昨日は思いっきり現実逃避をした。
何もせずにのんびりすることが出来なかったからだ。
ひたすら霊獣達を追い回したり、追いかけられたり。
寄ってくる霊獣をひたすらモフモフ撫でてやった。
働いているときは休みが欲しくて仕方なかった。
といってもやることが沢山あったからだ。
漫画を読む、ゲームする、アニメを見る。プラモデルを作る。いくら時間があっても足りなかった。
いまはそういった物が一切ない。
世界征服、面倒くさいし、たぶん直ぐに出来る。
旅行?転移できるからどこでも行ける。そもそも旅行に興味がない。映画やアニメの撮影場所を巡る、聖地巡礼ならいくらでも行くが。
ゲーム、この世界で作れるならボードゲームかカードゲーム。簡単に作れるのはリバーシかトランプ、ジェンガ辺りか。恐らくルールを教えた瞬間にディアブロが必勝法を編みだすだろう。始めから勝てないゲームなど作る気がしない。
うん、のんびりの仕方がわからない。
ゆっくりと風呂入る、ゆっくりと寝る、ゆっくり食事、ぐらいしか浮かばない俺はなんて発想に乏しいのだろう。
これを機に俺も身体を動かすか?いや、ダメだ。下手に強くなったらまたセレネが持っている剣が折れるのがオチだ。
どうせなら俺が弱くなる方法でも探すか?
ん?
勇者を強くすることに拘っていたが、俺が弱くなる方法を探せばいいのか?
おお、いいかもしれん。
そうと決まれば、早速調べるとするか。
俺は図書館へと転移した。
「メティス、いるか?」
「はい、こちらに」
「悪いが魔王に関する本と封印に関する本、後は魔族に関する本はどの辺りになる」
「場所がかなり違う箇所にありますのでお持ちいたしましょうか?」
「悪いが頼めるか?俺は奥の椅子にいる」
「かしこまりました」
さて、どの程度載っているか。
よく考えたら昨日もここで浸すら本を読んで入れば良かった。
しばらくはここに引き籠もろうかなあ。
「こちらでございます」
「悪いな。助かる」
「ありがとうございます。では失礼いたします」
さてと、本にのめり込むとしよう。
この世界ができたときに産まれた最初の種族、人族、精霊族、魔族。
その後、時の流れと共に、精霊族から妖精族、エルフ族、ドワーフ族が産まれ、魔族から亜人族が産まれた。
光の魔術に優れた精霊族を光の種族、闇の魔術に優れた魔族を闇の種族とも言うようになっていく。
次第に闇の種族という言葉が根付き、短命である人族は世代が入れ替わる度に闇に対する恐怖を抱き始める。
魔物の影響も大きかったといえる。濃い魔力に当てられると魔物になるのだが闇の魔術が影響していることがわかったためだ。
当然人族は全てを魔族の責とした。
見えない恐怖と闇への恐怖、こうなると人族は魔族を敵とするようになり、光の種族である精霊を頼るようになっていった。
人族は精霊に選ばれた物を勇者とするようになり度々魔族を滅ぼすために剣をとった。
攻められる魔族は人族を返り討ちにする。
こうして今でも戦いは続いている。
これだけ読むと阿呆っぽい。
おもしろいように精霊王に掌で踊らされとるな人族。
けど、学生時代に勉強した歴史も大概こんなもんだった。日本でも世界でも阿呆な理由で争っていることが多かった。たまに命をかけて戦った話なんかがあるから感動するわけだが。
いわれてみれば魔族の奴らから攻撃的な発言は聞いたことがないな。たまたまか?
