夜明け前、玉座の間。
俺は一人、玉座に座り考えていた。
スキル。
通常は持たない特殊な能力。
人によっては気づかずに使っている場合が殆どらしい。産まれた時からそうなのだから自分がスキル持ちだと知らない者も多くない。
逆に周り者は不思議に思ってもスキル持ちだと思わない。その人の努力だと思うだろう。
スキルの判別方法とスキルの解析。
魔力で判別が出来ないならそれ以外の方法となるが。
魔力を飛ばして調べるのではなくて自分の目に魔力を持たせて見る、とか?
うーん。
悩んでいても仕方がない。
俺は一階のエントランスホールへと転移した。
目的は『鎧くん』だ。
ウザい悪魔と違って鎧くんは基本的に微動だにしないし喋りかけてこない。
ただひたすら俺は鎧くんを眺める。
自分の目に流す魔力の質や量色々変えながらじーっと眺める。
眺めるが何もわからん。
というかどういった方法でわかるのだろうか。
頭に直接数字が浮かぶのか?
誰かのささやき声がするのか?
それとも目の前にテキスト的に現れるのか?
テキストだとうざいよな。視界が文字だらけになるし。
あ、なんか見えるかも。
ぼんやりと何かが微かに見える。
目を細めて凝らすように見るとピントがあった。
目の前には……
鎧くん
デモンズキングアーマー(ゴーレム属)
ランク 50
攻撃力 B
防御力 S
素早さ D
器用さ E
知力 E
スキル
【鉄壁A】【自動修復A】【全魔術耐性A】
鎧くんはエゲツない強さだった。まさに鉄壁。
そして『鎧くん』は正式名称になっていた。
見ようと思ったら凄まじく詳細までわかるが文字が多すぎる。ひとまずランクとスキルがわかればいい。と思ったら調整できた。
というか慣れると全く魔力は必要なかった。
使い方がわからなかっただけなんだろう。
きっかけがあればスキルも習得可能と。
というか鎧くん強いなー。
セレネじゃ無理だろ。
玄武の超強化版だし。
ってセレネの稽古相手に持ってこいじゃん。
対戦候補に入れておこう。
ありがとう鎧くん。引き続き頼むぞ。
俺はレジャー施設へ行き、ペットのステータスを確認してから玉座の間へと戻った。
「おはようございますアルス様」
「ああ、おはよう」
一瞬、ディアブロのステータスを見ようかと思ったが嫌な予感しかしないので見るのをやめた。
「スキルを習得されたのですか?」
さすがに気づくのが早い。
「ああ。相手のステータスが見れるようになった」
「魔術のみならずスキルまで。さすがアルス様でございます」
こいつ必要以上に持ち上げすぎなんだよなぁー。
悪い気はしないがあんまりやられると、ちょっと気持ちが悪い。
「ディアブロは俺のステータスが見えているんだよな?」
「はい、いくつかならばですが」
「全部見えているわけではないのか?」
「スキルにもランクがあるのはご存知だと思いますが、この【鑑定】というスキルは相手より実際のランクが高くなくては実行不可能なのです」
なるほど。自分と対等、もしくは格下までしか見れないと。
それなら人族が子供のときに洗礼をさせるのも筋がとおる。ランクが上がる前に【鑑定】する。
恐らく教会の一番偉いヤツが王族の血を引いており、人族でも高ランクだとするなら、全ての人族の【鑑定】ができる。
例外が勇者。
【鑑定】が出来ない段階で高ランク。
勇者の可能性が上がる。
後は聖剣を握らせれば判別が出来るってわけか。
「だがスキルにもランクがある必要がないのではないか?」
「スキルのランクにより【鑑定】で見れる範囲が変わってくるのです」
【鑑定】
D……弱い相手のランクがわかる。
C……弱い相手のステータスまでわかる。
B……弱い相手の保有スキルまでわかる。
A……対等な相手までの保有スキルまでわかる。
S……ランクに関係なく全ての情報が見れる。
なるほど、最低Bはないと使えないわけだ。
これは他のスキルでも言えることでスキルランクB以上の性能は全く別物らしい。
言わずともSは異次元だ。
「ディアブロは?」
「ご覧になられたほうが早いかと」
見たくないんだよなぁー。
この余裕たっぷりなイケメンスマイルが死ぬほどムカつくんだよなぁ。
絶対に見たあとの俺のリアクションに期待している。
「お前のステータスなど見たくない」
