この世界での強さ。
一言で強さと言っても普通は計る事の出来ない物だ。
だがこの世界には強さをわかりやすく表したものがある。
それが『ランク』や『レベル』。
ランク1はレベル10以下。
ランク2はレベル20以下。
弱い人族などは細かい数字や些細な違いに拘るらしい。そういった場合はレベルを使うことが多く。
逆に元から強い魔族は些細な違いや細かいことを気にしないので大雑把にランクを使う。
確かにレベル10のランク1とレベル11のランク2だとレベル的に大差なくてもランクが違う。
同じようにレベル11のランク2とレベル20のランク2も同じランクになるが違いがある訳だ。
拘る奴は拘るのかもしれない。
そして、種族ごとに産まれた時からランクの上限があるそうだ。
人族や動物でいうと、
ランク1(レベル10以下)
村人や商人、非戦闘職の者。小型肉食獣や中型動物。
ランク2(レベル20以下)
警備兵や冒険者、肉体労働者。中型肉食獣や大型動物
ランク3(レベル30以下)
王族、騎士、戦士、魔法使い、戦闘職の者。大型肉食獣。
といった感じで辿り着けるランクはある程度決まっている。
いくら頑張ろうと超えられない壁が存在するのだそうだ。
レベル10を超えてランク2になる村人はまずいないし、いても極少数とのこと。
つまりランク4に到達出来る人族はほぼいない、ということだ。
人族以外の種族だと人族のランクにプラス1。
エルフ族の村人ならランク2、エルフ族の戦士ならランク4、って具合だ。
非常にわかりやすい。
魔物についてはランク1の極弱からいらいろいるらしい、が数や種類が多すぎていちいち分類してないのでよくはやからないそうだ。なんにせよ魔物なんて全く相手にならないので把握する必要がないとのことだ。
そしてこの型にハマらない唯一無二の存在。
『勇者』
特別な存在らしく、勇者には限界値の設定がないらしい。
限界を超えて成長するそうだ。
確かに勇者らしい設定だ。
そして、驚くべきことに、あのガクブル残念勇者が人類最強のランク5。
しかも絶賛成長中!らしい。
まじで信じられん。
あ然とする、とか、目が点になるってこういうことなんだね。
にわかには信じがたい話なんですけど、あれで人族最強。
あんなんが人族最強?
いいのか人族!立ち上がれよ人族!
っん?待てよ、まぁ勇者っていうんだから最強でもおかしくはないのか?
勇者なのだから最強なんだろう。
最強の人族の勇者、しかも伝説の聖剣付き。
ってことは、だ。
い、嫌な予感がする。
嫌な予感しかしない。
気づいてはいけないことに気づいてしまった、かもしれない。
見てはいけないものを見てしまった、的な。
人族で最強の勇者は伝説の聖剣を使い魔王に攻撃しました。
ダメージはゼロ。伝説の聖剣は砕け散った。
実際に俺に傷一つつけることは出来なかった。
多少ランクに差があったとしても多少のダメージぐらい喰らう可能性はあるはずだ。
オレ、ムキズ、セイケン、オレタ。
薄々は気づいている。
ぶっちゃげあまり聞きたくないことを聞かなくてはいけない。
さっきの話の時もわざと話さなかったんだろうなぁ。
はぁ。覚悟を決めるかぁ。
「説明の途中で悪いんだが、なぜ魔族の話をしない?」
覚悟は決めた。
「この世界の話をわかりやすいお話しようと思いまして」
キラキラエフェクトを二重に展開した悪魔リーダーが言った。
正解するとエフェクト効果が強くなる。
「確かにわかりやすかったが、魔族の話をしないのは?」
「少しばかり状況が変わりましたので」
「えらく遠回しな言い草だな」
テンポよくいきたいのだが遠回しにしか伝えてこない悪魔リーダー。
キラキラエフェクトがどんどん展開される。
話したくてウズウズしてるんだろうなぁ。
周りくどいのは嫌いだ。ズバッと聞こう。
「お前はランクでいうといくつだ?」
