大雑把な目的が決まった。
精霊王をみつけてセレネにかかった呪いを解かせる。
とはいえセレネには引き続き強くなってもらわないといけない。
「おいディアブロ、ランクを上げるのに必要なのは魔物の討伐数なのか?それとも単純な経験なのか?」
「討伐も大事ですが経験することでも能力は上昇致します」
となるとしばらくはアレで決まりかな?
「うわぁー。わたし猛烈に嫌な予感がしたんですけどー」
「安心しろ。今日からは城の闘技場で鎧くんと訓練してくれ」
「嫌です、その笑顔がめちゃめちゃ気持ち悪いです」
せっかくディアブロのように爽やかさを全面にアピールした笑顔で言ってやったのに速攻気持ち悪い言いやがった。
「アルス様の笑顔、キモい」
おい、ラミアさんキモいはきつい!
心を無にした抑揚のない感じが尚更きつい!
男にキモいって言っちゃダメだよ。
「とりあえず朝飯を食ったら訓練だからな」
くそっ、本当は鎧くん一体と訓練させるのつもりだったが、数体用意してやる。この怒りは鎧くんに預けよう。
「ついでに訓練の時に霊獣を使っても良いからな。あいつら殺さないように気をつけろよ」
ついでに霊獣を鍛えるには良いタイミングだろう。
「いやいや、死ぬかもしれない訓練なら連れていきませんよ。もちろん私も断固拒否です。何いってるんですかぁー」
「だったら霊獣の連れ出しは金輪際一切禁止な」
「えー、それそれで嫌なんですけど」
怪我をさせたくないと言うから意見をあわせてやったのに、何故に嫌がる。本当にこいつは訳がわからん。
「もういい、ひとまず飯にしよう」
埒が明かないので食堂へと移動した。
テーブルには軽めの料理が多数並んでいる。
さすがに毎回朝からフレンチのコースやら中華料理やらが出てこられても食べれない。
いや、実際は美味しすぎて全て食べるのだが、一日中胃もたれしているような気分になる。
朝は軽めぐらいでいいのだ。
それぐらいが胃腸の弱った元日本人には丁度良いのですよ。
焼きたてのパン。
クロワッサン、シンプルなコッペパン、カリカリのフランスパン。
どれも焼きたてだ。
焼きたてなのだ。
これほどの贅沢があるのだろうか。
薄切りだがしっかりとした大きさのベーコン二枚の上に目玉が二つ乗ったベーコンエッグ。
真っ白でとろみのあるジャガイモのポタージュスープ。
彩りの綺麗なサラダ。
少し濃い目のブラックコーヒー。
完璧ではないか。
俺の求める究極の朝ごはんがここにあった。
まずは熱々の苦いコーヒーを一口。
一息ついたら、ここでカリカリのフランスパンだ。ザクッとした後のフワフワな食感。立ち上る湯気とパンの香り。
一口スープを含む。
パンで持っていかれた水分を潤すと同時に口に広がるジャガイモの甘み。
ここでサラダだ。程よい塩加減と油分。シャキシャキの野菜達の甘みと苦味が押し寄せてくる。口の中がサッパリとする。
満を持してベーコンエッグだ。
軽く黄身を潰し、垂れてきた半熟の卵黄を白身とベーコンに絡めて口へと運ぶ。途端に溢れ出す幸福。
そして再びフランスパンを噛じる。
一息ついてからのコーヒー。
なんだここはやっぱり天国なのか。
クロワッサンを食べ、ベーコンエッグを食べ、スープを飲み、バターをたっぷりとつけたコッペパンを食べ、おかわりをしたベーコンエッグを食べる。
やはりここは天国だ。
俺の食べる量とスピードを計算しているかのように出てくる出来立ての料理。
軽めと言いながらかなりの量を食べてしまった気がするが、それもこれも料理長ニクロスの陰謀であろう。
決して自分の欲望に負けたわけではない。
ヤツの策に嵌っただけなのだ。
とか頭の中で言い訳をしていたが目の前の光景は相変わらず欲に真っ直ぐだった。
ベーコンエッグだけで50皿オーバーは食べ過ぎだろ!
卵百個以上やぞ!薄切りとはいえプラスでベーコン二百切れ!