「ご覧になられたほうが早いかと」
同じ言葉を繰り返すな。付き合ってやらんぞ。面倒くさい。
あぁーまじで気が乗らない。
ディアブロ
マスターデーモン(魔王属)
ランク 80
攻撃力 A
防御力 A
素早さ A
器用さ A
知力 S
スキル
【魔王A】【全魔術適正A】【全魔術耐性A】【体力自動回復B】【魔力自動回復A】【鑑定S】【叡智の力S】【未来予知B】
なんじゃこりゃ。
なに、魔王属って。スキルにも【魔王】ってなんなの。
「やっぱお前魔王じゃん」
「アルス様を差し置いて魔王などとは名乗れませんよ、ははは」
何故に嬉しそうな顔をして高らかに笑う。
「魔王属とかスキルの【魔王】とか意味がわからんのが多すぎる。【叡智の力】ってなんだよ」
「私も詳しくはわかりかねますが、魔王属とは魔王になる器を持って産まれた者のことです。同じくスキル【魔王】とは魔王になるための力のことです。【叡智の力】に関しては私の予想になりますが、この世界の出来事を記憶しておく力と思われます」
やっぱよくわからん。
こいつのことはどうでもいいんだ。
「そういえば【鑑定】がSならば俺のステータスが見れるんじゃないか?」
「恐らくアルス様には相手のスキルを妨害する力が働いているかと思います。私では全てを見ることができません」
妨害スキルか。ありがちではありそうだな。
見たままを鵜呑みにするほど馬鹿ではないが気をつけたほうがいいかもしれん。
「おはようございまーす」
「ああ、おはよう」
良い所にセレネが起きてきた。
俺はセレネを【鑑定】した。
セレネ・クヴァリル・ディルナル
人族(勇者属)
ランク 32
攻撃力 E
防御力 D
素早さ B
器用さ D
知力 E
スキル
【勇者S】【精霊王の祝福S】【未来予知A】【魔王の祝福B】【霊獣の加護B】
平凡過ぎる。
全体的にもう少し高いと思っていたんだが。
というかスキルにある【魔王の祝福】ってなんだ?俺がいつこいつに祝福を贈ったのだ?
俺がかけたのはお仕置きの時にした嫌がらせの魔術ぐらいだぞ。
一旦解いてみるか?
「なに、アルス。じっと見つめてどうしたの?恥ずかしんだけど。って、えっ、なんで?身体が軽い」
セレネ・クヴァリル・ディルナル
勇者(勇者属)
ランク 32
攻撃力 E→D
防御力 D→C
素早さ B→A
器用さ D→C
知力 E
スキル
【勇者S】【精霊王の祝福S】【未来予知A】【霊獣の加護B】
魔術を解いたら【魔王の祝福】が消えて能力が上がった?というか戻ったのか。ってことは祝福って呪いのことなのか?
霊獣の試練で受けた祝福は『加護』になっている。
ってことは【精霊王の呪い】ということか。
セレネが非力な理由が少しわかってきた気がする。
となるとだ。
俺は部屋の端に寄せられて置かれている聖剣のところまできた。
道具相手だとどうなるかはわからんが文字通り物は試しだ。
聖剣ティルヴィング
攻撃力 A
スキル
【精霊王の祝福S】【聖剣の加護A】【自己修復C】
やってみるものだな。
ここにも【精霊王の祝福】か。
もう一つ試したいこともあるのだがセレネでは危険か?
これはあいつで試しておくか。
「ディアブロ、お前で試したいことがあるが良いか?」
「アルス様の頼みで有りましたら何なりと」
「お前に力を与える」
ディアブロに俺の魔力をごっそり渡して祝福を贈る。
ディアブロ
マスターデーモン(魔王属)
ランク 80
攻撃力 A→S
防御力 A→S
素早さ A→S
器用さ A→S
知力 S
スキル
【魔王A】【全魔術適正A】【全魔術耐性A】【体力自動回復B】【魔力自動回復A】【鑑定S】【叡智の力S】【未来予知B】【魔王の加護S】
「ひゃぁぁーーちからがみなぎるぅぅぅぅーー」
やはり【魔王の加護】だな。ビンゴすぎる。
どうやら精霊王とやらを探して、しばき倒さないといけないらしい。
恐らくこの世界の神か、それに準ずる者だろう。
そんなの知った事じゃない。
俺に喧嘩売ったことを後悔させてやる。
「ふぉぉぉーーーちからがみなぎるぅぅぅぅーー」
余談だが、この後もずっと叫び続けて煩かったので、すぐにディアブロへの祝福は取り消した。
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