「なっ!?」
『ビガッ、ガガガガガッ! ガビュウウーッ!!』
「おいおい、冗談だろ!? こんな時にっ……!!」
ポンコツに異常が発生すると同時にクロニカの身体も自由を失う。視界にも激しいノイズが走り、赤色の古代文字が浮かび上がる。
─ YOU DON'T HAVE THE RIGHT TO STRUGGLE ─
─ YOU NOT READINESS ─
─ YOU DON'T HAVE THE RIGHT TO STRUGGLE ─
─ YOU NOT READINESS ─
─ YOU DON'T……YOU DON'T……─
解読不能な古代文字が視界を埋め尽くしてクロニカは混乱する。
「く、くそぉっ! 何なんだよ、一体……!!」
『ガガガガッ、ガガッ、ビガガガーッ!!』
────バシャンッ。
ついにポンコツとの融合が解除され、白銀の鎧も粒子となって消えていく。
「……あっ」
白銀の鎧を失い、全裸でファンタズマの前に放り出されたクロニカは絶句する。
〈ヴルルルルッ……!〉
ファンタズマは地面に爪を立ててクロニカを睨む。
その鋭い眼光に睨まれただけで彼の身体は硬直し、まるで金縛りにあったかのように身動ぎ一つ出来なくなる。
(……ヤバイ)
(……ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!!)
(これ、死……ッ!!)
クロニカは躙り寄るファンタズマを前にして二度目の死を覚悟する。ファンタズマは鋭い爪を振り上げ、彼の身体を引き裂こうとした……
しかし、ガルーダが猛スピードでファンタズマに体当たりして阻止。黒い獣を突き飛ばし、クロニカを守るように分厚いフロントカウルを盾のように展開する。
「はっ、ガ、ガルーダ!?」
〈ヴヴンッ!〉
「……悪い、助かった!!」
ガルーダを見て身体の自由を取り戻したクロニカは急いでポンコツを拾い上げる。
「おい、おいっ! しっかりしろポンコツ!!」
『……』
「頼むよ、目を覚ませ! お前が居ないと困るんだって!!」
『……』
「ポンコツゥゥーッ!!」
ファンタズマの攻撃でガルーダの装甲が弾け飛ぶ。
「ガ、ガルーダ!!」
〈ヴヴッ!〉
苦しげな音を上げながらもガルーダはファンタズマからクロニカを庇う。
「や、やめろ! ガルーダ! オレは大丈夫だから、お前だけでも村に戻れ!!」
〈ヴヴッ……〉
「ガルーダ!!」
ガルーダは決して動こうとしない。ファンタズマの爪で駆動系や骨格にまでダメージを受けてもクロニカを抱き込むように装甲を開いて彼を守る。
〈ヴ、ヴヴヴッ!〉
「おい、聞けよ! お前だけで村に戻れって言ってるんだよ! このままじゃお前まで壊されるぞ!!」
〈ヴヴ……ッ!!〉
「ガルーダァァッ!!」
クロニカの目と鼻の先を黒い槍が突き出す。
「……!」
突き出した黒い槍はキリキリと音を立てて引き抜かれ、穴からはオレンジ色の循環液が血のように吹き出した。
〈……ヴッ〉
ヘッドライトが消え、ついにガルーダの機能が停止。クロニカの目の前でガシャリと崩れ落ちる。
「……あ、あ……」
戦う力と相棒を失い絶望したクロニカの瞳にファンタズマの姿が映る。リーダーのファンタズマは大きな青い目をギラリと輝かせ、ガルーダを貫いた尻尾をゆらりと揺らした。
「……ッ」
クロニカはペタリとその場に座り込み、ギュッとポンコツを抱きしめる。
「……結局、こうなるなら……何でオレをその気にさせるような事を言ったんだよ……」
悔しそうな顔でポンコツに爪を立て、クロニカはボロボロと涙を零す。
「……こんなことになるなら! 最初から諦めさせろよ! あの時に死なせてくれよ!!」
〈ヴァルルルルッ!!〉
「オレみたいな無能に! 中途半端な希望なんて持たせんなよ! このクソ野郎ーッ!!」
今まさに飛びかかろうとするファンタズマを涙目で睨みつけ、最後の抵抗とばかりにクロニカはポンコツを力の限りぶん投げる。
─────ズドォンッ!!
ポンコツがファンタズマにコツンと当たったのとほぼ同時に、ファンタズマの身体を爆炎が包み込む。
〈ヴァルルッ!?〉
「うわっ!?」
「はっはーっ! 燃えちまいな、クソッタレな怪物がぁ!!」
瞳を金色に輝かせ、大口径のライフル型魔動機を構えた赤毛の男が声高らかに叫んだ。
「な、なんだっ!?」
「はっはっはっ……ああ!? おい、お前そんなとこに居ると危ねえぞ! 燃えちまうぞ!?」
〈ヴァアアアアアアアアアアッ!!〉
身を巻く爆炎を振り払ってファンタズマは咆哮する。
〈ヴァルッ!〉
〈ヴルルルウッ!!〉
リーダーの叫びに反応し、後方に控えていた2匹のファンタズマが赤毛の男に向かっていくが……
「はぁッ!!」
物陰に隠れていた男の大剣で首を切り落とされ、身体だけで数歩進んだ後に絶命した。
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