『ああ、ええと……』
「……おう、ポンコツ」
『良かったね! 相棒が直って!』
ガルーダに抱き着くクロニカにポンコツは言う。
「……笑いたけりゃ笑えよ!」
クロニカは真っ赤な泣き顔を晒して叫ぶ。
『わ、笑わないよ! 僕だって嬉しいんだから!』
「うるせー! 笑われた方がまだマシだぁ!!」
『ふわあああっ!?』
泣き顔を見られて恥ずかしいのか、それとも照れ隠しか。クロニカはポンコツを捕まえてむぎゅっと抱きしめる。
「お前もよーっ! 本当によーっ!」
『ふおおおおっ!?』
「ポンコツの癖して無茶しやがってバカヤロー! コラァーッ!」
『だ、だだっ、だって! クロニカが心配でっ……!』
「こんのぉーっ!!」
『あわわわっ! ちょっ、やめて! また飛んじゃう! また意識が飛んじゃうからーっ!!』
「……頭だけの癖に、カッコよかったぞ。バカヤロー」
そしてクロニカはポンコツの額に不器用なキスをした。
『ふ、ふわああああーっ!?』
「うるせー! 一々叫ぶな!」
『あだぁっ!』
『いい加減にこれくらい慣れろ!』
クロニカはポンコツをバチンと叩いて小脇に抱え、ガルーダに跨る。外れていた通信機を付け直してレイコに連絡を入れた。
「おい、聞こえるか! レイ……」
『こっちの台詞だ、クソニカァー!!』
付け直した通信機からはレイコの怒号が飛んでくる。
「ぶぅわっ!? な、何だよ!」
『お前マジでふざけんなよ!? ポンコツ持ってんのに何で攫われそうになってんのよ! 馬鹿じゃないの!?』
「し、仕方ないだろ! アイツの手下が持ってた武器で」
『うるさい! あんまり心配かけんな、バカニカ! 出し惜しみして負けるくらいなら最初から本気出しなさい!!』
レイコはそう言って乱暴に通信を切る。
「……」
『彼女は何て言ってた?』
「出し惜しみして負ける前に本気出せってよ……」
『……』
「ぐうの音も出ねぇ!」
細かい事情はともかく出し惜しんで負けたのは事実。自分の非力さを痛感したクロニカはポンコツに言った台詞を撤回すべきかどうかで悩んだ。
「……オレを笑うか? ポンコツ」
『笑わないよ』
「笑えよ! オレがくだらねー意地張ったせいであんなカッコ悪い事になって」
『僕もカッコ悪かったからおあいこさ! あんな弾丸1発で駄目になるんだから!』
そんなクロニカにポンコツは即答した。
「……」
『……』
「だよな!?」
『うん!』
2人はそう結論づけて笑い合う。クロニカは今日の反省を次に活かせばいいとガルーダのハンドルを握った。
「エリザベェェエエ――――ス!!」
そんな時に聞こえてきた雄叫び。クロニカとポンコツは心底ウンザリしながら声のする方を見る。
「まだ終わってねぇぞ、エリザベスゥ! 何めでたしめでたしやってんだよぉん!?」
泥だらけのバギーが叫びながら向かってくる。ガルーダの全力タックルを受けても無傷な化け物モヒカンにクロニカ達は重い溜息を吐いた。
『……彼は本当にエトなの?』
「オレが知りたいくらいだよ」
〈ヴーン!〉
クロニカはガルーダから降り、息を切らせてここまでやって来たバギーと対峙する。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜへぇー……絶対に、逃がさねぇぞ、エリザベス……」
「あのさ、何でオレなんかにそこまで執着するんだよ。オレよりいい女はいくらでも居るだろ?」
「エリザベスより、いい女なんていねぇぇ────っ!!」
バギーの心の叫びが荒野に響き渡る。
「……」
『……』
「お前に初めて会った時から一目惚れしたんだよぉ! 心にビビっと来たんだ! 確信したんだ! もうお前しかいねえと!!」
「……そうか」
「俺は本気で! お前に惚れてるんだ! エリザベス!!」
バギーは少年のように目を輝かせながらエリザベスへの愛を叫ぶ。その曇りなき瞳と反応から自分への恋慕が嘘偽りない本心だと察したクロニカはすーっと息を吸い……
「ポンコツ」
『何だい、クロニカ』
「やるぞ」
『おうよ』
コイツは此処で黙らせないと駄目だと確信し、静かにポンコツを装着した。
「ぬおっ!?」
「……お前の気持ちはちゃんと伝わったよ、バギー」
「エ、エリザベス! その姿は……!!」
「だから、こうしよう」
クロノスへの変身を完了し、瞳に翡翠色の輝きを灯しながらクロニカは言う。
「もう一度、オレに勝てたらお前の女になってやるよ」
折れた指が治ったのを確認して『絶対に負けないけどな』と心の中で呟きながら、クロニカはギュッと拳を握りしめた。
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