「この世界のことを教えてくれ」
俺の問いに人型になった超絶イケメン悪魔リーダーが爽やか笑顔になる。
普通にイラっとしたが俺はスルーする。
スルーしようとはしたんだが悪魔リーダーは無駄な、ほんとぉーに無駄な爽やかさを醸し出しながらのイケメン全開のキラキラスマイルだ。
本当にイライラする。
「私が知っている全てをお教えしましょう」
ラスボス前に人里離れたどこぞやの小屋に引き篭もっている賢者みたいなセリフを吐いるぞ。
何故かやる気に満ち溢れている爽やかイケメン悪魔リーダー。
周囲にキラキラエフェクトが追加されている。
「興味ないから大雑把でいいぞ」
こんなヤツの話を長々聞きたくないのでぶった切る。
「私が知っている全てをお教えしましょう」
何があっても話しますよ、とヤル気満々の爽やかイケメン。
同じことを繰り返し言ってきやがった。
キラキラエフェクトはどんどん増してるが半分ぐらいが黒い輝きに変わっている。
そして心なしか見えない圧を感じる。
「簡単にでいい。手短に頼む」
だが長話には付き合いたくないので再度ぶった切る。
「私が知っている全てをお教えしましょう」
これは、あれだ、ゲームなどでよくある『はい』と言わないと話が進まない、例のあれだ。
悪魔リーダーのキラキラエフェクトが更に増え、その殆どが黒い輝きに変わり、笑顔も圧もどんどんパワーアップしていく。
心なしか爽やかな笑顔に青筋が浮かんでいる。
はぁ、これは最初に教えてくれと言った俺の責任なのだろう。もう諦めるしかないのだろうな。いやだぁー。
全校集会の時の校長のような長い話なんて聞きたくない。
「全て教えてくれ。」
この件にかんして俺は諦めた。負けを認めよう。全面降伏だ。
こいつの好きにさせよう。
「では、私が知っている全てをお話いたしましょう」
キラキラの大半を締めていた謎の黒い輝きは元に戻り、見えない圧もなくなった。
悪魔リーダーのキラキラエフェクトだけは絶賛増量中でどんどん増している。
話を聞く前からどっと疲れた気がする。
もう帰りたい。
俺は覚悟を決めて活き活きしている悪魔リーダーに向き合った。
そして長い長いお話がはじまった。
この世界の種族について。
人族(人間)、亜人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、魚人族、龍人族、精霊族、妖精族、そして悪魔族などの多種多様な種族がいる。
各種族によって身体的な特徴や能力が大きく異なる。
人族、非力だが統率力や戦術に優れている。ずる賢く短命。
亜人族、見た目は人族だが個人の能力が高い。特殊な能力を待っている者が多い。
エルフ族、気配を消すのが上手く弓が上手い。耳が尖っている。美形。長寿。
ドワーフ族、タフで力が強い。鍛冶が得意。酒が好き。背が低い。大体デブ。
獣人族、各動物の力を宿している。知能は低い。獰猛。狡猾。喧嘩っ早い。
とか、なんかそんな感じだ。
各種族が交わって産まれたハーフやその子供など純血ではない者も存在する。純血ではないものは差別や迫害の対象になるらしい。だが特殊な力などを宿すこともあるらしい。
野生にいる動物や魔物。
普通に野生に生息しているのが動物。
その動物など比較的知能や精神力が弱い生物が強い魔力を浴び続けると突然変異を起こして魔物になり強くなるそうだ。
ファンタジーになれ浸しんだ日本人なら普通に聞いた事があるような話だ。
その他、エルフ族とドワーフ族は仲が悪いなど、細々したこともあったが残りは割愛。
この世界の地理について。
三つの大陸と数多くの小さな島で構成されている。
人族が数多く住む東西に長く伸びた地図中央にドカンと佇む最も広大な大陸、ウルカラン大陸。
ウルカラン大陸より北西側。エルフ族やドワーフ族、獣人族や亜人族が多く住む、精霊に守護せれている氷に閉ざされた小さな大陸、ヨルムルム大陸。
