ウルティア王国で起ころうとしていたクーデターの首謀者を特定し処刑した俺は、ウルヘイドの女王を連れてウルド王国へとやってきていた。
今回は門を守る兵士達を脅かさないように少し離れた場所から歩いて門へと進んだ。
「悪いのだが、王と面会がしたい。魔王が来たと伝えてくれ」
「か、かしこまりましたっ!」
兵士は慌てて城の中へと走って行った。
だから何故にテンパる。
わざわざ離れた位置から来た意味がないではないか。
もっとリラックスして普通に対応してくれたらいいんだぞ。
「お、お待たせ致しました。どうぞ中へお入りください」
ああ、ありがとう。
次はそこまで緊張する必要はないからな。
普通でいいんだぞ。
俺は執事の案内の元、王の所へとやって来た。
「昨日ぶりだな、ダラム王」
「ようこそおいで下さいました。魔王様にウルカ女王」
パッと見回した感じヤツはいないようだな。
良かった。
「何かウルド王国で動きがあったようだが?」
「はい、昨日魔王様が帰られた後、緊急で会議を行ったのですが、ウルド王国として魔王へ降る事は出来ないと反発する声が相次ぎまして」
「クーデターが起こりそうだと」
「その通りです」
やはりウルティアと同じ流れになっているのだな。
「恐らくクーデターの首謀者は奴隷開放に反対する勢力なのであろう?」
「ど、どうしてそれを」
「俺がどうしてこいつを連れて来ていると思っているのだ」
「そ、それは……」
「先程、ウルティアでも同じようにクーデターが起こりそうだと言っててな、犯人を炙りだしたのだが、ウルヘイドは女王本人だったからな。連れて来ているわけだ」
「な、ウルティアでもクーデターが?それにウルヘイドは女王本人とは……」
「ちなみにウルティアの首謀者は前王の弟であった。話しにならんかったから死んでもらったが後はシルヴァ王に任せてある」
「はっ、えっ、殺した、のですか?」
「ああ、話しても理解出来んようだったのでな」
本当に理解力が足りない王達だ。
キャパを越えるとテンプレみたいにワタワタしだすな。
「一つ報告が遅れたが、昨日ウルヘイド帝国は事実上滅ぼした。こいつを残して城にいた奴等は皆殺しにしたからな。後日体制が整ったら娘のエマが新たな女王となる。迷惑をかけるかもしれんが宜しく頼むぞ」
「ほ、滅んだ……ウルヘイドが滅んだのですか?」
「ああ、そうだ。現に俺がこいつを連れ回しているのが証拠だ。娘の戴冠式の時に奴隷の開放を宣言する予定だ」
「さ、左様でございますか……」
見事なまでにテンパっているな。
このウルド王国のクーデターの首謀者はダラム王、こいつ本人だからな。
「で、お前は王としてどうする?基本的に俺は話し合いで解決することを望む。こちらの話しを聞かないなら実力行使に出るまでだが?」
「ぜ、全面的に協力を致しましょう」
ほう。なかなか利口な考え方だな。
「当然、ディルナル国としても協力は惜しまん。何かあるなら気軽に言ってくれ。それと奴隷商に対する扱いで、魔物の素材を卸させるならしっかりとした体制を作れよ。利益だけを追求してまた下らん事になっても困るからな」
「勿論でございます」
良かった。
きちんと選んでくれて良かった。
一歩間違えてたら俺はダラムを殺していただろう。
そうなると次の王はヤツになった可能性が高い。
漢の娘が王様の国って……ある意味、いや、普通に新たな魔王の誕生だぞ。
魔王の国よりカオスな国の誕生って、どーなのよ。
その一点だけは褒めておくぞ、ダラム。
「良い返事を期待しているぞ、ダラム王よ」
「はい、勿論でございます」
俺はダラムの表情をしっかり見るとウルヘイドへと転移した。
「突き合わせて悪かったな」
俺は女王を再び部屋へと閉じ込めた。
魔術で縛っているから返事は出来ないんだけどな。
こいつも日程が決まり次第処刑の予定だ。
それまで残りの人生を楽しむといい。
俺はエマのいる玉座の間へと行った。
