投稿ミスりました。
1つ前をご覧ください。
奴隷の開放に向け大国の王へと挨拶を済ませた翌日早朝から俺はのんびりと湯船につかっていた。
珍しくエマと二人っきりである。
エマは相変わらず夜になると震えるのだが時々笑うようになった。
寝ているのに突然笑い出されるとかなりビビるのだが、少しは心の傷も癒やされているのかもしれないと俺は勝手に安堵している。
エマさんは絶賛クロールの練習中だ。
誰だよ、エマに風呂で泳ぐ事を教えたヤツは。
風呂は静かに入るもんだ。
一応言っておくが風呂で泳ぐのはマナー違反だからな。
「パパー、エマは王様になって何をすればいいの?」
「エマはどんな国にしたい?」
「楽しい国が良い。よくわかんないけど皆が幸せで楽しい国が良い」
「だったらそうすれば良い。わからないことは周りの皆が教えてくれる。エマはエマなりに物事の判断をしっかりするんだ。みんなが楽しい事なのか、誰かが悲しむ事なのか。エマなら出来る」
「エマ、やっぱわかんなーい」
エマは賢い娘だ、こんな理想論なんて既に理解してるのだろうな。
「失敗しても良い。やるだけやればいいさ」
さてと、俺も娘に負けてられんな。
もう一踏ん張りしなくては。
風呂を出ると早めの食事をのんびりと楽しんだ。
焼き立てのパンにバターをたっぷりつけてみたり、ベーコンエッグをパンに挟んでみたり。
お、エマはスープにパンをベタ漬けか。
エマが来てから一気に食堂が賑やかになった。
これもこの娘が持つ力なんだろう。
周囲の人を幸せにする力がある。
食事が終わってひと休憩したら、各国に報告を含めて話しに行かないとなぁー。
エマは慣れさせる為にも帝国へと置いておくか。
セレネはまだ起きて来ないが朝食を済ませたら残ったドラゴンを倒しに行かせよう。
何気にやる事あるなぁー。
面倒くせぇー。
俺って何しにこの世界に来たのだろう。
とっとと殺されて元の世界に帰る。
これは変わらない。
なのになんで俺はこの世界の奴隷を開放しているのだろう。
エマのため。
それはそうだ。
子供が虐げられているのを見ていられる程俺は心が強くはないのだ。
俺が弱いからいけないのだろうか。
もっと強く他に目を向けず自分の信念だけを貫ければ良いのだろうがそんなことは出来ない。
強くなければいけないと思いながら出来ない弱い自分が憎らしくも嫌いでない気がする。
所詮俺は俺なんだな。
アホ臭くなって俺は考えるのをやめた。
食事を終えた俺とエマはセレネと入れ替わりで食堂を出た。
そして訪れたのはエマの意見を尊重してレジャー施設だ。
霊獣達やドラゴンが駆け回っている。
城で一番賑やかな場所だ。
白虎と麒麟がアスレチックで追いかけっこ、朱雀と鳳凰が空でランデブー、青龍と応龍がプールで競泳大会を、陸ではのほほんと霊亀の上に玄武。ドラゴン達は空いたスペースでわちゃわちゃしていた。
そこへと飛び込んでいくエマ。
可愛らしいのだがコケて怪我はすんなよー。
ドラゴン達も、ちょっと大きくなったか。
もう少ししたら食べごろだな!
って、嘘だ嘘!ドラゴンの肉は好きだけどお前らを食べたりはせん。
そんなにガクブルせんでいいからな。
何、俺がドラゴンスレイヤーだから怖い?
ははは、そんなもんなくともお前ら如き瞬殺出来るからな。
って、嘘だ嘘!出来るのは本当だが別に殺したりはしないからな。
そんなにガクブルせんでいいからな。
ここで自由に元気に過ごせ。
だからといって他の奴らに迷惑はかけるんじゃないぞ。きをつけろよー。
「パパって霊獣さんやドラゴンさんとお話し出来るの?」
「いやいやさすがにこいつらとは喋れんよ」
「でもパパいつもお話ししてるよね?」
「ははは、さすがにそれは無理だぞ」
なぁ、さすがの俺でもお前達と話しなんか出来てないよなぁ?
