討伐されたい転生魔王

〜弱すぎ勇者を強くする〜
ただのこびと
ただのこびと

黄金の国

公開日時: 2020年10月12日(月) 00:00
文字数:3,633


山のてっぺんでみんなで昼食をとった。


今は女性陣が食後のデザートを食べているのを横目に、コーヒーを嗜みながらこれから何をするか考えていた。


先程仕留めて来たドラゴンの焼き肉が今日の晩ごはんだ。

それまで何をするか。


再びボーリング……ディアブロがいるから嫌。

ビリヤード……ディアブロがいるから嫌だ。

ダーツ……ディアブロがいるから絶対に嫌だ。


あいつがいると間違いなくいきなりパーフェクトを出す。

そして俺のやる気がなくなる。

というかシラける。


霊獣とアスレチックコースでも走るか?

あっ、そういえばあそこってプールもあるじゃん。

女性陣の水着姿……どうでもいいな。

風呂にいけば毎回全裸だ。

水着が見たかったら風呂で着せればいいだけだ。


今日はせっかく外に来たんだから外で遊びたい。


川遊び、いっそのこと海行くか。

釣り……食べ物はもういらない。

ダイビング……結局魚取りたくなるよな。


スキーやスケートは道具から作らないといけないから面倒くさくし。

寒いところよりは暖かいところでのんびりしたいよなあー。


「ああ、コーヒーが美味い」


考えが纏まらない時は一度現実逃避するに限る。


「アルスー、この後はどうするのー」


「特に考えてない。セレネが行きたいところがあればそこでもいいぞ」


「私、一回行ってみたかった所があるんだよねー」


「どこだ?」


「海を越えた島国!なんか変な格好をした人ばかりいる黄金の国とかあるらしいよー」


それって日本じゃん。

この世界も広いし、似たような感じの国があるのかもしれないな。


「面白そうだな。よし、休憩が終わったらそこに行ってみるとしようか」


「やったあー!」


こういうときは人と話したほうがいろいろと面白そうな意見が出るもんだな。


「ディアブロ、場所はわかるか?」


「はい、存じあげております」



女性陣の食事が終わったところで片付けをして黄金の国があるという島国へと転移した。



いきなり上陸するのもどうかと思ったので今は島の上空で島の様子を確認している。


「なんだか全然黄金って感じじゃありませんねー」


「当たり前だ。それは例えの話しで全てが黄金でできた国なんてあるわけがない」


木造の平屋が並んでおり所々に神社や寺なんかが建っている。

そして街を歩く人の姿は……着物だ。

和装である。

パッと見た感じ侍みたいなのはいそうになかった。

腰に剣を差している者もいない。


生えている木は松や竹。

海岸沿いには木製の船。


ちょんまげ頭がいないだけで完全に時代劇に出てくる昔の日本って感じだった。


しばらく空から探索をして発見したのは城だ。

完全に日本の城だ。

城を囲むように城下町が広がっている。

その中の商店街のような場所をみつけた。

ひとまず皆の服を和装に変え、街の中へと転移した。


「この格好、歩きにくくないですかあー」


「セレネ様、大股にならず歩幅を小さくするのがコツのようでございますわね」


さすがメティス。着物でも立ち振る舞いが様になっている。

それに比べセレネの不格好なことといったら。


「まあ、じきに慣れるだろ」


店が並んでいるほうへと進んでいく。

立ち込める料理の香り……。

ってこれは醤油の焦げる匂い。

どこだ?どこから匂いがしている。


「ちょっとアルスー、いきなりどこ行くんですかあー」


匂いにつられるように店の方へと向かうと、そこにはうなぎ屋があった。


「うわあーいい匂い。食べていきません?」


俺も食べたいが昼食を食べたばかりだ。

しかも夜はドラゴンの肉が待っている。

これは空間魔術に収納しとくべきか、と思ったが転移できるならいつでも来れる。

いや、転移して来たときに閉まっていたり売り切れていたらショックだ。

やはり買える時に買って収納しておく事にした。


「悪いがこれを売ってくれないか?」


「はいよ、うなぎだけでいいのかい?それとも重にするかい?」


なんだと!重がある……ということは米があるってことかあ!!!


