死ぬまでに世界平和を実現させる。
俺はやらないが壮大な目標ができた。
こんなん笑うしかない。
誰が出来ると思うだろう。
だから良い。
そんなの実現不可能と笑うだろう。
だから良い。
夢物語だろうとバカにするだろう。
だから良い。
俺はアホは嫌いだが、バカは好きだ。
こんなバカな事を考える自分のバカさ加減に笑いが出る。
「館内ではお静かにお願い致します!」
めちゃめちゃメティスに怒られた。
凛とした清楚なお姉さんがブチ切れである。
ぶっちゃげ嫌いではない。
そういう性癖ではないがなんとなく理解は出来てしまうぐらいに良い感じのキレ具合であった。
お姉さん、素晴らしい響きである。
この世が叱ってくれる『綺麗なお姉さん』で満ち溢れていたら世界から戦争は無くなると思う。
体肥えたブサイクなお姉さんではない。
大事なことなのでもう一度言う。
『綺麗なお姉さん』だ!
世界平和に一番近づくのではないだろうか。
いっそのことババアと口うるさいだけのブサイク女子は全て殺すか?
ごほん。
発想がぶっ飛んだ。
世の中、イケメンと綺麗なお姉さんだけになったら俺も排除されてしまう。
それはご遠慮頂こう。
冗談はさておき。
人族との交渉は配下に動いて貰えばある程度は形になると思う。
ディアブロに任せたから当たり前のように国を一つ二つ落として来そうで怖い。
『アルス様に暴言を吐いたので』とかいう簡単な理由で普通にやりそうだ。
いや、ヤルだろうな。
あいつなら間違いなくヤル。
こんなときに必要以上の忠誠心はいらんのだよ。
疲れているのだろうか。
変な方向へ思考が向かっているような気がする。
ひとまず残りの本も読んでおこう。
封印。
封印にもいくつかの種類がある。
精霊の力と魔術を使って世界、その大地に縛りつけておく方法。縛られている者の意識は途絶え眠りにつく。その者の寿命が尽きるまで死ぬことはない。
一時的に能力に制限をかけるもの。
魔術を使い一部の制限をかける方法。制限をかけられた者は一部の能力が使用できなくなるが行動を縛ることはできない。
膨大な魔力を使用し、次元の外に飛ばしてしまう方法。次元の外に送るためこの世界での存在はなくなる。
うん、意味がなかった。
デバフ系は自分にかけてみたのだが、恐らく俺には効かない。
自分にはかけれない可能性もあるが、意味がなかった。
大地に封印されても自力で解くことができそうな気がする。
次元に飛ばされるのは勘弁してもらいたいが、空間収納の魔術を応用すればこれもなんとかなりそうな気がする。
どこに飛ぶかわからないので試したくはないけど。
そもそも聖剣の力で弱体化させられた感覚がないからなぁー。
全部ボツだ。
そもそも俺の不死ってどうやったら解除できるのだろう。
不死じゃなければ普通の剣でも殺されそうなのに。
まぁーいい、またじっくり考えよう。
「メティス」
「はい、なにか御用でごさいましょうか?」
「一度戻る。本を任せてもいいか?」
「かしこまりました。また起こしください。お待ちしております」
何故に顔を赤らめて言う。
綺麗なお姉さんに『またね』と言われた段階で男なら飛び跳ねそうなものなのに、顔を赤らめながら言われると砕け散るぞ。
俺はお姉さん属性だったのだろうか。
「ああ、ありがとう」
とりあえず感謝だけ述べて俺は玉座の間へと戻った。
「おかえりなさいませ」
「ああ、城に変わりはないか?」
「変わりはありませんがこちらをご覧くださいませ」
ディアブロに言われてモニターに映るセレネを見た。
ズタボロだった。
それもそのはずだ鎧くんが四体で攻撃している。
二体同時に剣で攻撃する鎧くん。
思いっきり跳びのくセレネ。
跳びのいた先にいた鎧くんが盾で殴りつける。
咄嗟に横へ移動しようとするセレネ。
方向が変えきれていない。盾にぶつかる!といった瞬間盾を足で蹴って自ら跳んだ。
吹き飛ばされた勢いを回転して殺し受け身を取ると直ぐに立ち上がりまた鎧くんへと向かっていく。
鎧くんの剣を大袈裟に躱して間合いを詰めていく。
今度は盾で殴られて吹き飛んだ。
凄いな。
鎧くんの剣を躱しても地面が爆ぜて吹き飛ばされる。だから大袈裟に避けて吹き飛ばされないようにしながら接近する。