えっ、なに、さっきから普通に話してるじゃないかって?
……うわっ!
俺は知らない間に普通にこいつ等と喋っていたのか!
いつの間に俺は動物王国の厶○ゴロウさんになっていたのだろうか。
自分でも気づかなかった。
まさか普通に喋っていたとは……。
「やっぱりパパ、お話ししてるよね?」
「ああ、自分でも気づかなかったが、喋れているみたいだな」
「凄ーい!パパ凄ーい!エマもお話ししたい!教えてー」
俺は何故こいつらと喋れるのだろう……謎だ。
あれか?魔力で思念を送ったりしている、あれの応用か?
「その通りでございます」
やはりそうだったのか。
知らない間に考えがだだ漏れだったとは、なんとも恥ずかしい。
「いえいえ、そんな事はございません」
そりゃー、いろんなヤツに考えも読まれるよなぁー。
「私としては有難い限りでございます」
「って、お前は普通に俺の心の声と会話するのやめろ。怖いわ!」
「ははは、それが私の仕事にございますから」
いつでもどこでも現れるウザさがピカイチのイケメン執事、ディアブロだ。
こいつ普通に俺の心の声と対話しやがるから恐ろしい。
「そこまでお誉めになられましても、光栄にございます」
褒めてねー。まじウゼー。
「で、どうした?」
「ウルティア王国、ウルド王国共に動きがあったようです」
「そうか。わかった」
動きがあるには早すぎるがどちらに転んでいるか、だな。
「この後、アルフヘイム、秋津島へと今回の事、まぁ主に帝国の事を報告に行くから昼前には行けると思う」
「かしこまりました。そのように伝えておきます」
少し早いが動くとしようか。
「エマ、悪いが今日は帝国で留守番をしていてくれ。俺は一人で各国の王と話しをしてくる」
「帝国でお留守番ですか……」
「不安なのはわかるが周りに配下達をつける。昼過ぎには迎えに行くからそれまで帝国の城の中でも案内してもらったら良い」
「……うん」
そんな顔されたら置いて行きづらくなるだろ。
まぁ、あの国にいるって事がストレスになるのは間違いないだろうからな。
これは少しずつでも慣れてもらうしかない。
「パパと入れないのは寂しいけどエマ頑張る」
流石だ、言う事がいちいち可愛い。
「では行くぞ」
「はーい」
俺はエマを帝国の城に待機していた配下達に預けると精霊大陸へと転移した。
「悪いが少し邪魔するぞ」
「これはアルス様、いかがなさいました」
「いや、いくつか報告に来ただけだ」
本当は朝からイケメンの王になんか会いに来たくはないんだがな。
「報告、と申しますと?」
「先日、ウルドの王を連れて来たから少しは知っているだろうが、秋津島の奴隷開放は成った。現在ウルティア、ウルドの両王国とは協議中だ。そして、ウルヘイド帝国に関しては女王を捕らえ、城にいた上層部は根こそぎ抹殺した。今後ウルヘイドは俺の娘を王とする事にした」
「こ、この一日でですか?」
「悪いな。本当なら全て終わらせたかったのだが人族大陸は何かと面倒でな。話し合いをしてからという対応になってしまった」
「いえ、滅相もございません。まさかこんなに早く結果を出されるとは……」
「交流も少なく精霊大陸に迷惑をかける事はないとは思うが、帝国の女王に娘がなるがその時は宜しく頼む」
「いえ、こちらこそ宜しくお願い致します」
何故に泣き出した。
つーか、何故に毎回泣く。
「報告はそれだけだ。また状況が変わったら報告に来る、じゃーな」
「アルス様、本当に、本当にありがとうございます」
「ああ、奴隷になっていた獣人で、こちらへ移住したいと言うヤツがいたら全員連れて来るからその時は受け入れを頼む」
「勿論でございます。何から何まで……流石は我らが神、本当にありがとうございます」
ヤヴァイぐらい号泣しだした。
俺は余りの恐怖から秋津島へ逃げた。
秋津島では同じように報告をして終了だ。
最後に娘を押し付けられそうになったからここも直ぐに逃げだした。
……何故に俺が逃げまわらんといかんのだろう。
俺はウルティア王国へと向かった。
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