「重で十、うなぎだけをタレと白焼きを十ずつくれ」


「はいよ、銀貨五枚だね」


俺は空間魔術で銀貨を取り出すと支払いに六枚置いた。


「出来ればでいいのだがそのタレを少し分けて貰えないだろうか」


「いやぁー兄ちゃん、そんなこと言われてもタレは店の命だからなあ」


俺はもう二枚銀貨を置いた。


「内緒にしろよ。少しだけだからなー」


ちょろい。

購入した物は全て空間魔術に収納する。


別口でセレネがディアブロに買ってもらっていた。


となると米と醤油、味噌の店があるはずだ。

日本酒もあるかもしれん。


街をぶらつきながら見つけた店でかんざしを皆にプレゼントした。

女性陣はみんな髪を結い上げてかんざしを差している。

一気に雰囲気が変わるから女性は恐ろしい。


行く先々でお土産用の櫛や扇子、自分用の箸などをいろいろと買いまくったり、炭火で焼かれた焼き鳥や串団子などを大量に購入した。



そして店先に吊るしてある杉玉をみつけた。

やっとみつけた。

酒蔵だ。


「いらっしゃい。お酒かい?」


中に入ると気前のいい女将さんが対応してくれた。


「ああ、初めて来たから良くわからないのだがどれかお薦めはあるか?」


「だったら試飲させてあげるからちょっと待ってな」


そう言うと奥へからお猪口を持ってきてくれ、いろいろとお酒を試飲させてくれた。

どれもこれも同じ見た目の割には味わいがかなり違う。

一つ一つ感想を述べていると女将さんからえらく気に入られた。


「あんたちゃんとお酒の味の違いがちゃんとわかるんだね。かなり珍しいよ。大体の人は同じような味に感じるみたいだからね」


女将さんは俺好みの酒をあるだけ売ってくれた。

後は女性受けしそうな白ワインのような風味のする甘めな酒もいくつか売ってもらった。


「悪いんだがこの辺の地理を全然知らなくて困っていてな。店を探しているのだが、米と醤油、味噌とお酢を売ってくれる良い店を教えてくれないか」


女将さんがいろいろと教えてくれた。

道がわからないと言うと丁寧に地図まで書いてくれた。

俺は女将さんにお礼を言ってから少し多めに支払いを渡した。



次に向かったのは女将さんお薦めの米屋。


ついに俺は米をみつけた!


ぶっちゃげそこまで米を求めてはいなかったのだが米があると知ってしまったら求めずにはいられない。


「酒蔵の女将さんから紹介されたのだがここの米屋であっているか?」


「はっ?女将さんからの紹介?マジか!本当に紹介されたのか?」


「これがその時に書いてもらった地図だが」


「間違いなく女将さんの字だな。わかった何でも言ってくれ。何が欲しいんだ?」


米屋に来たんだから米だろが!

別の怪しい白い粉でも売っているのか?


女将さんからの紹介だからと言ったら十俵も売ってくれた。

凄まじい量だが、空間魔術で時は止まるから関係ない。

本当にありがたい。

多めにお金を渡して米が無くなったらまた来たときは宜しくと行って店を出た。


そして醤油蔵、ここでも女将さんからの紹介だと言うと非常に良くしてくれた。

いろいろと醤油を味見させてもらい、好みの醤油と刺身醤油を購入した。


なんだここは楽園か!

欲しいものがどんどん揃う。

もっとちゃんと調べてもっと早く来るべきだった。

いや、見つけられただけ良しとしよう。


「セレネ、本当にありがとう。セレネがこの島の事を話してくれなかったら俺はここを知らないまま死ぬところだった」


「アルス、今の顔鏡で見たほうがいいですよ。アホみたいに気持ち悪いんですけど」


こいつ本当にお仕置きしてやろうか!

素直に感謝したら凄い言われようだ。


でも、この島に来て満喫できているのはみんなのお陰だ。

感謝の気持ちは忘れずに持っておこう。


俺はこの後、他の店と同じように味噌とお酢を購入してから城へと帰った。


すぐさま料理長のニクロスの所へと向かい米や調味料などを渡した。その後、簡単に米の炊き方と調味料の使い方を教えてから風呂へと向かった。



相変わらず風呂のは凄い事になっていた。

全裸の女子ばかりである。


幼児顔なのにナイスバディなラミアを筆頭に、普段は服で包み隠して肌を一切見せていないメティス、相変わらずボーッとしているエイアに、ごくごく普通のセレネ。


いつからここの風呂はハーレムモードになっているのだろう?


得しているのは俺だけだから俺を喜ばせるためにわざとやってくれているのかもしれん。

俺だって普段見れないメティスの裸が側に来たときなんてヤバすぎる。鼻血ものだ。


珍しくいつも風呂場では騒がしいディアブロがいないと変にドキドキしてしまう。


俺以外の者が普通に入っているところを見ると俺がおかしいのかと錯覚してしまう程だ。


理性に負けて誰かの乳でも揉もうものなら一気に俺は狩られる立場に早変わりだ。


恐ろしい。


精神を鍛えるためにわざとやってくれているのだろうか?

絶対に違うがそう思おう。


ここは精神と時の風呂だ。


無心で戦う。


そして今日も勝った。

俺は暴走をしなかった。


女性陣からの舌打ちを聞きながら俺は風呂を出る。


さてといよいよ待ちに待った晩ごはんだ。


楽しみで仕方がない。

どんな晩ごはんが並ぶのだろうか。



おれの心は踊り続けるのであった。


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