俺は世界中を飛び回った。
ずっと真っ直ぐ行けば反対から出てくるかと思ったのだが、ある所からそれ以上は進めなくなった。
この世界は丸くはなかった。
いや、正確には丸いのだろうが端というか見えない壁のような物があるのだ。
何故か移動できなくなる限界がある。
先にある海は見えているのだが。
体感でいうと球体の八割までは行けるが微妙に行けないところがある感じだ。
地図でいう上下左右の端の部分が進める限界だった。
上空も一定の高さ以上には上がれなかった。
それでも確認出来る範囲内でこの世界の各地を一通り見て回った。
大体は俺が予想していた通りの形をしていた。
やはりこの世界の地図は当てにならんな。
結果から言うと、めちゃめちゃ地図は違った。
城に戻った俺は見てきた光景を地図にしていた。
実はこの魔大陸ディルナル、そして魔王城は世界の中心にある。
地図上でいう真ん中だ。そしてこの世界で言われていた、ちょっと大きな島程度の大きさより遥かに大きかった。前世で言うところのオーストラリア大陸ぐらいのサイズだ。
その真ん中にどデカイ湖がある。簡単に言えばドーナツみたいな形をしていた。その真ん中に魔王城が浮いている。
南に精霊大陸のヨルムルム大陸。
前世で言うところの南極大陸に位置する。
ダンジョンの位置が南極点なのだろう。
磁石がクルクル回っていたから多分そうだ。
そして魔大陸を囲むようにウルカラン大陸がある。大袈裟に言うならアルファベットのUのような形だ。
その中に魔大陸が入っている。
では北は?
ディルナル大陸より北側の途中までは小さな島がいくつもあったのだが、北には大陸や島は何もなかった。
ただ大きな渦潮があった。
あれがダンジョンの入口なのだろう。
ここでも磁石がクルクル回っていたからたぶんここが北極点、のはず。
また水の中だ。
一瞬不安がよぎる。
だがセレネの心配をするのはやめることにした。
予想以上にかなり強くなっている。
信じてやることにしよう。
「このような形をしていたのですか?」
作りかけの地図を見ながらディアブロが聞いてきた。
「ああ。直接上から見てきたから間違いない」
「私が知っている大陸の位置とは随分違いがあります」
そりゃそうだ。
地図が違うなんて普通は気づかないし、気にもしないだろう。
普段使う身近な所だけあっていればいいのだ。
「たまたまだ」
こうやって簡単にではあるが地図が出来た。
俺が作ったから本当に細かい地形までは再現出来てないだろう。が、大雑把に使うなら問題はないはずだ。
後はディアブロが集めてくれている地図を見比べれば細かい街や村などの場所もわかるだろう。
なんだか精神的に参ったせいか凄く疲れた。
「少し寝る。何かあったら教えてくれ」
「かしこまりました」
俺は部屋へと転移してベットへ身体を沈めた。
訳のわからない感情は捨ててただ眠った。
そう、ただのふて寝だ。
起きると柔らかな感触に包まれていた。
べったりとセレネが横に引っ付いて寝ていた。
いつの間に?
手のひらには柔らかな感触、胸だ。
セレネを腕枕している。
その手がセレネを包み込むように抱きかかえている。
結果、手のひらが丁度胸の位置にあったのだ。
どかすのも変なのでそのまま胸の位置をキープ。
勝手に横に来たやつが悪い。
そのまましばらくボーッとした。
どうせ勇者に殺されて元の世界に戻るからと、この世界には興味がなかった。
そう思っていたが、自分でも気づかないところで興味を持たないようにしていたのだろう。
気づけば興味を持ち始め、今の環境に満足している自分がいた。
我ながらなんて面倒くさいて捻くれた性格をしているのだろう。
せっかく異世界に来れたんだし楽しまなきゃ損だぜ!ヒャッハー!とか考えれる人が羨ましい。
俺ももう少しこの世界を楽しんでもいいのかもなぁー。
って股間のあたりがもぞもぞする。
ん?