「あっ、パパおかえりー」
玉座へと座り、可愛らしく声をかけてくれたエマ。
それは良いのだが何故に配下どもが正座をしている。
「なにがどうなっての光景なのだ?」
俺の理解出来る範疇を軽く超えていた。
「だってエマは楽しい国にしたいって言ってるのに残党刈りだぁーって騒ぐから怒ってたの」
流石、俺の娘だ、訳がわからん。
「人を殺したらダメなんだよ。それで悲しんじゃう人がいるんだよ。そんなんじゃ楽しい国なんて作れないんだもん」
難しい問題ではあるが、確かに血を流さずに物事を成す事が究極であろう。
その上で理想の国を作る、か。
ははは、普通に俺はエマに負けているな。
流石だ、流石エマだ。
「そうだな、エマ。エマが好きな国にすれば良い。きっとそれが一番素晴らしい国になる」
「うーと、エマわかんない。でもこの人達はダメです。ダメダメなんです。だからエマ怒ってるんです」
「ははは、エマは凄いな。俺が出会った王様の中でエマが一番王様らしいぞ」
「パパ、それは悪口ですか?エマは王様じゃありません、エマです」
「ははは、悪い悪い。そうだな、エマはエマだ。ずっと俺の娘だ」
「もぉー、違うもん!エマはパパのお嫁さんになるんだもん!ずっと娘じゃないんだもん」
ははは、嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
もう何年かすればエマも素敵な男性と出会えるさ。
……そんなヤツは俺が現れたら俺が始末するがな、ふっ。
「今のパパの顔は嫌です、キモいです!」
エマさんやキモいはダメだ。
少なからず心にダメージをおってしまうだろ。
「ひとまずこいつ等を許してやれ。昼飯を食べに戻るぞ」
「うん!みんな、人のことを殺すとか言っちゃダメなんだからね!エマ怒るんだからね!みんなで仲良くしなきゃダメなんだからね!」
「「「はっ!かしこまりました」」」
下手したら俺より威厳があるな。
ひょっとしたら、想像以上にすごい女王になるかもしれない、楽しみだ。
そんなエマを連れてディルナルへと転移した。
「おかえりなさいませ、アルス様、エマ様」
「ああ、昼食にする」
「ただいまー」
「ご用意は整っておりますので食堂へどうぞ」
食堂へと移動したけどやっぱ自分の城が一番落ち着くなぁー。
俺はイスに座るとゆったりとコーヒーを味わう。
うん、美味い。
やっぱりのんびりとコーヒーを飲んでいる時が一番落ち着く。
なんとも贅沢な時間だ。
もう、二、三日、遅くとも一週間もすればウルティア、ウルド、共に調印となるだろう。
そうなればエマの戴冠式を行わなくてはな。
それまでに小国がどれ程賛同するのか。
こればかりはわからんが奴隷の開放はあら方なったとみて大丈夫だろうな。
問題はこれからの奴隷達の生活か。
簡易住居の設置、共同の風呂や共同のトイレなんかもあったほうが良い。
衣類や当面の食事はこちらから提供するとして、やはり仕事か。
教育機関を作って勉強させても独り立ちするまでは相応の時間がかかる。
難しい話しはわからん。
無責任だがぶっちゃげ王達に丸投げだな。
俺は出てきた料理をエマと二人で楽しく食べた。
あのアホな王達も、ここの飯のようにもっと美味い物を食えばもっと余裕をもって生活出来そうなんだがなぁー。
って、これいけんじゃね?
働き口がないヤツはうちのキッチンで働かせる。
ここで腕を磨いて人族の城や街でコックをやらせる。
伝説の料理人大量投下だ。
美味いから絶対に儲かる。
魔大陸料理として話題にもなる。
あ、案外良いかもな。
これはアイデアとして残しておこう。
というか、奴隷開放の約束させたら、またやることなくなったな。
次は何をして時間を潰そうか。
なんか面白いことないかなぁー。
この日はエマと二人でダラダラと遊んだのだった。
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