「ふわあああああああああああっ!?」
背後から放たれたレーザービームが頬を掠めながらフロントガラスに大穴を開け、混乱した赤モヒカンはハンドル操作を大きく誤る。
「な、何だぁーッ!?」
「今のは何の光ぃ!?」
「ちょっ、危ねっ……危ねぇぇぇぇーっ!!」
近くを走っていた仲間は激しく横転するトラックに巻き込まれて派手にふっ飛ばされる。トラックが転んだ衝撃ではね飛んだ鉄のケースから脱出し、ポンコツは瞬時にクロニカが乗せられたバイクを見定める。
『クロニカァァーッ!』
ポンコツは泣きながら飛んでくるモヒカンを踏み台にして更に跳躍。突然のトラブルに思わずスピードを落としたバギーに向かって突撃する。
「な、何だぁーっ!?」
「あ、兄貴ぃ! 何か飛んできますよぉー!?」
「何ぃーっ!!」
驚くバギーの顔面にポンコツは全力の頭突きを食らわせる。
「ごぶぅっ!?」
『お前なんかに……クロニカは渡せないっ!!』
バギーの首元に手を回してしっかりと固定し、ポンコツはもう一発頭突きを叩き込んだ。
「あぶぁあああっ!?」
流石のバギーもファンタズマの爪すら防ぐポンコツの頭突きには勝てず、鼻血を吹き出しながら大きく仰け反る。
『ふんっ!』
バギーが怯んだ隙にサイドカーに乗り移り、ポンコツは気絶したクロニカの頬をペチペチと叩く。
『起きろ! 起きろ、クロニカッ!!』
「……ん……」
『起きろぉーっ!!』
「……ん、ぐ……ああ……」
ペチペチペチペチと頬を叩かれるうちに段々とクロニカの表情が険しくなる。
「うー……っ!」
『起きろ! このままだと君はっ』
「うーっせぇーっなぁぁーっ! 何だよ、コラァァーッ!!」
『ぎゃああっ!?』
ポンコツは目覚め最悪で機嫌が悪いクロニカに掴まれ、サイドカーのフロントガラスに思いっきり叩きつけられる。
「……はっ、えっ? 何処だここ……ってうおおっ!?」
『や、やぁ……目が覚めたかい?』
「ポ、ポンコツ!? 何だこれ、どういう状況だ!?」
荒野を疾走する大型駆動機のサイドカーで目覚めたクロニカは状況が理解できずに困惑する。運転するバギーはハンドルから手を放して悶絶し、不安定な駆動機は今にも転けそうになっている。
「ぐうぉおお……っ!」
『説明は後だ! とにかく今は変身しろ!!』
「お、おうっ! もう大丈夫なんだな!?」
『大丈夫だっ! 僕は』
「てんめぇぇぇぇっ!」
復活したバギーが鬼の形相でクロニカからポンコツを奪い取る。
「ポ、ポンコツッ!」
『うあああっ!?』
「やってくれるじゃねえか、気に入ったぜクソがあっ!!」
「や、やめろ! そいつを放せっ!!」
「ああん!? 言われなくてもぉ……放してやんよぉーっ!!」
バギーはポンコツに血の混じった唾を吐きかけた後、地面に向かって叩きつけるように投げ捨てた。
『ぐあああああああああっ!!』
「ポンコツゥーッ!!」
ポンコツは激しく地面を転がり、大きな岩にぶつかってようやく止まる。
『う……ぐっ! くそっ!!』
ポンコツが起き上がった頃には既にバギーの駆動機は遥か先を進み、代わりに彼の手下達が銃を構えて向かってくる。
『……ッ!!』
損傷は受けていないがポンコツの足ではバイクに追いつけない。しかも目の前には怒り心頭の手下達が迫り、先程よりも状況が悪化してしまった事にポンコツは絶望した。
「おぅ、コラァー! 良くもやってくれたな、テメェェーッ!!」
「ヒャッハアアアーッ!」
「たかがヘルメットが調子こいてんじゃねえぞ、クソがァァーっ!!」
『……退け』
しかし、その絶望はすぐにそれ以上の怒りで塗りつぶされる。
『そこを、退けぇぇぇぇーっ!!』
ポンコツは叫びながら力強く跳躍し、小さな手足を振りかざして迫りくるバギーの手下に立ち向かう。勝ち目など最初から薄い。クロニカから引き離された時点で自分は唯のポンコツだ。
それでも彼は諦めるより戦う事を選んだ。
────ブォオオオオオオオオンッ!!
その時、後方から聞こえてきた大きなエンジン音。それに混じって聞こえてくるのは何かが空から降ってくるような音……
「「「あばああああああああああああっ!?」」」
バギーの手下達は天から降り注いだミサイルを受け、まっ黒焦げになりながらボロ人形のようにふっ飛ばされていく。
『……こ、これはっ!!』
ポンコツは爆風に撒かれながらも、猛スピードで此方に向かってくる灰色の駆動機の姿を捉えて思わず声を張り上げてしまった。
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