色々あって遅れましたが、ようやく更新出来ました。許して!:;(∩´。ω゜`∩);:
「え、嘘でしょ……!?」
宿屋に設置された映像板に映されるサメフの街の惨状。その変わり果てた姿にレイコは目を疑う。
『ご、ご覧下さい……これが現在のサメフの街です。ファンタズマの大群の襲撃を受け、探索者及び討伐者ギルドは壊滅。街も甚大な被害を被り、死者は多数……天使棺も全て破壊されました』
「……ああ、ひでぇ」
「くそっ、ファンタズマめ……!」
「うそ……うそでしょ? うそでしょ!?」
サメフの街がファンタズマの大群に蹂躙されたのだ。
セフィロトの樹からは離れた場所にあるとは言え、多くのエトが集まる栄えた街だ。セフィロトへの直通列車もあり、聖都と地方の街を結ぶ流通の要としても機能する重要な場所である。
その街が今、黒く理不尽な暴威に飲み込まれた。大勢のエトの命と日常と共に。
「……クロニカは、無事よね……多分」
テンペランス・パスの発車時刻はとうに過ぎている。乗り遅れてさえいなければ彼は今頃、セフィロトに到着している筈だ。もし乗り遅れていてもポンコツとガルーダがあれば逃げ切れるだろう……
「……」
そう思ってはいても、レイコは徐ろに小型電話機を取り出した。
映像板に映し出される光景はそれ程までに凄惨なものだった……
「あーもー! 何やってんだろ、俺はー!」
一方、クロニカは再びクロノスに変身し、ファンタズマを森に掘った大穴に埋めていた。
「こんな化け物のために土掘って墓を作ってやるなんて馬鹿じゃねーのかー!? いや、本当は墓じゃなくて自然の倉庫みたいなもんだけどさー!!」
『で、でもこんな大量の死体をこのまま放置する訳にもいかないじゃないか。持って帰れる量でもないし!』
「そんなことわかってるよー! 畜生ー!!」
全ての死体を埋め終え、クロニカはどすっと地面に座り込む。
「あーあ、そのまま放ったらかして忘れられるような図太さを持ちたかったよ……」
『クロニカは意外と律儀だからね』
〈ヴーン!〉
「うるせー、次からはもう知らねー! 二度とこんな大群と戦いたくねえよ!!」
クロニカは変身を解除し、ブンブンと頭を振って気分を入れ替える。
「よーし、それじゃ一旦サメフの街に戻るか。まだセフィロトに向かうよりサメフの方が全然近いし」
『そうだね、その方が』
『クロニカ!!』
するとクロニカの通信機にレイコの声が届く。
「お? どうした、レイコ?」
『大丈夫なの!?』
「な、なんだよ急に……」
『大丈夫かと聞いてんのよ、バカニカ!』
「大丈夫だよ! バカニカっていうな!!」
クロニカの無事を知って安堵したのか、通信機越しにレイコの悩ましいため息が聞こえる。
『……なら、いいのよ。無事にセフィロトに着いたのね?』
「ん、いや。まだ着いてねえよ、今から一旦サメフの街に戻るところだ」
『えっ?』
「いや、列車には乗れたんだけどよ。走ってる途中でファンタズマの大群が追ってきてさ……そいつらの相手をしてたんだ」
クロニカの返答にレイコは沈黙する。
『……』
「お、おい? どうかしたのか?」
『……今からアンタを迎えに行くわ。場所を教えて』
「へ? いや、別にいいよ。サメフに戻ってまた列車に」
『いいから教えなさい!』
「わ、わかったよ! えーと、サメフからセフィロトに続く線路沿いに20フォートくらい進んで……そこから右に3、4フォートくらい逸れた所にあるデカい森の中だ。ファンタズマの死体を目印にしたらすぐわかる」
急にレイコの態度が変わってクロニカは戸惑いつつも、自分の居場所を伝える。
『……そいつらは全部倒したの?』
「ん、全部やっつけた。新種の奴がいて少しヤバかったけどな。喜べ、良い素材が沢山取れたぞ!」
『……そう、それじゃそこで待ってなさい』
「……?」
良質の素材が取れたと言われても反応が薄いレイコにクロニカは首を傾げた。
「おい、そっちで何かあったのか? それともまだセフィロトに着いてないから怒ってんのか?」
『何でもないわよ! それじゃ……ああ、もう!』
「な、何だよ!?」
『サメフの街はもうオシマイよ! 今から行っても何もないし、何も出来ないわ! だから、そこで待ってなさい!』
「……え?」
『いいわね!? アンタを拾ってセフィロトまで飛ぶから! 余計な寄り道しないでそこで待ってなさいよ!?』
そう言ってレイコは通信を切る。
「……何だって?」
『? どうしたんだ、クロニカ?』
「え、いや……レイコが迎えに来てくれるらしいんだけどさ。アイツ通信を切る前に変な事言い出したんだよ、サメフの街がもうオシマイとか……」
『!?』
ポンコツはすぐにサメフの街があった方向を探る。
『……、……!!』
「いや、何を言ってんだか。オシマイってなんだよ。意味がわかんねえよ」
『……大変だ、クロニカ』
「ん、どうした?」
『サメフの街が……!!』
高精度なポンコツのレーダーは、つい数時間前に訪れた街を襲った悲劇を包み隠さず彼らに伝えた。
無慈悲なまでに、ハッキリと。
Thank you for reading!!(´;ω;`)旦+
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