「ジョン坊や……?」
「へえっ!?」
「リ、リーダー!?」
赤黒い戦士へと変貌したジョンを見てアマンダ達は動揺する。
「こ、これは……」
ジョンの全身を覆う刺々しい赤黒い鎧は複雑に可動し、彼の動きを全く妨げない。それどころか鎧を装備する前よりも身体が柔軟に動く。仰々しい鎧を纏っているのに重さは全く感じず、まるで羽で出来た衣を纏っているかのようだ。
「ははっ……はははは!」
「ジョ、ジョン坊や?」
「ははははははっ……!」
全身に溢れんばかりの力が漲り、身体の奥底から湧き上がる衝動を抑えられずにジョンは笑いながら地面を殴りつけた。
────バゴンッ!!
大して力を込めずに放ったパンチは頑丈な床を容易く陥没させ、近くにいたアマンダとゲンツごと下の階に落下していく。
「うわあああああっ!?」
「おわーっ!!」
「はははははっ!」
ジョンは落下中に姿勢を変え、巻き込まれたアマンダとゲンツをキャッチして悠々と着地。
「な、何だい、この力は!?」
「あわわわわわっ!」
「はははっ、凄まじいな! これがアレスの力か!!」
アマンダ達を放し、力が漲る両腕を見ながらジョンは感嘆の声を漏らす。
『そうよ。気に入ってくれたなら良かったわ』
「力を込めずに殴っただけで俺達の城に穴が空いたぞ! あの分厚い床がたった一撃であのザマだ! 信じられん!!」
『この程度の建造物なら一分もあれば破壊できるわ。それなりに頑丈な素材で出来ているようだけど、この力の前では紙屑同然ね』
アレスは何処か誇らしげな声色で言う。
「はははっ、参ったな。今の俺ならファンタズマでも倒せそうだ」
『ファンタズマ? 何よそれ』
「知らないのか? この世界で最強の生物だ。生半可な眷能や武器では太刀打ちできない群れをなした死神さ」
『ふぅん、まあ……どうでもいいわ』
自分で聞いておきながらアレスは素っ気ない態度で話を切り上げた。
『それより……ありがとう』
「何がだ?」
『私に新しい身体をくれて』
「……!?」
急に身体の自由が効かなくなってジョンはその場に膝を着く。
「な……ぐぁっ!?」
「ジョン坊や!?」
「リーダー、どうしたんです!?」
『まさかここまで素直に従ってくれるなんてね。少しは警戒されるかと思ったけど』
「か、身体が……っ! 貴様……何を……!?」
『悪く思わないで。ここまで相性の良い身体はもう見つけられそうにないから』
「な、何……!?」
『貴方の身体に私の意識を上書きさせて貰うわ』
「ぐおっ!?」
アレスは冷たく言い放つと何の躊躇もなくジョンの脳にコードを突き刺し、自らの意識を植え付け始めた。
「がああああああああああああああああっ!?」
ジョンは絶叫しながら頭を抱えてのたうち回る。
「ぐあああああああああああああっ!!」
「ジョン坊やぁぁあーっ!」
「姐さん危ねえっ! 近づかないほうがいいですって!!」
「は、放しな! ジョン坊やが……!」
「ぐおおおおおっ、おっ! ああああああああああああっ!!」
脳が焼けるような激痛に見舞われながらジョンの意識が薄れていく。頭の中が別の何かに入れ替わっていく感覚に気が狂いそうになり、彼は一心不乱に頭を地面に打ち付けた。
『抵抗しても無駄よ』
「がああああっ! あっ、ああああああああ!!」
『散々私を酷い目に遭わせたんだからこれくらい良いでしょう? 殺されないだけマシだと思って、その身体を明け渡しなさい。悪いようにはしないから』
「ふ、ざ……けるなああああああっ!!」
『往生際の悪い奴ね! 諦めて私に身体を渡しなさいよ!!』
「があああああああああっ!!」
ジョンは最後の抵抗とばかりに左腕と一体化した篭手を掴み、無理矢理引き剥がそうとする。
『なっ!? や、やめなさい! 今、変身を解除したら……!!』
「この身体は、俺の……私の、ものだ……っ!!」
『くっ! こうなったら未完了でも構わないわ! すぐにこいつの身体の制御を……!』
「貴様なんかに、渡してたまるかあああああああああああああっ!!」
『あっ……!』
強引に篭手を引き剥がして思い切り床に叩きつけ、ジョンは変身が解除される寸前に右腕でアレスを力の限り殴りつける。
『……が、うっ!』
「……残念、だったわね。私の身体は、私のものだ」
『……く、うう……もう少し、で……!!』
「アンタなんかに、渡すもんか……」
『……この、……っ』
右腕に潰されたアレスを挑発するように不敵に笑いながらジョンは倒れ込む。
「ああっ、ジョン坊や! ジョン坊やーっ!!」
「リーダー、しっかり! しっかりしてくださいいーっ!!」
「……」
「ジョン坊やぁぁぁぁぁぁーっ!!」
アマンダの悲痛な叫びを聞きながら、彼の意識は溶けていった……
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