「……」
遺跡に到着したクロニカ達は【修理工房】に来ていた。
「……シルキー」
遺跡に着いた時に嫌な予感はしていた。ポンコツがシルキーの反応を探知できないと言い出したからだ。予定よりも早くガルーダが復活した事もあり、妙な胸騒ぎを覚えながら【修理工房】に急いだ……
そこで見つかったのは、身体の大部分を失って機能を停止したシルキーの姿だった。
『これは誰かに壊されたんじゃない。自分で、自分のパーツを……』
「アイツを直すために……自分のパーツを分けてくれたのか」
ここでクロニカはガルーダが悲しんでいた理由を知った。
「シルキー」
動かなくなったシルキーの手を取り彼の名を呼ぶ。もしかすれば一時的な休眠状態になっているだけで、こうして話しかければまた目覚めるのではないかと密かに期待した。
『……駄目だ、彼はもう動かないよ。機能維持に必要な部品まで失って完全に機能を停止している』
だが、彼は目覚めなかった。
「……直せるかな」
『わからない。【修理工房】はまだ動いているから、修理は出来るはずだけど……』
「よし、じゃあ試してみようぜ」
此処でクロニカはシルキーの修理を試みる。あれだけのダメージを負ったガルーダが修復出来たのだから、シルキーも直せるはずだ。
「よい……しょっと! おし、ベッドに乗せたぞ。頼む」
『わかった。やってみよう』
ポンコツは目を輝かせて【修理工房】にアクセスし、シルキーが修復可能かどうか確かめる。
『……』
「どうだ、ポンコツ?」
『……よし、彼の修理に必要なパーツは揃ってる! 修理出来るぞ!!』
「本当か!? じゃあ早速直してやってくれ!」
『わかった! えーと……修理にかかる時間は30分程度だ! すぐに元通りになるぞ!!』
「何だよ! 心配して損したじゃねーか!!」
クロニカはシルキーがすぐに直せると聞いて安心した。
「……修理、出来たよな?」
『……そ、そのはずだが』
だが30分が経過してボディの修復が完了しても、シルキーは目を覚まさなかった。
「な、何か部品が足りないのか?」
「い、いや。必要な部品はちゃんと組み込まれている……恐らくは起動準備中なんだろう」
「……」
『……』
「……おい、動かないぞ?」
クロニカはシルキーの身体に触れてみるが何の反応もない。強めに叩いてみても、大声で名前を呼んでも、彼は動かない。
『……もう、疲れて眠ってしまったのかな』
ポンコツは全く反応しないシルキーを見て呟いた。
「機械でも疲れるのかよ……」
『本当に修理は完了したんだ。活動に必要なパーツは全部揃っている。頭部のメイン回路も無事……それなのに……』
「……」
クロニカは静かに眠り続けるシルキーの隣に腰掛ける。
「……お礼くらい聞いてから眠れよ。本当に、感謝してるんだぜ?」
彼の頭をそっと撫でながらクロニカは言う。
どれだけシルキーに感謝しているか伝えたかった。できる事ならもっと彼と話をしたかった。きっとシルキーは一日で話しきれない程の昔話を胸にしまっていたはずだから。
『……僕もお礼を言いたかったよ』
「お礼を言う前に、遠くに行っちまうなんてズルいよなぁ……」
『本当だね……』
二人はそのまま暫く待ってみたが、やはりシルキーは目を覚まさない。
「……帰るか、ポンコツ」
『……ああ』
「ああ、その前に」
クロニカはシルキーの額にキスをする。
「相棒を助けてくれてありがとう。おやすみ、シルキー」
そう言って寂しげに笑い、鉄の恩人に別れを告げた。
「そうだ、ポンコツ。一つ頼みがあるんだ」
『ん、何だい?』
ズズズズズズ……
遺跡の表面を再び透明の膜が覆う。周囲の風景に溶け込むと同時に遺跡の全機能は停止し、荒野の遺跡は再び眠りに就いた。
『本当にこれでいいのかい?』
「ああ、これでいい。もう俺達がここに来る事は無いし、また他の探索者に見つかって荒らされたらアイツがゆっくり眠れないだろうからな」
『バギー達にはもうバレてるけど、それは?』
「もう二度と来ないように念入りに脅す」
『……まぁ、僕が居なければあの遺跡の機能は停止したままだしね。万が一他の誰かに見つかっても大した事は出来ないだろう』
「一番の宝物はもうオレが手に入れたしな」
ポンコツの頭をポンと叩いてクロニカは自慢げに笑う。
『ま、まぁ……そうだね! うん! 大事にしてね!』
「おう、任せろ。オレは物と相棒は大事にする男だからな!」
そしてクロニカはガルーダのハンドルを握り、別れの挨拶に大きくエンジンを鳴らしてから荒野の遺跡を後にした。
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