他の鎧くん達が上手く連携してセレネからの攻撃は許していないがセレネも攻撃を喰らうことは減ってきていた。
あいつ、またバクりやがった。
あの猛攻を避けるとは。
「おい、どれぐらいこうしているのだ?」
「かれこれ一週間になります」
「たったそれだけの期間であれ程成長するとはな。驚きだ」
恐ろしい成長度だ。
あいつに攻撃を当てれるヤツはどれほどいるのだろうか。
面の攻撃以外だと全て躱しきるだろう。
範囲攻撃をもってないと詰みだな。
全て躱されて一方的に殴られて終わりだ。
どうかしたら範囲攻撃すら躱しそうな勢いだもんな。
まあ、セレネは放置でいいな。
「ディアブロ、頼みたいことがあるのだがいいか」
「なんでございましょう」
「人族と交渉を進めてもらいたい。内容は、魔族は魔獣の排除に協力するという内容だ。こちらからの要求は魔族に手を出すな。これだけだ」
「人族にでございますか?」
「そうだ。人選は任せる」
「かしこまりました」
「くれぐれも喧嘩は売るなよ。そして安く買うなよ。俺からの注意はそれぐらいだ」
「御意」
ひとまず交渉に行かせ様子を見てから動きを決めよう。
相手の出方もわからんからな。
セレネの成長よりこの交渉のほうが長引きそうだ。
直ぐに交渉成立とはいかないだろうな。
最初は顔見せ程度で良いだろう。
それこそ気長にやればいい。
「ディアブロ、ある程度セレネが膠着状態になったら教えてくれ。あいつの攻撃力では鎧くんは倒せん。逆に鎧くんの攻撃もそのうち全て当たらなくなるだろうからな」
「かしこまりました」
「俺は席を外す」
「御意」
人族の国を一度見ておこうと思う。
ディアブロに言うと着いてきそうだしうるさそうだ。
こういうときはお忍びで行くに限る。
とりあえず人族の王都にでも行って街の様子でも見てくるとするか。
金は適当に金貨と銀貨を持っていけばなんとかなるだろう。
さぁーてどんなところか行ってみるとしよう。
地図を作ったからある程度の街の位置はわかる。
俺は転移して人族の王都へと行った。
移動したのは街の外からだいぶ離れた位置だ。
比較的大きな外壁に囲まれた街が、中央には小さな城のようなものが見える。
街へと入る門には多くの人が列を作っている。
入国審査とかそんな感じだろうな。
俺は気にせず転移して街の中へと入った。
率直な感想。
人が多すぎる。
密集している。
外見は下の下だ。
顔も服装も体型も下の下だ。
これは酷い。
最近身の回りにいる奴らが美男美女揃いというのもある。
にしてもだ。
うん、こういったところで価値観を決めるのは間違っている。
俺も人のことを言えたような容姿ではないからな。
大通りには多くの人がところ狭しと行き交い、中央には馬車が通っている。
鎧を着た兵士の姿もちらほら見える。
沢山の店もあり、多くの露店なども軒を連ねていた。
楽しそうな雰囲気ではあるんだがなあ。
美味しそうな匂いなどしない。
いろいろな食材や調味料が入り混じった匂いだ。
ぶっちゃげ臭い。
焼き鳥っぽい露店があったので声をかけた。
「初めて王都に来たのだがこのお金は使えるのか?」
「どれだい、見せてみな」
ガタイの良いおばさんがそう言うので銀貨を一枚渡してみた。
「あんたこれ純銀貨じゃないか、こんな高価なもんここらじゃ使えないよ。換金所に行きな」
どうやらこの銀貨は高価な硬貨だったらしい。
換金所の場所を聞いて店を後にした。
言われたとおりに道を行くと銀行っぽい場所にきた。
「いらっしゃいませ」
凛としたブスなお姉さんが対応してくれた。
「換金したいのだがここで大丈夫か?」
「はい、こちらで換金いたしますよ」
俺は銀貨を一枚だした。
「これでどれくらいの価値になる?」
「こちらは純銀貨ですね。銀貨百枚になりますね」
「わかった。では十枚頼む」
俺は純銀貨十枚を銀貨千枚に交換した。
これで買い物は問題ないはずだがどの店に寄ってみるか。
店選びは運試しみたいなところがある。
相場もなんの店かもわからないのだからもはやギャンブルだ。
やはり無難に見たことのあるっぽい店にするべきか。
露店を見ながら街をプラプラ一人歩くのだった。
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