一瞬セレネを疑ったがセレネは寝ている。
なにやらモゴモゴ動く物が。
大方の予想はつく。
俺は寝転がったまま動く物体を摘み上げた。
体長三十センチほどの青い蛇がいた。
やっぱりか。
シャーシャーと唸っている。
ふむ。
やかましいのでベットの外へとほたり投げた。
天井を眺めてボーッとしていたら、蛇はプカプカ浮きながら戻ってきた。
俺の視界に入るように目の前を飛び回りながらシャーシャー言って存在をアピールしている。
「うざい!」
パァーーンッ!ドン、ドン。
デコピンを発射してやった!
天井へと一直線に突き進んでぶつかった後、地面に落ちた。
これで静かになった。
「ごめんなさい、気づいたら寝てました」
せっかく静かになったと思ったのに一番うるさいのが起きてしまった。
「別にいいぞ。ゆっくり寝てて」
「さっきの音で目が覚めましたよ。なんかあったんですか?凄い音がしましたよ」
「別になにもなかったぞ」
「じゃーいいんですけどぉ、って、なんで私はおもいっきり胸を揉まれているんですか?」
「そこに胸があるからだろ」
「まぁ、私が胸の位置にアルスの手を置いたから、いーんですけど」
なに!こいつの策略にまんまとハマっていただと?
それに気づかずに揉んでいただと?
揉ませるべく位置取りをしていたセレネに対して、それに気づかずに揉んでしまった俺。
なんか負けた気がする。
そして一気に胸に対する有り難みがなくなってきた。くそ!
「んじゃ、起きるか」
「はーい」
ベッドから出ると床でピクリとも動かなくなっている蛇を摘んで転移した。
「おはようございます。お早いお目覚めでしたね」
「またペットが増えたからな」
俺は摘んでいた蛇をディアブロに手渡す。
「これはこれは」
「今度は蛇?あんまり可愛くないね。動かないし」
セレネは蛇に興味がなかったらしい。
「適当にプールにでもほたっておいてくれ」
「かしこまりました」
ディアブロは蛇を連れて転移していった。
「さてと、なにをするかな」
「あ、私やりたいことがある」
ーーーーーーーー
俺とセレネは向かい合っている。
お互いの手には剣。
「いつでもよいぞ」
「うぉりゃーー!」
セレネは叫びながら一気に俺に向かってきた。
上段からの一振り。
俺は半身になって、その攻撃を躱すと横凪に剣を振った。
が手応えがない。バックステップで躱されていた。
セレネは俺の剣が通過すると同時に踏み込み下から剣を振り上げる。
俺も一歩後ろへ下がることでその攻撃を躱す。
畳み掛けるように突きを連続で放つセレネ。
それを持っている剣で優しく弾く。
四度弾いたところで俺も突きを放つ。
屈んて躱された。
下から振り上げられる剣。
それはさっき見た。
振り上げられる剣の軌道に持っている剣を巻きつけるようにして上に払った。
空中を舞うセレネの剣。
「参りました」
セレネがやりたいと言ったのは、俺との模擬戦だった。
なので地下四階の闘技場へと移動して一勝負したわけだ。
まさかまったく攻撃が当たらんとは思わなかった。
あいつどんな人体構造しとるんだ。
俺は弾き飛ばしたカーボンソードを拾い上げた。
まじまじと見つめる。
傷は、ないな、よし、と。
調子に乗って体で受けたり本気で打ち合うと大事な剣が折れそうだから、セレネには違う剣を薦めた。だが持てそうな剣もなく、これが一番使いやすいからとカーボンソードで挑んできた。
俺は剣に傷を入れないように細心の注意を払った。めちゃめちゃ気を使った。
ちなみに俺が使ったのは宝物庫に眠ってた剣を適当に選んだヤツだ。
名前は……忘れた。なんかの魔剣だ。
「はぁ、もうお前とはやりたくはないなぁー」
「えーアルス、勝ち逃げですかぁー」
「剣が折れたら嫌だからな」
「次は一撃入れてみせますからね」
それは俺もだな。
「風呂にでもゆっくり入って飯でも食うか!」
「はーい」
一汗流した後は二人でゆっくり風呂に入った。結局ディアブロを筆頭にいつものみんな来ていつも通り賑やかになったんだがな。
その後はまったりと食事の時間を楽しんだ。
そしていつものようにセレネと一緒にベッドへと入り眠るのだった。
よろしければ↓の☆を付けて評価して頂けると嬉しいです。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!