ウルカラン大陸の南にポツンと位置するのが、我が魔王の国、魔族以外は住めないとされる、大陸と呼ぶのはどうかというサイズの小さなディルナル大陸。
各大陸や各島との交流はほぼないらしい。海の魔物が強すぎ、船を使っての遠距離の航海は不可能だからだそうだ。
ちなみに確認してみたところ飛行船はないらしい。
交流がないために各大陸、特に小さな島々は独自の文化、発展を遂げている所が多くあるそうだ。
その他、各大陸の主要都市や観光名称、歴史や文明的な話も聞いたが割愛。この話が一番長かったとだけ伝えておこう。
この世界の魔法について。
嬉しいことに、この世界にはちゃんと魔法が存在する。
呼び名は魔法ではなく『魔術』。
基本の四属性、火、水、土、風。
属性のない無属性。
特殊属性、光、闇。
それ以外にも氷、雷、空間、音、毒などの応用属性や特殊属性がある。
特殊なのが精霊魔法。
使える属性は魔術と変わらないが、魔術は己の中の魔力を使うのに対し、精霊魔法は周囲にある自然界から魔力を借りて発動することが出来る。エコで便利そうである。
魔法陣。
術者以外でも魔術を発動出来るようにしておく補助みたいなもの。
これは魔術陣ではなく魔法陣だそうだ。
この後、魔法陣のことを訪ねたら、よくわからない魔術理論的な話になってドツボにハマったので割愛。
この世界の武器について。
剣、槍、斧、弓、体術の五つの系統があり、それぞれに派生した武器や流派なんてものもある。
剣なら、両手剣、片手剣、短剣、短刀なんて感じ。
まぁ聞いたことあるような物ばかりだ。
直接的な攻撃以外は魔術の発達があるので火薬を用いた兵器のような物は殆ど発達していないらしい。
大砲どころか銃もないらしい。
残念だ。
そして俺は、ぶっちゃげ話が長すぎて飽きている。
武器、と聞いて一瞬テンションは上がったのだが兵器が無いことから一気にテンションは落ちた。
そして銃火器以外の武器に興味はないので割愛。
この世界の道具について。
お約束のファンタジー使用。なので電気やガスといったエネルギーは使っておらず、基本的に魔術頼みの生活だそうだ。
実際の生活様式は少し古い西洋の文化ぐらいの感じがする。
そんな生活に欠かせないのが魔道具と呼ばれる道具。
魔術が使えない者にでも火が使えるようになる魔道具や、物を冷やしておける冷蔵庫代わりになる魔道具などもあるそうだ。
そんな便利な魔道具を作るのに欠かせないのが魔石である。
一つの属性を含んだ特殊な石らしく、使用者の魔力が少なくても属性の力が発動するそうだ。
簡単にいえば属性が固定されてる電池って感じか?
そのせいで結構貴重な物らしい。
魔石の大きさや純度によっても価格が異なる。そりゃそーだろ。
飽きた。もう無理だ。
全校集会の時に貧血で倒れる人みたいに倒れてバックレてやろうかと何度頭を過ぎったかわからない。
何度、もういいやって言おうとしたことか。
「最後に、この世界の種族の『強さ』についてお話させていただきます」
最後に少し興味の惹かれるワードが出てきた。
目の前にいるのは、ここまでの阿呆みたいに長い説明を、一言足りとも噛むことなく、細かな補足も入れながら話を続ける爽やかイケメンこと悪魔リーダー。
いまだ爽やか笑顔とキラキラエフェクトは顕在だ。
女性ならともかく、男の、しかも美形からの話の押し売りなどまったくいらないのだ。
話が長すぎてすでに飽き出るしやる気も聞く気ももはやないのだが、最後という言葉と『強さ』というワードを信じて最後まで話に付き合う。
俺は忍耐の国、日本から来たのだ。
「では聞いてください」
俺の気持ちとは裏腹にキラキラエフェクト三倍増しで語りはじめる悪魔リーダーがいた。
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