ディアブロと宝物庫へとやってきた。
やや広めの石で出来たて部屋。部屋の四隅には鎧くん。
広間の壁の正面には三つの扉、左右それぞれにも三つずつの扉がついている。
「全部で九部屋あるのか?」
「宝物庫へと続く正解の扉がありますが正解は秘密でございます。当ててみられますか?」
「正解は、か。」
この言い草だと、恐らく、
「全部ハズレだろ。この中に正解はないんだろ?」
「正解でございます。すべてダミーでございます」
「って、正解ないんかい!」
本当にこの中には正解はなかったらしい。
「だからなぜにダミーを作る?」
絶対にダミーを作る必要なんてないだろ。
「賊に宝を盗まれることなどあってはなりませんので」
賊どころか虫一匹入れんぞ。
宝物庫にではない。この城そのものにだ。
城に侵入した上この部屋に辿り着けるヤツがいるとは到底思えん。
「この部屋へ侵入すると四隅にいる守護者が動き出します。戦わずに他の部屋へ逃げようとする者がいても困りますので」
「戦わないヤツに対する罠か」
「侵入した以上は戦っていただかないと困りますので」
「これもおまえのお茶目心か?」
「左様でございます」
目に見える扉はフェイク。
四面あるうちの一つ、後ろの壁には扉がない。
となれば、俺は後ろの壁の方へ行く。
壁にはいくつかの突起がついていた。
恐らくはこの辺りか。
その壁の突起の一つに指をかけ壁を引く。
ガチャ。
壁が開いた。
「さすがでございます。正解です」
満面の笑みを浮かべるディアブロ。
なぜに当てられて嬉しがる。
「見えない、そして偶然では開けられないと考えると押戸ではなく引戸だろ」
押戸なら戦闘の最中にぶつかって運良く扉が開く可能性もある。
スライドドアも同様だろう。
「そのとおりです。私の浅はかな考えなどお見通しですか」
「ヒントがあったからな」
だから何故に嬉しがるのだろう。
開いた扉の奥にはそれなりに広いスペースがあり綺麗に並べられた道具が数多く並べられていた。
扉から部屋へ入り置いてあるものを確認する。
入ってすぐの右側の手前の隅に無造作に置かれた。ニメートルほどの高さの樽には、ベタに金貨の入った樽や銀貨の入った樽、宝石っぽい石などが入った樽、魔族にとっては対した価値がないのだろうか、樽一杯に入れられて分けらていた。
パッと見で樽がニ百個ぐらい。酒蔵みたいだ。
この世界の貨幣価値がわからないがこれだけあるなら資金力に問題ないだろう。
当面の生活に困ることがないのはいいことだ。
って、こいつら支払いとか買付けとかどうしてるんだろう。
まぁーいっか。
左側の棚に分けられている石は魔石。
魔術と同じように各属性の力が込められた石。魔力を使わなくても使用可能。電池の代わりのような使い方も出来るらしくいろんな所で使われているそうだ。大小様々ないろいろな色の魔石がある。
これって各属性を組み合わせたらいろいろできそう。今度試してみよう。
更に奥には各種素材があった。
ドラゴンなど様々な魔獣から採れたというの革、キバ、爪、羽、毛皮、骨、謎の木や葉っぱなんかもあった。
組み合わせて加工することでいろいろな武器や防具になるらしい。
いろいろと使ってみるには細かい性能がわからないので勉強が必要だろう。
宝物庫の正面には数々の武器や防具。
特殊な効果をもった剣、使用する相手が呪いにかかる魔剣など各種武器いろいろあったが、俺が作ったカーボンソード以上に軽い武器は無かったためすぐに勇者へ渡せそうな物はなかった。
防具も全身鎧から盾からいろいろあったが正直パッとしなかったのでひとまずスルー。
宝物庫右側には鉱石がズラリと並んでいた。
オリハルコンにミスリル、鉄っぽいのから見たこともない色をした石等いろいろ。これも追々詳しく調べよう。
なんか理解出来ない物も中にはあったが、一つずつ覚えながら組み合わせを考えて何かいろいろと作ってみるとしよう。
ディアブロ聞けばいいのだろうが、こいつにずっと説明されるのは精神的にしんどい。というか嫌だ。一度、図書館へ行ってから調べてみるのがいいかもしれない。
何か知らないことやヒントがあればラッキーだしな。
「ここにある物の説明を書いた本は図書館にあるのか?」
「全てはありませんが大概の物は本に纏められております」
ならひとまずは勉強だな。
此処にある物ぐらいは把握するとしよう。
次は図書館だ。
宝物庫にあった素材や鉱石など詳しく調べるために図書館にきた。
防音対策なのか床の絨毯はどの部屋よりもふかふかで歩く音が響かない。
そして見渡す限りの本。
