討伐されたい転生魔王

〜弱すぎ勇者を強くする〜
ただのこびと
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奴隷開放 二日目【ウルティア王国】

公開日時: 2020年10月31日(土) 00:00
文字数:3,129

 

 俺は朝から帝国での出来事を報告にアルフヘイムと秋津島に行ったのだが、最後は逃げるように両国を後にした。

 うーん、なぜ俺は逃げ回っているのだろうか。


 そして訪れたのは今回の本命ウルティア王国。

 昨日会った王の中では一番話しを聞く事が出来そう、という印象だな。


 一応礼儀正しく正門前に直接転移で来た。


「突然で悪いのだが、王へ、魔王が来たと伝えてもらっていいか?」


 俺は門にいた兵士にそう告げた。


「しょ、少々お待ちくださいませっ!」


 兵士は慌てて凄い勢いで城へと入って行った。

 やはりいきなり城の前に転移してはテンパるか。

 突然現れたヤツからいきなり魔王と言われるのだ、誰でも焦るだろう。

 これは反省だな、もう少し離れた位置にしよう。


「お、お待たせ致しました、ま、魔王様。中へどうぞ」


 思ったより直ぐに兵士が戻ってきた。

 そんなにガクブルせんでいいんだぞ、よく伝えて来てくれたありがとう。

 俺は中にいたメイドの案内の元、玉座の間へと向かった。


「ようこそおいでくださいました、アルス様」


「昨日ぶりだな、シルヴァ王」


 朝、配下に国を訪問することを伝えさせたのは正解だったな、話が早い。


「何か動きがあったようだが?」


「この度のウルティア王国の奴隷制度の撤廃についてですが、もう暫くお時間をいただきたいのです」


 ほう、やはり時間がかかるか。

 それとも昨日の今日で何かあったか?


「ウルティア王国が魔王に降る、その事に対する貴族の反発がかなり強いのです。まぁそれは建前でしょうが、奴隷制度の撤廃に反対をする者達が中心となりクーデターが起ころうとしています」


「なるほどな、かなりの大物貴族が混ざっているようだな。武力で鎮圧をしてもその後の国が立ち行かなくなるという訳だ」


「その通りでございます」


 まぁ動きの速さからいってかなりの上位貴族、恐らく王族も絡んでいるんだろうな。

 そして下手をすれば、内戦がおこる、か。


「ああ、そうだシルヴァ王よ、一つだけ報告がある」


「何にございましょうか」


「ウルヘイド帝国を滅ぼしてきた」


「な、なんですとっ!」


 中々良いリアクションだな。


「昨日、ウルヘイド帝国を滅ぼしてきたと言ったのだ。奴隷制度の撤廃に行ったのだが余りに欲をかき過ぎてな。女王を残し城にいた者は全て抹殺した。後日、俺の娘を女王にするから宜しく頼むぞ」


「帝国が……滅んだ、抹殺……」


 あまりの事に理解が追いつかんか。


「そうだ。こちらとしても話し合いで解決出来るならそれに越した事はなかった。奴隷の為に金がいるというならこちらとしても用意はするのだが私利私欲に走られてはどうにもならん。それに帝国の女王は王族でもなかったしな。国を正す意味でもちょうど良かっただろ」


「ほ、本当に帝国を滅ぼされたのですか?」


「まぁ、城にいた奴等がいなくなっただけだ。国民にはなんの影響も出ていないはずだ。今は俺の配下が城へと入り国を動かしている。後日正式に俺の娘を女王にする為の戴冠式を行い、その時に奴隷制度の撤廃も発表するつもりだ」


「この国も滅ぼされるのでしょうか?」


 ガクブル震えながらもしっかり質問してくる所は流石は王様ってところか。


「一応言っておくが俺も意味もなく無差別に人を殺めたりはしない。奴隷制度の撤廃に反対する者が話しを聞かないのであれば一つの方法としてはあるだけだ。犠牲は少ないほうが良いのだが、それはお前達次第だ。俺は意見を変える気はない。弱者である奴隷達を救う為なら俺は容赦なく力を奮うぞ」


