オートマティズモ

社会主義国家と化した異世界日本で召喚獣が思想バトル!
小林滝栗
小林滝栗

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公開日時: 2020年10月29日(木) 20:29
文字数:1,060

爆乳刑事のご参上から退散したオートマティズモの男たちは、歌舞伎デレヴニヤに依然居残り、国営企業マチュヤに入店する。


ビーフストロガノフ丼に490日本ルーブルを電子決済すれば、


「ブルブル♫」


間の抜けたメロディが耳を刺激し、店の文化性をおとしめてゆく。


共産党バレーでは、国営のファウストフードが充実していて、牧場ソフホーズで買い上げられた国産牛肉は、そこそこ美味しい。

稲作ソフホーズのコメを食し、すくすくと成長した牛たちは、国土国家の礎を築く。


「さっきのオタクさんたちも、ビーフストロガノフ丼とか好きなんだろうなぁ」


アイドルライブ終了後、マチュヤに集って、脂汗をかきかき『ボーイズ・ライフ』精神で親交を深める男たちの顔を想像し、店内に充満する老年男たちの孤独な振る舞いと見比べながら、ポポルはトキオグラード・ナイトライフの軽薄さに想いを馳せた。


どうせ、そういう男たちの食べるサラダとかって、気休めのダイエットでしかなくて、農薬まみれでなくとも、水で洗っちゃって栄養価とかないから、しなびた葉っぱをむしやりむしやり、肉を挟んでむしやりむしやりと、漫然と消化したところで、脂汗はひかないし、孤独症なんて治りやしない。


あぁ、あぁ嫌だねぇ……


ファウストフードネットワークの完備は、人民の飢えを遠ざけるが、いっぽう食の地域性を毀損していて、生活に退屈さを生じさせるので、たとえば、ダフは料理の熟練者だ。

もちろん、トキオグラードには異国情緒を演出するたくさんの飲食店が溢れていて、社会主義の世界連帯、つまり第4次インターナショナルの成果と、書記長殿は胸を張るだろう。


そんな書記長の元部下、メビウスはザ・パルタイの官僚時代を反芻し、味気ない党員食堂と、ファウストフードのどちらがよりヒュウマニズムを実現させるのか。

フン、チキンレースの馬鹿試合だな、

「フフフッ」

うつかり声が漏れ、ポポルは怪訝そうな顔をする。


ダフは、ビーフストロガノフ丼をずいぶんとぬるいコップ水で流し込みながら、褒めちぎってみせる。

「まぁ、そこそこいけるよな。その辺の適当な人民食堂に比べりゃ、マニュアル指導も立派、立派!」

「えぇ?! これだったら、ダフさんの料理が全然美味しいですよー!」

「いやぁ、嬉しいこと言ってくれるじゃないのぉ」

……悪い気はしないダフ。


「フン、食べ終わったら、とっとと退散するぞ」

「あ、はいはい。急ぎます!」

ファウストフードは、官僚時代を思い出させるからか、苛立ちを隠せないメビウスに、ポポルは気を遣った。


「同志、ありあたあしたー」

「ありあたあしたー」

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