人間なんて喧嘩の一つで殺すなんてワードが普通に飛び交うのにな。
さてと続きを読むか。
精霊族と魔族は基本的に少数の種族である。
寿命が長いこと、魔力、力、共に強いこと、繁殖に重きを置いてないことが挙げられる。
人族と違って、食事や睡眠の必要が殆どいらないのも要因の一つと考えられる。
種族内での戒律、掟には厳しく命をかけてこれを誓う種族である。
自分たちの暮らす縄張り以外に出向くことはまずなく、同じ場所で生活をする。
魔族は一箇所に固まって生活をするが、精霊族はそればかりではない。
基本的に穏やかな性格であり、守るため以外には力を使わない種族である。
精霊族は気に入った者の願いを叶え力を与えることがある。闇以外の各属性の精霊がおり世界に力を貸しているとされている。
よくよく考えたら前世でやっていたゲームなんで精霊ばっか出てきてたよなあ。考え方変えたら日本の神様みたいなもんだもんな。トイレにもいたぐらいだし。
どこにでもいるのが日本の神様。
どこにでもいるのがこの世界の精霊か?
精霊大陸に行けば精霊王がいるかと思ったときに、いないと言われた理由がわかる。
下手したら精霊って見えない可能性があるな。
そして精霊大陸に全ての精霊がいるわけではないと。
最初に産み出された種族が最初に住んでいた大陸がそのまま名前になったのかもしれないな。
人族大陸、精霊大陸、魔大陸。
魔族は移り住むことなく魔大陸に住み続け、力が弱く移り住むことが出来ない人族はそのまま人族大陸に、精霊族だけが各地に移り住んだ。
後に産まれた種族は人族に追いやられ、精霊大陸に住むことになると。
ぶっちゃげここまで読んだ話は初日にディアブロが説明してた内容だったりする。
相手がムカつくイケメンであってもちゃんと聞いて知識として吸収しとくべきだったな。反省はしないが。
各種族の王について。
最初に産み出された種族の中で一番能力が高い者が王となった。
人族の王、魔族の王、精霊の王。
その子孫が各種王属として種族を纏めるようになる。
王がいなくなると王属から次の王が選ばれる。
こうして能力の濃い者、強い者が王として君臨している。
なるほどな。
最初から王になる血族が決まっていて、その子孫の中からより強い者が次の王になる。中には直系ではないものも現れてくるだろう。覚醒遺伝とかで。そうなると権力争いから種族内の内戦などが起こると。
なんか読めば読むほどに前世で学んだ勉強となんら変わりのない歴史だなあ。
どこの世界でもこんな感じになるのか?
まあ、いくらファンタジーとはいえ、似たような見た目だし、似たような感じになるのかもしれないけど。
どこかアホ臭く感じるよなあ。
人族との和解なんて簡単じゃないのか?
お互い交流がなかったからいけないのだろ?
交流を持てばいいし、人族が魔物を恐れているなら俺達が駆除してやればいい。
魔物なんて魔族には必要がないはずだ。
だったら駆逐してやるのにな。
そうなれば人族は魔族を滅ぼす必要がなくなるだろ?
簡単には上手くいかないのもわかるがどうにでもなりそうなんだけどなあ。
俺はやらないけど。
誰がなんと言おうと面倒くさい。
この世界のことはこの世界の奴らでなんとかしろ。
アイデアぐらいならやるが、俺はやらん。
まあ、いままでの魔族の王もこんな考え方だった気がなんとなくする。
今の生活が保てればいいのだ。
変なイベントとかいらないのだよ。
毎日が同じように繰り返す。
これが平和ってもんだろ。
天災や災害は仕方がない。
防げるに越したことはないが防げないものも存在する。
そんなときは種族を超えて手と手をとればいいのだ。
食料難とかもあるかもしれないがそんなときはある所からわければいいのだ。
みんなが幸せになる方法はある気がするのだが。
俺が魔王という立場だからだろうか。
柄にもなく世界平和なんてものが頭を過ぎった。
普通の平和。暮らし。
求めてはいけないものなのだろうか。
どの世界でも可能な気はするのだが、俺が未熟故なのだろうか。
この世界の平和ぐらいなら叶えられるかもしれない。
いまの俺には力がある。
動いてくれる優秀な部下がいる。
やれないことはない気がする。
俺が死ぬまでに争いのない世界を作る。
俺はやらないが。
案外悪くないかもしれない。
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