「……ここが森の中心部か?」
「そ、そうだと、思いたいです……」
怪物達を退けてアックス達はようやく森の中心部に辿り着く。
中心にあったのは不自然に開けた空間に聳え立つ巨大な一本の樹。人の手が加えられた様子は無く、遺跡らしい痕跡もない。
「……」
アックスは大樹に近づいて確認するが特に仕掛けらしいものは見つからなかった。
「アリィ、どうだ? 何か見えるか?」
「……何にも。ただ無駄にデカイだけの樹です。いやー、立派っすねー……」
アリィは眷能を発動して間近で樹を調べるが、その状態でも普通の植物にしか見えない。
「おいおい、ここが中心だろ? 何もねえじゃねえか! ひょっとして無駄足かぁ?」
「……いや、俺達の受けた依頼は森の調査だ。そこに何もなくても結果を報告すれば報酬は入る」
「はーっ、つまんねぇ! 骨折り損じゃねえか!!」
中心には遺跡があると思っていたドッガは不機嫌そうに愚痴を漏らす。
此処に辿り着くまで怪物達から執拗な襲撃を受けたというのに、待っていたのは無駄に広い空間と大きな樹だけ。謎の怪物から剥ぎ取った素材や調査結果の報告で報酬は得られるだろうが、それでも割りに合わないと言わざるを得ない。
「……もう予備の弾倉が一つしかないんだけど」
残弾を確認してメイリはくたびれた様子でボヤく。
「……アタシもです。生きて帰れますかね」
「狙撃手は不便だなぁ。俺達みたいに戦士になればいいのによー」
「アンタ達と一緒にしないでよ。あたし達の眷能は戦士タイプに全く向いてないんだから」
「あのぅ、リーダー。どうしますー? まだ奥に進みますか? それとも撤退しますかー?」
大樹を見つめながら考え込むアックスにアリィは声をかける。
調査と探索を続けようにも今の消耗度では厳しい。日も傾いてきており、夜の森であの怪物達の襲撃を切り抜けるのは難しいだろう。
「……そうだな、今日は此処で一旦戻るか」
他のメンバーの様子を見てアックスは撤退を選択。念の為にバッグから探知小刀を取り出して地面に突き刺す……
「!」
しかし探知小刀は突き立てた瞬間に折れてしまった。
「……」
「あれ、どうしました? リーダー」
「アリィ、下だ」
「ふぇ?」
「もう一度眷能を発動して地面を見てくれ」
「?」
アリィは不思議に思いながらアックスの言う通りに地面を見る。
「……わひゃあっ!?」
アリィは目に飛び込んできた光景に驚いて尻もちをつく。
「ど、どうしたのアリィ!?」
「あわわっ……」
「おいおい、大丈夫か? 何が見えたんだよ?」
「下、下です……この下! この地下に、とんでもない広さの遺跡があります!!」
彼女の目に映るのは巨大な地下遺跡。この開けた空間よりも巨大なドーム状の遺跡がパーティの足元に埋まっていた。
「え、下ぁ!?」
「はっはっ、マジか!? この下にあるのかよ、スゲーッ!」
「……なるほどな、あの大きな樹は目印か。どおりで目立つわけだ」
アックスの顔に小さな笑みが浮かぶ。
「遺跡への入り口は見つかるか? 恐らくこの近くにあるはずだが」
「え、えーと……えーとっ! あ、それっぽいのがありました!」
アリィは急いで起き上がり、一箇所だけ薄っすらと色が異なって見える場所に立つ。
「た、多分、此処が入り口っす!」
「よし、ドッガ。確かめてくれ」
「……本当かぁ? 俺には何にも見えねえぞ?」
「本当ですって! この辺りだけ色が違うんですよっ!」
「色が違うって言われてもよ、草に覆われてわかんねえよ……」
ドッガは半信半疑でその部分に触れて確かめる。暫くガサガサと探っていると金属製の取っ手らしき物に手が当たった。
「……マジだ、何か掴むところがあるぜ!」
「そこっす、そこ! 思いっきり引っ張ってみてください!!」
「あいよぉぉ……っと!」
ドッガは取っ手に手をかけて引っ張るがビクともしない。
「ぐぬあああああっ! くそっ、引っ張っても駄目だぞ!? 全然、開く気配がしねえ!!」
「ええっ!?」
「ぬああああああああっ!!」
「……ちょっと、ドッガの力で駄目なら無理よ? 作業用魔動機か何かを持ってこないと」
「……ドッガ、もういい。今日はもう撤退するぞ」
「こんのっ……くそがあああああっ!!」
諦めが付かないドッガは意地になって更に力を込める。
――――バギンッ!!
そして聞こえたのは金属製の何かが折れるような音。
「……」
「あーっ!」
「あーっ!!」
「ああーっ!?」
地下へと続く入り口の取っ手はボッキリと折れ、流石のアックスも頭を抱えた。
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