「な、何で追ってきてるんだ、アイツ!?」
猛スピードで列車を追いかけてくるガルーダを見てクロニカは驚愕する。
『ちゃんと待っているように言ったのか!?』
「言ったよ! オレが戻るまで大人しくサメフの街で待ってろってさ!」
『でも追いかけてきてるよ!?』
「何でだよ!?」
ガルーダがクロニカの言いつけを守らなかった事など一度もない。ガルーダがクロニカの命令なしで行動するのは彼に危険が迫った時、もしくは……
ガルーダがその場に留まれなくなるような問題が発生した時だ。
『はっ! クロニカ、後ろを見ろ!』
「ああん!?」
『違うよ! ガルーダの後ろの方だよ!!』
クロニカは自分の背後を見てからすぐに振り返ってガルーダの後方に目を凝らす。
「……何だ、ありゃ?」
ガルーダの後方から砂埃を上げながら、大量のファンタズマが迫ってきていた。
〈ヴァルルルルルルルッ!〉
〈ヴァアアアアアアッ!〉
〈グルアアアアアアアアッ!〉
黒い獣達はクロニカが乗るテンペランス・パスを目指して疾走する。その数は100を越え、群れというよりもはや軍団。見たことも無い数のファンタズマが此方に向かってくる。
「おいおい……マジかよ!? 冗談だろ!?」
『な、なんて数だ!!』
「ママー! あれなにー? 沢山来てるよー?」
「え、あれは……」
後ろの席に座っていた子連れの女性がファンタズマの大軍に気づいて悲鳴を上げる。
「きゃああああっ!!」
「おい、おいおい、何だ!? 何だ、あれは!?」
「うわああああああっ!!」
「ファンタズマだあああああああっ!!」
女性の悲鳴を切欠に乗客達はパニックに陥る。混乱した彼らは前の車両に逃げようと一斉に走り出した。
「わああああああああああっ!」
『クロニカッ!』
「わかってる!」
クロニカはポンコツを抱えて窓を蹴り破り、逃げようとする乗客達に叫ぶ。
「お前ら、車掌さんに絶対に列車を止めるなと伝えとけ!!」
「お、おい! 嬢ちゃんはどうするんだよ!?」
「アンタも早く逃げないと!」
「うるせー! いいから車掌に伝えろ! オレがアイツらを食い止める!!」
此方を心配する乗客にクロニカはそう言って窓から飛び降りようとした。
「わぁぁぁぁっ、待て待て待てぇー! 死ぬ気かぁぁー!?」
「早まるなぁー! まだ諦めるのは早いぞー!!」
「そ、そうよ! まだ子供なのに命を無駄にしないでぇー!!」
「ぬぉわっ!?」
『うおおおっ!?』
そのまま列車を飛び降りようとするクロニカを乗客達が慌てて引き止める。
「いや、大丈夫だって! オレ超強いから!!」
「強い弱いの問題じゃないだろ!?」
「このスピードで降りたら……」
ブルォオオオオオオオン!!
蹴破った窓のすぐ傍にガルーダがやって来て『早く乗れ』と言わんばかりにサブアームを展開する。
『クロニカ!』
「ああ!」
乗客達を振り払ってクロニカはガルーダに飛び移る。ガルーダは展開したサブアームでクロニカを受け止め、彼を素早くシートの上に座らせた。
「お、おいっ!」
「心配いらねーよ、この列車とお前らはオレが守ってやるから」
「高ランクの討伐者だか知らないけど、一人でどうにかなる数じゃないでしょ!?」
「本当に死ぬ気か!?」
「オレは討伐者じゃねーよ」
心配して声をかけてくれる乗客に照れくさそうに笑いながらクロニカは言った。
「オレは、コイツの装着者だ」
そう言い残してクロニカはハンドルを切り、列車を離れてファンタズマの方に向かった。
「……」
『……いい人達だったね』
「はっ、オレが無能だと知らないからだよ。そうだと知ったら途端に突き放してくるさ」
『本当にそう思うのかい?』
「……今までのオレならな!」
────ガキョンッ!
ガルーダに搭載された全武装を展開し、ファンタズマの大軍に向けて斉射する。
ズドドドドドドドドドンッ!
ファンタズマはクロニカの先制攻撃を避けようともせずに直進。攻撃が全て命中しても進撃が少し遅くなった程度で、全くダメージを受けていない。
〈ヴァルルルルルルルオオオオオオ────ッ!〉
それどころか彼らの闘争心に火をつけ、黒い獣達は大地に猛々しい咆哮を轟かせながらクロニカへと迫る。
「よーし、これでアイツらはもうオレたちをブッ殺す事しか頭に無い筈だ」
『それで……あの数を相手にどう戦うつもりだい?』
「今のオレにひたすら殴る蹴る以外の戦法があると思うか?」
『あの数だよ?』
「あの数でも!」
クロニカはポンコツを被り、ガルーダの上でクロノスへと変身する。
「今のオレとお前なら負けないだろ!!」
変身を完了したクロニカは更にガルーダのスピードを上げてファンタズマの群れに突っ込んだ。
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