パンは何個食ったんだ?パンを食べているところもちょくちょく目にしたぞ。スープは何回おかわりしたんだ。
ちなみに野菜を食べているところは見ていないぞ。
すげー。やっぱこいつ超人だよ。敵わん。
その後も普通にデザート食ってたもんなぁ。
朝から完敗してしまった。
「今日は腹八分ですよー。バッチリ動けます」
あれだけ食べて腹八分って。
どんだけ食えるんだよ。
普通に笑顔でいれるお前が恐ろしいよ。
ごちゃごちゃ考え過ぎてたからと、現実逃避が過ぎた。
「では闘技場へ移動する」
気を取り直して転移した。
そこには既に待機していてくれた四体の鎧くんの姿。
セレネを頼むぞ。
まあ、死なない程度に痛めつけて欲しい。
むろん怪我には気をつけるんだぞ。
「ね、アルスはどっちの心配してるのよ」
こいつは何を言ってるんだ。
鎧くんに決まっている。
鎧くんを傷つけるヤツは許さん。
傷ついたとして勝手に修復されるんだけどな。
とはいえ万が一鎧くんがヤラれたらそいつは俺が殺す。
「セレネの心配に決まっている」
「顔におもいっきり嘘と書かれてるんですけど」
「俺は嘘など吐かん。お前が死なないか心配していたのだ」
「その相手を選んだのアルスでしょ!って、私死ぬかもしれないの!」
ほんとに事ある毎にすぐ文句を言うヤツだなあ。
「安心しろ、全部避ければ死なん。攻撃を喰らった時は知らんが、それはお前のせいだ。それにもっといろいろ集めてきてやるからな。楽しみにしておけ」
「めちゃめちゃ嫌なんですけど」
後は鎧くんに任せるとしよう。
程々にな。無理はするなよ。
「後は任せた。頑張れよ」
俺は玉座の間へと転移した。
本題はここからだ。
「精霊王の居場所を探させろ!」
「精霊王でございますか?」
珍しく驚いたような表情をするディアブロ。
こいつなら何か知っていそうなのだがな。
「ディアブロは何か知らないのか?」
「私が知るのは人族や精霊大陸の者から神のように崇められている者ということ。そしてその者は数百年に一度現れるということのみでございます」
「であれば、どこかに存在はしているということだろ。どんな情報でもいい、探させろ!」
「御意!」
「次は別件だ。この世界に生息する魔物。その中でも強い個体を集めたい。何か知っているか?」
「強いとなるとドラゴンになるかと。現在、各地にいる魔物の主は精々ランク20程度。ドラゴンですとランク40から50程になります」
「ドラゴンの生息地の詳細を調べておけ。セレネに倒させる」
「かしこまりました」
そう言ってディアブロは転移していった。
何故かディアブロにいつものような余裕がなかった気がする。
隙きあらばふざけるやつなのに、だ。
やはり精霊王とドラゴンか。
俺も少し動くことにする。
図書館へと転移した。
「おい、メティス。いるな」
「はい、こちらに」
「悪いが精霊王について書かれた本と霊獣の本、後は真のドラゴンについての本を頼む」
「すぐにお持ち致します」
俺はロビーのように開けた場所にある椅子へと座り本を待った。
「現在お持ちできる本はこちらになります」
「悪いな。ありがとう。下がって良いぞ」
「御意」
俺は本を手に取ると奥の落ち着ける場所へと移動して本を読んだ。
精霊王。
この世を創りし神。幾つもの種類、数多の神を産み出しこの世界の理を創った存在。
数百年に一度、この世の者の姿を借りて地上へと舞い降り、歪んだ秩序を元へと戻す。
実際に姿を見たものはいない。
霊獣。
精霊王が産み落としたとされる獣。
四神と四霊獣の八体が存在し、四神はこの世界を災いから守護し、四霊獣はこの世界を災いへと向かわせる。
四神と四霊獣は対になるもの。
どちらがかけても世界は崩壊へと向かう。
ドラゴン。
精霊王より命を賜ったこの世の管理者。
一体の王と三体のドラゴンにより世界を守護している。
この世界で精霊王以外の神と称される存在がドラゴンである。
よくわからん。まだ本質が解明かれてないからなのか、本に書かれている内容が曖昧過ぎる。
精霊王が世界を創り霊獣とドラゴンを産み出した。
全十二体でこの世界を護っているということか?
四体の四神は倒した。残る霊獣と、ドラゴンを倒せば道は見えそうだな。
途中で焦れて出てきてくれれば、それはそれでラッキーだ。
さぁーて、俺はこいつ等の場所のあぶり出しだな。
セレネを連れて倒しにいくより連れて来たほうが早いか?
まあ、みつけてから考えよう。
見てろよ精霊王。そして出てこい。
お前の創り出した物を俺が全てぶち壊してやるからな!
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