さて、困りました。
私は今ナタリーさんを担いでいる状態です。
そこにまさかの豚さん登場。しかも銃付きです。
──飛び道具は卑怯です。
「さあ、ナタリーを返してもらおう」
「……因みに、ナタリーさんをどうするつもりなんですか?」
「そいつは、バーリー公爵に嫁ぐことが決まってる」
バーリー公爵?
「バーリー公爵と言えば、一代で富を気づいたって有名ね。でも、バーリー公爵ってだいぶ高齢じゃなかったかしら?」
さすが、シモーネさん。男性に関しての情報は右に出る者はおりません。
「そうだ。あの爺さん、下の方も今だに健在でな。若い娘を探していたんだ。そこで、ナタリーの事を思い出してな。あの爺さんがくたばれば財産はナタリーの物になり、ワシの物になる」
ナタリーさんを生贄にするつもりでしたか。
ギリギリの所でしたね。
「せっかく、結婚相手を見つけてやったのに、ナタリーの奴そんな所には行かんと言い出してな。頭を冷やすために、ここに入れといたんだ」
「……ナタリーさんの事は分かりましたが、他の女性の方はどうしたんです?」
他の女性の方もその公爵様に嫁がせると言う訳ありませんよね。
「ああ、他の女はワシの愛人だった女だ。飽きたんでな。適当に売りさばこうと思って、ここに入れといたんだ」
──そう言えば、ナタリーさんの父親はクズでした。
「さあ、ナタリーを渡してもらおうか?」
「そこまで聞いて、渡す馬鹿はルイスさんぐらいですよ」
さて、困りましたね。
私はお荷物を抱えてるので、逃げ切れるかどうか。
「……そうか。まあ、この屋敷の秘密を知られたからな。はなから生きて帰すつもりはないわ!!」
パンッパンッ!!
「──つっ!!!」
「マリー!!!」
足に銃弾が当たり、片足が使えなくなりました。
片足でナタリーさんを抱えているのは結構厳しいです。
──こんなに騒がしいのに目が覚めないとは、どんな神経しているんですかね。
「はははっ!!その足では動けまい!!安心しろ一発で仕留めてやる!!」
豚さんが再び銃口をこちらに向けてきました。
いよいよまずいと思った時──
「マリー!!!大丈夫!?」
「…………」
ギリギリの所で、ティルさんとヤンさんが駆けつけて来てくれました。
正直、遅いです。
「な、なんだお前達は!?ワシが誰だか分かっているのか!?」
「豚でしょ?」
ティルさんは素早く銃を奪い、ヤンさんが豚さんを締め上げています。
「お前、撃たれたのか!?」
あら?ジェムさん、いつからそこにいたんです?
「私よりナタリーさんをお願いします」
「わ、分かった!!」
「マリー、足を見せて」
シモーネさんが私の足を手当している間に、豚さんは外へ連れていかれてしまいました。
「ゴリさん達がいるはずだから大丈夫よ」
──出来れば一発殴っておきたかったんですが。
まあ、仕方ありません。しっかり法の裁きを受けてください。
◇◇◇
こうして、ナタリーさん監禁事件は幕を閉じました。
ミレーさんは、私が怪我したことを知ると泣いて謝られ、ゴリさんには小言を言われ、散々な日でした。
囚われていた女性達は保護され、ちゃんとした生活に戻ったようです。
……ナタリーさんは、流石に今回の件が堪えたらしく、随分大人しくなりました。
因みに、豚さんは爵位返上の上死刑、領地没収、屋敷の取り壊しが決まりました。
本日のお給金……ナタリーさん奪還80000ピール+怪我手当30000ピール+ミレーさんからの見舞金20000ピール
借金返済まで残り5億7千980万7100ピール
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