきました。
確かに、この子の情報は少なすぎます。
悪い人は世の中にごまんといるのです。
その中からピンポイントで探し出すのは中々至難の業です。
「この子の家に行って手がかり探してみる?」
「……あると思うか?」
ティムさんの言葉に、ゴリさんが一刀両断しました。
確かに、この子の家に行っても大した収穫は得れないでしょう。
「…………」
「『手当り次第潰せばいいだろ?』と申しております」
「……馬鹿かお前は?俺らが捕まるわ」
皆さん頭を抱えて悩みますが、誰もいい案が浮かびません。
女の子は終始不安な顔で、私達の話を聞いていました。
「……あいつに頼むか……」
ポツリとゴリさんが仰りました。
その言葉を聞いた皆さんは一斉にゴリさんの方を見ます。
「誰ですか?あいつって?」
「ああ、昔馴染みの友人だ。……ただ、相当変わりモンでな……」
私が問うと、ゴリさんが教えてくれました。
ゴリさんに変わり者と言われる逸材ですか?
相当ですね……
とりあえず、このままこうしていても先に進めないという事で、明日ゴリさんのご友人の方の元へ行くことが決定しました。
しかし、そのご友人の方は人嫌いらしく、大勢では行けないと言うことになり、ゴリさん、ヤンさん、シモーネさん、私の4人が行く事に決まりました。
ルイスさん、ティムさん、ジェムさんはお留守番兼子守り役です。
ジェムさんは案の定「兄貴と一緒に行きます!!」と騒いでおりましたが、「あんましつこいと師弟の縁を切られるぞ?」とルイスさんに言われ大人しくなりました。
ルイスさん、たまにはいい事を言います。
まあ、確かにジェムさんはヤンさんの腰巾着ですからね。
一緒にいないと不安なのでしょう。
「さあ、明日に備えるぞ」
ゴリさんは、そう言うなりミレーさんに何かをお願いしておりました。
◇◇◇
「ちょっと!!本当にこんな所にいるの!?」
私達は今、森の道無き道を歩いております。
当然、シモーネさんから文句の一つや二つ出てまいります。
獣道すらない森の中を、ゴリさんを信じて突き進みます。
「いや~、昔は道だったんだがなぁ。こんな草木だらけになっているとはな……歳を取ったはずだ。あははははは!!!」
「笑い事じゃないわよ!!こんな事なら、私が留守番してたわよ!!」
シモーネさんは、飛び交う虫を払いながらゴリさんに文句を申しております。
しかし、シモーネさんは留守番できませんよ。ネリさんはシモーネさんを見ると泣き出してしまいますから。
シモーネさんの愚痴を聞きながら、どれ程歩いたしょうか?ようやく開けた場所に辿り着きました。
その場所は眩しいほどの木漏れ日が降り注ぎ、一面の芝生がそよそよと風に吹かれていました。
それはまるで、御伽噺の世界に入り込んだような幻想的な空間でした。
今まで愚痴を言っていたシモーネさんも、黙ってこの空間を眺めておりました。
「──誰じゃ?」
目の前の大木から声がかかりました。
見ると、大木の枝に一人の女性の姿が見えました。
「おお、久しぶりだな、シャーロット。俺だ」
ゴリさんが大木を見上げながら返事を返しています。
すると、女性の方は何メートルもある高い枝から飛び降りました。
「危ない!!」とシモーネさんが叫びましたが、女性の体はゆっくり地上へと着陸いたしました。
木漏れ日の中、舞い降りて来たその姿はまるで天女のようでした。
「なんじゃ、久しい声だと思い降りて来たが、ルッツか」
「久しぶりの友人になんだとは、ご挨拶だな」
ゴリさんのご友人、シャーロットさんは言葉を失うほど、お美しい方でした。腰まである美しい銀髪に切れ長の目。そして強調する所は強調し、締まるところは締まっている羨ましいほどの体つき。この様な方がゴリさんのご友人とは……。
正しく、美女と野獣。
──本当に天女の様な方です。……でも、それより……
「ゴリさん、名前あったんですか!?」
「しかも普通!!面白味も何もないわ!!」
ゴリさんに名前にあったことに驚きました。
シモーネさんも驚いたらしく、私に続いて一言申しておりました。
「お前ら、ぶっ飛ばすぞ!!!」
案の定、ゴリさんの雷が落ちました。
「はっはっはっ!!愉快な奴らじゃな。そ奴らはお前の嫁か?」
「「違います!!!!」」
思わず、シモーネさんと返事が被りました。
シャーロットさん、勘弁してください。私にも一応、選ぶ権利はあります。
「……お前ら、そこまで否定されると流石の俺も凹むぞ?」
いや、否定されないとでも思っていたんですかね?
シモーネさんに至っては、苦虫を噛み潰したような顔をしていますよ?
「はははは!!!──で、妾に何用じゃ?喜劇を見せに来た訳じゃなかろ?」
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