新しい武器の素材。
カーボンを使えば良いかもしれない。
軽いし金属より硬いとか聞いたことがある気がする。
カーボン素材を作る。となると繊維が多い木を燃やせばいいのか?
「なにか適当な木はないか?できるだけ繊維の詰まったような頑丈な木がいいのだが」
「それでしたら世界樹か、魔樹がございます」
おい、さすがに世界樹はダメだろ!
響き的にあかん。あかん気がする。
それは燃やすと後々色々と問題がありそうだ。
魔樹ってのは聞いたことがないがまぁーいーか?
とりあえず魔樹ってヤツで試してみるとするか。
「魔樹は持ってこれるか?」
「すぐにお持ちいたします」
炭なんて作ったことはないが、この世界のなんでも設定ならなんとかなるだろう。
こうして持ってきてもらったドデカイ丸太を念じて燃やす。
燃やすといっても完全に燃やし尽くすわけではなく木に含まれた余分なものや水分を飛ばすイメージでやる。
魔力で包んで、木の隙間を埋めるよう圧縮しながら、余分な空気を遮断して蒸し焼き?みたいなイメージ。
じっくり焼きあげた。
少し燃えたところもあるが上手く炭化させれた気がする。
こうして出来た炭化した木の繊維を念じて編みこみさらに圧縮する。
これでカーボンファイバーもどきになったはず。
光沢のある黒光りした素材が出来た。
指で弾くとキィーン!という甲高い音がなる。
なかなか良さそうだ。
出来上がったカーボンファイバーもどきはかなり軽い。
この重さならナイフじゃなくてもいいか。
更に圧縮を繰り返しつつ剣の形に整えていく。
オリハルコンに比べれば楽勝だ。
サクサク作業が進む。
すぐに形が代わり少し短めの刀身の剣が出来上がった。
出来上がったが、よく見ると相変わらず剣の中にいらない斑点がいくつもある。
美しくない。
更に強く圧縮しつついらない斑点を取り除いていく。
いらない斑点が剣から消えてなくなった。
そうして出来た剣は、濁りのない真っ透明な刀身のショートソードになった。
「おし、出来た!」
命名、カーボンソード。
「素晴らしい。ダイヤの剣でございますか?」
悪魔リーダーが爆上がりのテンションで喜んでいる。
「炭を固めて作っただけの軽めの剣、カーボンソードだ」
「炭からダイヤを創って剣にするとは流石でごさいます」
まて、俺はダイヤなんて作ってないぞ。
炭からじゃダイヤは作れんだろ。
ダイヤって炭素?炭?炭素、か?
前世だと人工ダイヤってのもあったけどどうやって作るんだけ?高温で高圧縮とか?
確かに黒光りしていた剣が真っ透明にはなっているのだが、わからん、まぁーどうでもいい。
とりあえずカーボンソードができた。
よし、早速これを使わせて斬れ味をみてみよう。
今すぐに届けよう。
「出来たてを届けてくる」
悪魔リーダーの返事も聞かずに再び勇者の上空に転移する。
足元を走っている勇者の位置をしっかりと確認し剣を投げつけた。
シュッ!
空気を切り裂き飛んでいく剣。
勇者頬を掠めると地面に突き刺さった。
チュドーーン!
