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sadachi
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枠組み

公開日時: 2021年11月19日(金) 18:00
文字数:1,713


統計物理学の基本的枠組みは藤坂博一『非平衡系の統計力学』(産業図書)に沿い,それを生物学に適用してみた.まず,個体を統計物理学で考える粒子と同一視し,お互いに区別出来る粒子はボルツマン統計,区別出来ない粒子はボース統計に従うとする.さらに個体数の分布が生物多様性の中立説 (Hubbell,2001) のように大域的には対数分布を取るとする.その際にどの程度中立的な対数分布から見て適応的と考えられる領域にデータが入るかを考察する.k番目に個体群密度の大きい集団の個体群密度をNkとおくと,a, bをパラメータとしてNk = ablnkとなる.この時,スピンと同様の概念として,個体群密度が+1増える傾向と-1減る傾向を考える.スピンは半整数だが,物理モデルではないので±1とする.個体群密度が+1増える確率,極性をκと–h,-1減る確率をκ'と+h(極性は元に戻る方向性を示す)とし,その確率分布をqsをパラメータとしたPm = eq_shとおけば,κ= eq_sh/Z, κ' = eq_sh/Z, Z = eq_sh + eq_shとなる.Zが分配関数となる.この場合,ヘルムホルツの自由エネルギーFが個体群密度と見なせる.また,h = Fが全体のトレンドと考えられる.ここでLee-Yangの定理にあるような正の境界条件を仮定する.つまり,個体群の格子の端は+の極性と結ばれており,個体群の端では個体が増えやすい傾向を示している.ここで個体の移動度が少なくギブズの自由エネルギーG = Nkと見なせるとすると,個々の個体が自由エネルギーのソースと見なせることになる.絶対温度Ts = qs–1 = b,相対エントロピー/自己情報量をS = lnkと見なせば,Nk = ablnkG = HTsS(ただしHはエンタルピーで、自己エネルギーUとほぼ等価)と同等と見なせる.ここでエントロピーとして相対エントロピーを採用し,それはカルバック・ライブラー情報量∑i=1npiln(pi/qi)においてn = 1, pi = 1, qi = 1/kとおいた,1番目の集団からk番目の集団への相互作用の確率の逆数の対数となる.Nが充分大きい時,相関関数Cqとスペクトル強度IqCq(t) = Cq(0)e–γ_qt, Cq(0) = 4U2κκ'/γq2, Iq(ω) = Cq(0)2γq/(ω2q2), γq = 2Uqsとなる.温度が臨界温度より低い場合,相関関数は一意ではなく,様々な相がある.

 

h = Fで系が刺激されると,系全体の極性(この場合、集団の構成因子の増加・減少トレンド)はM = Nk · Z–1(eq_sheq_sh) = Nk · tanh(qsh)となる.突発性の極性ではM ≠ 0が取れる.ワイス場をWとするとh = WMmeanよりMmeanMの解の1つとなる.ワイス場としては,Ts > WでカオスとなりTs < Wで秩序が生まれ,Wが系に規則性が生まれるTsの上界を決める.Tsが大きければ少数集団に限定された系の適応性も大きいと考えられるので,最適状態はW ~ Tsと考えられる.臨界点の近くでは臨界温度TcTsで,Mmeanは小さくキュリー=ワイス則よりχT = U'(qs) ∝ |TsTc|–1となる.Tcは相の不連続性の基準,Wは秩序のある状態と無秩序の状態の境界を決めるので,概念としては異なる.TsTc以上だと上昇トレンドが構成因子の独占に変換し得る.系の内部エネルギーはTs < Tcの時はE(Ts) = –Nバーhtanh(qsh) ≈ – Nバーqsh2となり,Ts > TcならE = 0となる.秩序変数Sに関してはV = 1とおくと,臨界点ではf{S} = f0 + A'S2 + B'S4h'Sで規定され,f = FGがハミルトニアン,h'が外部からのフローでf0, A', B'が関数の展開による係数でB' > 0,A' = A''(TsTc)の条件が入る(A''は定数).平衡状態では∂f/∂S = 4 B'S3 + 2A''(TsTc)Sh' = 0となり,その解が秩序変数である.h' = 0ならS = 0がTs > Tcでの唯一の解で,Ts < Tcでは±(TcTs)1/2が存在し,h'が対称性を破る.これにより秩序の程度を測ることが出来る.


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