前世でもこれほどの規模の図書館はなかなか見たことがない。
よくもまぁこれだけの本を集めたものだ。
所狭しと並べられている棚には本がぎっしり入っている。
「素材に関する本と合成に関する本が欲しい」
「それでしたらこちらですね」
ディアブロに案内された図書館の一角。
そこには、『動物の捌き方大全集』『初めての素材集め』『正しい素材の保存方法』『初心者でもわかる素材一覧』などのタイトルが並んでいた。
「鉱石関係ですと隣の棚になります」
あらかた、見たい本の場所はわかった。
読書の邪魔になるのでディアブロには離れていてもらう。
「勇者の状況を確認してこい、変わったことがあれば教えてくれ」
「かしこまりました」
ディアブロは転移していなくなった。
これでしばらくは読書に専念出来るだろう。
適当な本を手に取り、壁沿いに用意されていた椅子に座りページをめくる。
とりあえずここにある素材関係の本から読破していくとしよう。
目標をたて、俺は本の世界に入り込むのだった。
手に取った本は素材の剥ぎ方を解説したものであった。
鳥や兎、猪や鹿、狼などの動物を中心に、血抜きの仕方、羽の毟り方、皮の剥ぎ方、牙の抜き方、角の取り方などや保存方法が丁寧に図解付きで説明されていた。
どうやら初心者用の本らしいが中々わかりやすくていい。前世にあればジビエの人達が喜びそうである。
各種素材の使い方なども載っていたが、食料として肉を取ることが目的の本なのだろう、皮を服にするとかこの部位が薬になるだとか日用品中心になっていた。
さて次か。
魔物の生息地域か。平地には比較的大型の動物、森には小動物、海や川などには魚、墓場やダンジョンにはアンデット、山にはドラゴンか。前世の生態系に似てるといえば似ている。プラスでファンタジー的な要素って認識でよさそうではあるな。
ダンジョンがあるなら、勇者を鍛えるために行かせてもいいなぁと思ったが、新しいダンジョンが発見されることはないらしい。
動物や魔獣には色違いのレアな個体もいる。まぁ前世にもホワイトタイガーなんてのもいたし似たような感じか。レアな個体は希少性から高価である。当たり前だな。
初心者向けからと思ったがあまり意味がない気がしてきた。
少し専門的なヤツを一度見ておくか。
ドラゴン関連の本をとった。
ドラゴンといっても種類は様々いるらしい。
その中で真にドラゴンと呼べる存在は世界に数匹しかいない。
後の全てはドラゴンと呼んではいるがまったくの別物らしい。
属性竜と呼ばれる一つの属性を強く引き継いだファイヤドラゴン、ウォータードラゴン、アースドラゴン、ウインドウドラゴンの四種。
カラードラゴンと呼ばれる色付き竜、レッドドラゴン、ブルードラゴン、グランドドラゴン、グリーンドラゴン。
その他ワイバーン、レッサードラゴンなど下位にいくほど個体数は多くなる。
とはいえドラゴンと名のつくものは他の魔物より数ランク以上強いらしい。
ドラゴンの素材は上位になるほど軽く強度が増し、各種属性への耐久性も高くなる。属性竜の素材となると対応属性が無効になるそうだ。
ドラゴンで使えるのは革、牙、爪、骨ぐらいか。
この後いくつかの本を読んだが特別新しいことは書かれていなかった。
つぎは鉱石だ。
基本的な鉄やらなんやらの配合量だなんだといろいろと書かれていて、前世の物理や科学を思い出す。
そういえば鉱物学とかあった気がするが、詳しくはない。
根気よくいくつかの本を読み進めていくとこの世界特有の鉱石と前世の鉱石に分けられることがわかってきた。
一通りは理解した。
後は魔石か。
魔石は文字通り魔力を含んだ石。
火の魔術を含めんだ魔石は赤くなる。
火の魔石を使えば料理に使ったり、多少の魔力があれば火の魔術が使えたりする。
って火薬になるじゃん。
火薬の代品として使える。
兵器が発達してないだけで普通に作れる環境にはあるぞ。
他の属性も似たような感じだ。
魔石の組み合わせについては書かれている本はなかった。
組み合わせること自体がなかったのか、書かれた本がないだけなのか。
試せばわかるだろうな。
一区切りして作れそうな物を考えているとディアブロが転移してきた。
「よろしいでしょうか、アルス様」
「どうした?」
「勇者なのですが中々面白いことになっております」
「面倒くさそうな予感しかせんな。確認に行く」
「かしこまりました」
俺とディアブロは玉座の間へと転移した。
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