爆ぜる大地。
吹き飛ぶ勇者。
先程より素早くサッと体制を立て直しこちらを見た。
「出来たてをお届けだ」
俺は再び転移して玉座へ戻った。
「くっそ!だから、あいつなんなんだよ!投げる前に投げるって言えってんだよなぁ!くそが!ホント最悪」
頬から血を垂らしながら怒鳴る勇者さん。
爆心地の中心には剣。
「デジャヴュ?天丼?」
意味のわからんことを言いながら剣の方へ向かう勇者。
大地に深く突き立った剣の柄に手をかけると一気に引き抜いた。
今度は抜けた。
真っ透明な剣。
勇者は手にとった剣を何度か軽く降っている。
使い心地を見ているのだろう。
刀身の幅や長さは聖剣に比べ短いが、非常に軽く仕上がった。
これが使えないなら全ての剣が使えないだろう。
確認が終わったのか、透明な剣を握り悪魔のような笑みを浮かべる勇者さん。
「これなら、この剣なら。」
剣を手にすると逃げから一転、魔物の群れへと突っ込んで行った。
「駆逐してやる!」
そこからは一方的であった。
無残に切り裂かれていく魔物の群れ。
透明な剣を振り回しながら高らかに笑う勇者。
「てめぇらー皆殺しだぁーー!」
返り血を浴び真っ赤に染まった姿で雄叫びをあげていた。
もはやそこに勇者の姿はなかった。
「ひゃっひゃっひゃ、死ねー、死ねー」
恐ろしいすぎる光景が繰り広げられる。
「うぉりゃー、かかってこんかぁーい!」
高らかに叫ぶ勇者さん、もはや悪魔である。
みるも無残な光景が繰り広げられる。
駆逐されていく魔物の群れ。
数多の狼たちはまたたく間に殲滅された。
そして勇者さんのランクは6になったのである。
俺は、魔物の群れを倒したのを確認すると、勇者を迎えにいった。
いろんな汁にまみれ肩で息をする勇者に声をかけた。
「よし、帰るぞ」
「よし帰るぞ、じゃありません」
何故かブチギレ勇者さんがいた。
「なんで素直に剣をくれないんですか?手渡しでいいでしょ!手渡しで!なんで上空から爆撃するんです?ありえないでしょ!しかも二回!二回もですよ!なんなんです、私を殺したいのですか?生身だと自信がないからって殺してから抱こうとしたんですか?そういう性癖なんですか?それとも酷たらしく虐めて楽しみたいんですか?弄り倒したいだけなんですか?弄りたいならそういってくれれば好きなだけ弄らせてあげますよ。胸だって沢山触らせてあげますよ!抱きたいならそういってくれれば抱かせてあげますよ。なぜ素直に剣を渡しに来ないんですか!」
戦闘の興奮が残っているからなのか、元々こういう性格なのか、なんにしてもレディーがしていい発言ではない。
もう少し冷静になってほしいものだ。
本当にわけのわからないこと言っている。
生きて戻ってきた。
ランクも上がった。
なんの文句があるのだろう。
「とりあえず帰ったら風呂だな」
「き、急に何言ってるんですか!早速一緒にお風呂に入りたいんですか、わかりました。いまは身体が汚れていて恥ずかしいので先に洗わせもらってからでもいいですか。少し後で、少しだけ遅れてきてくれると嬉しいです。少し時間をください。」
おいおいおいおいおい。
誰が一緒に入ると言った。
「帰ったら風呂で、その後食事の約束だっただろ」
「あ、あくまでも一緒にお風呂希望なんですね。汚れてるままのほうがいいってことですね。わかりました。そういう人もいると思います。否定はしません。その後私は食べられるんですね。わかりました。お風呂では一緒に洗いっこしましょう。覚悟はできてます。行きましょう」
本当に会話にならん。
というかさっきまでブチギレてなかったこいつ。
急にデレている気がするのだが、多重人格か?
「帰るぞ!」
面倒くさいので首根っこを掴んで城に帰る。
「お帰りなさいませ」
「こいつを風呂にブチ込んでこい」
「御意」
なんだ、迎えに行っただけなのに、この凄い疲れは。
相変わらず精神攻撃の破壊力は抜群の勇者。
「ブチ込んでまいりました」
グッ!
優秀な悪魔リーダーには親指をたてて答える。
さぁーてと次の予定を考えよう。
「この後の予定だが、風呂から上がったらしっかりと食事をあたえろ、そして一晩ゆっくりと寝かせる。翌朝次の場所へほたり込む。次の場所にいいところはあるか?」
「引き続き東の地がよろしいかと」
「あそこの狼は滅ぼしただろ?」
「先程の場所は山脈の麓の外れ。山脈近くまで行きますと熊の巣が、山脈にはドラゴンの巣もあります」
「魔物の数が多いのはいいが危なそうな場所だな」
「人族にはかなり危険な場所でございます」
「それぐらいじゃないと強くはなれんか。よし、明日の朝、勇者をそこに捨ててこい。それまではゆっくりとさせておけ。剣もあたえたことだし、しばらくはそこにほたっておけばいいだろう」
「かしこまりました」
「それと食事の席には俺も同席する。あいつが風呂から上がったら呼んでくれ」
「てっきりお会いにはならないかと思っていましたが」
「お仕置きをしてないからな」
「お仕置きでございますか?」
「そうだお仕置きだ」
俺のことをてめぇ呼ばわりしたことを、俺は忘れていない。
お仕置きは必要なのだよ。
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