ーーAM10:30ーー
ダフ、メビウス、Vローダー、そしてブラウン管のサングラスガイが織りなすスピリチュアルな音楽が止まり、気温がぐんぐん上昇してゆく、トキオグラードのデイタイム。
「おぉい、腹減ったなぁ」
「フン、まだ10時半。ランチという時間でもないぞ。早すぎだろ」
「極悪の太陽の下、美しさと若さに身をまかせ走ってきちゃって、アーモンドミルクとマヌカハニー、全粒粉のチーズサンドイッチを食べただけだからなぁ」
「フ、十分すぎだ」
「イヤイヤ、昼飯を早く食べるくらいは、体にはいぃのよ。深夜の炭水化物よりはねぇ」
「フフフン、詭弁だな」
「まぁまぁ、そんなこと言わないでさ」
「フフ、夜が思いやられるな。それで、何を食す?」
「そうねぇ、ポポルも起きてこないし、買い物にでも行って、流行りのポークビンダルーでも作りましょうかね」
「フヒヒ、随分とチャラけた、まるで孤独な人民女子みたいなランチタイムじゃないか」
「オーガニックも、資本よ、資本。体の、そして、偉大なる、あぁ、我らが共産党バレー様のね」
「フフン、お前にしては皮肉めいたセリフだな。いいだろう。ブランチタイムに耽る、爛れた人民文化をオブザベイションしてやろうじゃないか」
「オゥケィ!決まりだ。帰ってくる頃には、さすがにポポルも起きてくるだろぅ!」
いつのまにか、ブラウン管のテラヴィジョンはCMに変わり、キュートなVローダーは沈黙を守っている。
クーラーシステムのおかげで、ダフの汗もとっくに乾いたし、シャワーも浴び終えたところだ。
シャワーどころか、たっぷり浴槽にも浸かって、血流を巡らして。
「体の芯から、温めなくっちゃあね。むくみは怖いからねぇ」
短髪なので、ヘヤドライヤーも秒殺。
「ふぅ、気持ちの良いことで」
ジョギングと変わらないノースリーヴに身を包む、ダフ。鍛えられたしなやかな筋肉が、裾からその肉体性を主張している。
メビウスの格好はといえば、細身の長身にロン毛、鋭い眼鏡をかけており、格闘ゲームのキャラクターとしても通用する肉感のダフとは対照的だ。
メビウスの冷たい目元は、初めて会う人を警戒させてしまう。人懐っこいポポル、兄貴肌のダフと並んで、オートマティズモはバランスをたもっているのだ。
しかし、本日、まだポポルは起きてこない。
ダフとメビウス、2人がストリートを威圧し、マーケットーーツタンカーメン中野スタンツィヤ店ーーへと足を向けた。
ダフのワイヤレスイヤホンにツァイトガイスト反応はない。
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