「なっ!?」
〈ヴァアアアアアアアアッ!!〉
クロノスの装甲が切り裂かれてクロニカが動揺した隙を狙ってファンタズマが襲いかかる。
「うわあっ!」
不意を突かれたクロニカは回避しきれずに押し倒され、首元を鋭い牙で噛みつかれる。
『クロニカ!!』
「ぐあっ……! こ……のぉおおっ!!」
〈ヴァギュッ……!!〉
食らいついたファンタズマの首に手刀を突き刺して強引に引き剥がす。牙は首の装甲を貫く事は出来なかったが、吹き出した青い血が顔にかかって彼の視界を塞いだ。
『ち、血で前がっ!』
「く、くそ……ッ!」
────ヒュキンッ!
血を拭き取る際に生まれた隙にまた謎の斬撃がクロノスの装甲を切り裂く。
『そ、損傷アリ! ダメージを受けてるぞ!!』
「ううっ!? な、何だ!? さっきから何を食らってる!?」
『わからない! だが、これは……っ!!』
────キキンッ!
『とにかく避けろっ!!』
音を頼りにクロニカは身を躱す。見えない斬撃はクロニカの頬を掠め、背後に迫っていたファンタズマ達を真っ二つにした。
「くそっ、仲間が巻き添えでもお構いなしかよ! 流石は化け物だな!!」
『……!!』
ポンコツはここでファンタズマ達の行動に疑問を抱く。
(……どうして奴らはここまで執拗に僕達を狙うんだ?)
走り去った列車の方を確認するが、大きな群れで現れたというのに列車を追うファンタズマは1匹も居ない。100匹のファンタズマの狙いが全てクロニカ1人に集中している。
(クロニカの先制攻撃で気が立っている……いや、違う。ダメージにもならない攻撃で群れ全体が引き付けられるのはおかしい。リーダーに他のファンタズマを操る能力があって、怒ったリーダーの命令に従って……)
ポンコツは怒り狂ったリーダーが群れを操ってクロニカを攻撃させていると考えた。
だが、それにしては他のファンタズマの操り方が雑だ。攻撃が通じないのに無鉄砲に襲わせては倒させている。この個体はクロニカと初めて交戦するので、変身した彼の力を確かめる為にこのような戦いをしているとも考えられるが……
(……! そうか、奴らの狙いは……!!)
ここでポンコツはファンタズマの目的に気づいた。
「くそっ、どこからだ!? どこから攻撃されてる!?」
『クロニカ! すぐに奴らから距離を取れ!!』
「ああっ!? 何でだよ!?」
『このファンタズマ達は囮だ! こいつらは最初から……!!』
────ヒュキンッ!
『こいつらは最初から死ぬために集められたんだ!!』
見えない斬撃がまたファンタズマ達を切り裂く。両断された獣からは青い血飛沫が吹き出して此方の視界を塞ぐ。
「うわっは! な、何だって!?」
『特別に強いファンタズマは一匹だけ、他も強化されてはいるけどそこまでじゃない……』
「だから!?」
『この群れ自体が罠だ! 群れのリーダーは他のファンタズマを囮……いや、僕達の注意を逸らすためだけの動く障壁にしているんだよ!!』
「はぁ!?」
〈ヴァルルルルッ!!〉
血飛沫を抜けて2匹のファンタズマが同時に襲いかかる。クロニカは攻撃を回避しながら2匹を倒すが……
『普通のファンタズマの攻撃じゃ僕達を倒せない! でも、僕達の気を逸らしたり姿勢を崩すには十分だ! そしてその隙を狙って……』
「……ちっ、そうかっ!」
────キキキィンッ!!
攻撃後の硬直を狙って再び斬撃、クロニカの右腕に大きな傷が刻まれる。
「くそっ! 胸糞悪い事をっ……! 何とかそいつの居場所だけを探れないのかよ!?」
『ど、どうやって!?』
「とにかくお前が言う【反応が大きい一匹】だけをマークしろ! 他の奴らは全部無視していい!!」
『……わ、わかった!』
ポンコツは他のファンタズマの情報を全てシャットアウトし、群れのリーダーの場所を探る。
『見つけた! 奴は今、君の右側から背後に回り込もうとしてる!』
「よし、右っ……」
〈ヴォオオオオオッ!〉
「うぐあっ!!」
クロニカはポンコツの情報を得てリーダーの方に向かおうとするが、1匹のファンタズマが死角から襲いかかって阻止する。
「くそっ、邪魔すん……」
────シャキンッ!
「うおあっ!!」
そして意識が逸れた瞬間を狙って斬撃。クロノスの背中が切り裂かれ、クロニカにもじんわりとした嫌な感触が伝わる。
『損傷アリ! 背中の装甲がっ……!!』
「くそっ……自信を持てたと思ったらすぐこれだよ! やっぱり強すぎる力なんて持っても碌なことねえな、生き抜く知恵がドンドン鈍っちまう!!」
『強すぎてゴメンね!?』
「うるせー! ただの独り言だよぉ!!」
自からまんまと術中に嵌ったクロニカは翻弄され、顔に汗を浮かばせながら己の短慮さを恥じた。
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