「わ、わかりました。なんとしてもこちらで反対派を食い止めてみせましょう」


 簡単にやれるとは思えんがな。


「ちなみに、俺に反対をしているのは首謀者は誰だ」


「……それは、申し上げられません」


 ふむ、俺には言えない人物ということか。

 というか、知り合いが少ない俺に心当たりなんてのは一人しかおらんのだがな。


「わかった。俺にも心当たりがあるからそいつに直接話してくる」


「そ、それは……」


「大丈夫だ。いきなり殺したりはせん。話しに行くだけだ。俺の勘違いかもしれんしな」


 俺は王を一瞥するとある屋敷へと転移した。



 来たのはクヴァリル侯爵邸、そうセレネの実家だ。

 俺が知ってる貴族なんてコイツぐらいしかいないからな。


 俺はクヴァリル家の敷地へと入っていった。


 慌てて屋敷を守る護衛の兵士や執事がやってきたが、話しがあるからと半ば無理やり屋敷へと入っていった。


「誰だ。勝手に屋敷へと入ってくる不届き者は」


 相変わらず偉そうなおっさんが二階からこちらを見下ろしていた。


「久しぶりだな、リチャード。少し話しがある」


「ふん、礼儀を知らん奴だ。話しなどない。早々に立ち去れ」


 本当に物分りが悪い家族だ。


「お前に話しがなくとも俺にはあるんだよ。それに俺は一国の王だぞ。侯爵如きが調子に乗るのも大概にしろよ!」


「そんなものは知らん!魔族如きが俺に語りかけるな!」


 しゃーない、強制執行するとしよう。

 俺は魔術でリチャードを縛ると、無理やり記憶を覗いた。


「あ、がっ……」


 こいつが所属している派閥は、前国王の弟が主体となって出来ている国内最大派閥のようだ。

 派閥の主な資金源が奴隷の取り引きであり、奴隷商の元締めになっているようだな。

 ウルティアの王族のみならず、ウルドの王族、ウルヘイドの女王とも繋がっている。

 そんだけデカい組織にもなりゃ調子にものるか。


 情報が引き出せただけ良かった。


「もうここに用はなくなった。騒がせて悪かったな」



 俺は一旦ウルヘイドへと転移した。

 捕らえていた女王を連れてウルティアの玉座の間へと戻った。


「悪いな、少し待たせたなシルヴァ王」


「ウ、ウルカ女王?どうして此処へ?」


 さすがに面識はあるか。


「奴隷制度を敷く首謀者を特定した。前王の弟とやらはどこにいる?連れて来い」


「叔父上でございますか?まさかそのようなことは」


「俺はどこだ、と聞いたのだが」


 薄く魔力を広げ城を探す。

 ……見つけた。

 俺は前王の弟の所まで転移して拘束すると、再び玉座の間へと戻った。


「貴様、何をする離さんかぁー!」


「この通り、首謀者を捕まえて来たから、もうよい。後はウルドにもいるがこいつ等が奴隷商の元締めだ」


「叔父上、何故そのような事を」


「貴様、儂に何をしているのかわかっているのかぁ!」


 こいつが一番わかってないな。


「バカなお前にもわかるように話してやろう。俺が魔王だ。そして奴隷開放を進めている。お前らが邪魔だから消す。以上だ」


「なっ、ま、魔王だと!シルヴァ!儂を売るというのかぁー」


「お前はアホか。売るも何もお前になんてなんの価値もないし、いらん。この女王も同様だ」


「ウルカ女王、何故ここに!」


「お前ら、魔王を舐めているのか!俺がやると言ったらどんな手段を使おうともやるんだよ!それに反対する意味を考えろ!」


「……」


 アホはこれだから困る。

 考えろとは言ったが黙れとは言ってない。


「でとうする。奴隷の開放、賛成か?反対か?」


「き、貴様ぁ……」


 アホでも答えやすいように二択にしたのにそれ以外の言葉を選ぶとはさすがアホだ。


「最後に、もう一度だけ聞くが、賛成か?反対か?」


「儂にこんな事をしてただで済むと思っておるの、ぐぁ……」


 面倒くさいから魔術で圧縮して消し去った。


「これでひとまずウルティアで起ころうとしたクーデターの目は消え去ったぞ」


「お、叔父上……」


「クーデターを起こそうとしていた奴等の後処理はやれるな?任せるぞ」


「は、はい」


「当然ウルドでもこれと同じ事をする。そして今まで奴隷商を束ねていた頭はいなくなる。以前言ったように魔物の素材を奴等に卸させる、というならしっかりとした組織を作り直せ」


「か、かしこまりました」


「手腕に期待しているぞ、シルヴァ王よ」



 俺はウルヘイドの女王を連れてウルドへと転移した。



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