なんとなく想像はできる。
わざとらしく魔族の話は避けていた。
聞きたくはないが聞かねばならない。
思い切って足を踏み込む。
「恥ずかしながら、私のランクは8でした」
はい、勇者より強かったです。
そりゃそうか、連れてこいと言って、連れてこれるんだから。
などと勝手に納得してると、悪魔リーダーは俯きながら言葉を続けた。
「ですので、聖剣を使い、力を解放させた勇者に討伐される可能性がありました」
討伐される可能性があるぐらいっていうなら、討伐されない可能性のが高かったってことだろ。やっぱこいつがラスボス設定だったんじゃないのか。
ってなんだか聞き捨てならないワードがでてきたなぁ。
「聖剣を使うことで勇者は強くなるのか?」
「聖剣には勇者の力を倍増させ魔族を弱体化させる効果があるのです」
ただのよく切れる剣(俺は切れなかったけど)ぐらいかと思ったら中々の性能だ。
勇者にバフがかかり魔族にはデバフがかかる。
確かにそれだとランク5の勇者でも有利になるのかもしれない。ランク8の悪魔リーダーだと確かにきついかったのかもな。
ってゆーか、
「でした、と言ったか?」
過去形で語っていたもんね。
「魔王様がお目覚めになられましたので」
よくぞ聞いてくれました、みたいな顔をするな。
俺が目覚めたからってのはよくは理解が出来ないが、なんとなくこの後の答えはわかりました。
強くなってるんですね。わかってます。
ある程度は予想はできますよ。
だけどあえて聞く。
「ちなみにいまのランクは?」
「この姿ですとランク15です」
およそ倍になっとる。
そして、『この姿』って、まだまだあるんかい!
わかってます。なんとなく答えはわかってます。
ちゃんと予想はしてますよ。
わかっているがあえて聞く。
「で、その姿を、解除すると?」
「まだランク30といったとこでしょうか」
「っっ!」
はい、さらにドンッ!勇者の6倍!
なんなんだこのインフレは。
もはや聖剣うんぬんじゃ無理やん、残念勇者ごときじゃ手におえんやろ。
なんなんだこの無理設定は。
勇者に厳しくないか?
しかも『まだ』って言ったぞ。『まだ』って。
「もう少し魔王様の力が馴染めればもっと強くなれるのですが」
何故か悔しそうに語る悪魔リーダー。
いいよ、いいんだよ、充分だよ、無理してそれ以上強くならなくていいんだよ、段々と勇者が可哀想になってきた。
「いまのままで充分であろう?」
「このままでは魔王様のお役にたてませんので」
たってるよ、充分お役にたってるよ。
なにをめざしちゃってるの?魔王の座でいいならすぐにでもあげちゃうよ。なんなら玉座に座ってみる?
「充分役にたっておる。いまのままでよいぞ」
「ありがたき幸せ、ですがせめて魔王様の半分程度にはなりませんと」
なんか恐ろしいこと言っておりませんか?
誰の半分って?
悪魔リーダーが俺の半分以下?
ないないないないないない。
そんなんいったら俺どれだけ強いのよ。
ありないっしょ。
「ちなみに魔王様はランク100は軽く超えているかと」
「ふぁっ!」
変な声がでた。
「正確には計測できませんので」
何故か嬉しそうに語る悪魔リーダー。
「その計測っていくつまでできるんだ?」
「ランク100辺りともなると誤差が大きくなるものですから」
ざっくりレベル1000ってことかぁ。
戦闘力53万とか言われなくてよかったけど計測不能って。
あえて聞くけど、
「俺が勇者に殺られる可能性は?」
「ダメージを負うことすら万に一つも有り得ないかと」
爽やか笑顔で答える悪魔リーダー。
何故かご満悦だ。
そりゃそうだよねー。
どうやって俺のこと殺させよう。
現実のきびしさを思い知らされた。
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