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sadachi
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第1部 第13章 健康の館

予防医学

公開日時: 2021年10月29日(金) 18:00
文字数:1,139


コウはオレっ娘で,敬語が使えなかった.どこから来たのかもよく分からない存在だったが,円卓にはいつの間にか定着していた.一人でゲームをしていることも多かったが,運動能力も含めて能力的なポテンシャルは高く,「アカデミー・サーベイヤー」で医学の担当になった時は,皆から適役だと思われた.コウが鼻歌を歌いながら「健康の館」の入り口で生体認証を受け,中に入ると-そこは病院のような場所で,窓の外に植物園も見えた.

 

「コウさん,あなたをどう取り扱っていいのか,こちらも殆悩んでいます.」「管理者」がイヤホン越しに声をかけて来た.「でも,取り敢えずは通常通りの対応でいいでしょう.まずは臨床医学の代表として予防医学から始めましょう.日本人の寿命はどれほどか知っていますか.」「平均寿命は2019年の時点で男性81.41歳,女性87.45歳.健康寿命は2016年で男性72.14歳,女性74.79歳.10年くらいのギャップがある.」「では,日本人の主な死因は何ですか.」「ガン,心疾患,脳血管疾患で.感染症ではなく生活習慣病が主流.若年層は自殺,不慮の事故,ガンで死んでいる.小児がんは生活習慣病ではない.」「ガンを防ぐ為にはどうしたらいいですか.」「栄養をバランス良く摂り,食生活には変化をつけ,食べ過ぎを避けて脂肪は控えめに,お酒はほどほど,タバコは吸わず,ビタミンと繊維質をよく摂り,塩辛いものは少なく熱いものはさまし,焦げは避け,かびには注意,日光に当たりすぎず,スポーツを適度に,体を清潔にすること.本当に生活習慣病だということだ.」「では,動脈硬化疾患はどのようにして起こりますか.」「血液由来のコレステロールが過剰になったり,インスリン抵抗性があること.治療法には食事療法,運動療法,禁煙,薬物治療がある.」「では,糖尿病はどのようにして起こりますか.」「若者には1型,中高年には2型が多い.1型は膵臓のβ細胞が自己免疫で破壊されて起こる.2型は生活習慣病.インスリンの血糖値調節作用が不足して起こる.口渇,多飲,多尿,易疲労感,体重減少が症状で,酷くなると糖尿病性昏睡になる.神経障害,網膜症,腎症などの慢性合併症もある.1型は生涯インスリン治療を行い,2型は食事療法,運動療法,薬物治療,インスリン治療,手術などが対策.」「では,肥満とは何ですか.」「肥満は体脂肪が過剰に蓄積した状態で,体質性のものと症候性のものに分かれ,症候性のものが肥満症.肥満は病気の原因の宝庫で,ホルモン障害が引き起こされている.高血糖状態に脂肪細胞が働きかけて肥大化し,ホルモンを分泌し,インスリン抵抗性が付与され,高血圧になり,メタボリック症候群になる.食事療法,運動,手術,薬物治療などが対策.」


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