霊獣の試練。
最後の一体である玄武と戦っているセレネ。
攻撃力の低いセレネと、高い耐久性を持ちつつ、ダメージが回復する玄武の壮絶?な戦いが繰り広げられていた。
襲い来る尻尾の蛇を躱しながら玄武の手足を斬りつけダメージを与えるセレネ。
時間が経つにつれ回復する玄武。
ちまちま攻撃を繰り返すセレネ。
これは、終わらない。終わらないやつだ。
ジリ貧尽きてヤラれるパターンだろう。
うーん。
俺なら炎の魔術を亀の口の中にでも打ち込めば一撃で倒せそうなんだけどなぁー。
普通に甲羅の外から炙っても殺れそうだし。
風の魔術で頭切断するだけでもいけそうかな。
たぶん、たぶんだがあの甲羅も素手で叩き割れそうな気がする。
なにをあんなに苦戦しているのかがわからない。
うーん、非力なのも大変なんだなあ。
ちまちま攻撃を繰り返すセレネ。
ちまちま回復する玄武。
この泥試合の見処は、どこにもない。
おお、尻尾の蛇を両断したぞ。
これはチャンスだ。いまのうちに攻撃をしろ。
ちまちま、ちまちま攻撃を繰り返すセレネ。
尻尾は再び再生した。
以下繰り返し。
なんもおもろない。
これ程おもろない戦いもなかなかない。
そういう意味ではなかなかレアな戦いだ。
おお、ついに片足が切断された。
これを残り三本繰り返すのか。
どうせ途中で足が元に戻るのだろうな。
それを繰り返すのか?
面倒くさいから足は無視して頭落とそうよ。
はぁーー。
でも待つと決めたのだから待つのですよ。
こう見えても我慢強いと有名な日本人ですよ。僕は。
でもこれ永遠に見せられるの?
さすがに我慢にも限界はあるよ。
はぁーーー。
膠着した戦いにしびれを切らしたのは玄武。
ちまちま攻撃をしていたセレネの足元から突然、尖った土の塊が隆起した。
玄武の放った土の魔術だ。
当たり前に避けるセレネ。
避けた先の地面からも尖った土の塊。
これも避けるセレネ。
そこを蛇の尻尾が追撃。
避けるセレネ。
セレネに攻撃は当たらないがセレネも回避行動が多くなり攻撃の回数が減る。
更にジリ貧モードへ移行する。
あれからどれくらいの時間が経っただろう。
永遠と続いていた戦いに変化が起こった。
玄武の傷が治っていない。
尻尾の蛇も再生されてない。
地面から尖った土も出てこない。
恐らく玄武の魔力切れ。
呆気ない。
実に呆気ない幕切れだ。
魔力が切れ、なんの抵抗も出来ず、ただひたすら捌かれていく玄武。
黙々と解体作業をこなすセレネ。
これ程どうでもいい戦いはないな。
更に数時間が経過して、ようやく玄武は光になって消えた。
「よっしゃーー!」
よっしゃ、じゃない。
動けなくなった玄武にどれだけ時間をかけてんだ。
見ている方のことも考えて頂きたい。
マグロの解体ショーみたいにちゃきちゃきやってもらいたかった。
いつものように奥の扉が光っている。
「ようやく、ようやくここから出られるな。行くぞ」
「そんな言い方しなくてもいーじゃないですかぁー」
いつものように魔法陣にのって転移する。
「ほら、行ってこい」
「はーい」
本当に同じ作りだな。今度は茶色の寺院。
いつものように建物の中に入っていくセレネ。
少しすると寺院から光が溢れた。
が、いつもならすぐに建物から出てくるセレネが出てこない。
様子がおかしい?
慌てて寺院へと入るとセレネがボーッと立っていた。
「おいセレネ、大丈夫か?」
「ちょっとびっくりしちゃって」
「出てこないから何事かと思ったぞ」
「アルスってば優しいー、心配してくれたんだあー」
「やかましい、帰るぞ」
「はーい」
俺とセレネは玉座の間へと転移した。
「たっだいまぁー」
「おかえりなさいませ」
「今の時間は?」
「出発されてから二日と少し、もうすぐ昼食の時間となります」
まじか、ボスの所に辿り着くまで一日もかかっていないはずだ。
ということは、丸一日以上は玄武と戦っていたのか。
そりゃいくら霊獣でも丸一日も魔術連発してたら魔力も切れるか。
「んじゃ、ひとまず、のんびりと風呂に入ってから昼飯にでもしようか」
「かしこまりました。皆のもの準備を」
「「「はっ!」」」
「ちょいまてーっ!はっ、じゃねーよ。何故にお前らが一斉に動き出す?」
「お風呂とお食事の準備ですが?」
「別にお前達はここにいていいのだぞ」
「アルス様と共にいるのが我が使命でございますので」
「結局ディアブロ、お前も風呂についてくるつもりなんだろ?って、ラミアさんラミアさん!?何故に全裸!?服は?少しは隠しなさい!」
「お待たせしては申し訳ない。決断と行動は迅速」
「今度からはちゃんと脱衣所で服を脱ぐように!」
「アルス様。照れてる。かわいい。初」
はぁー、またいつものダメなスイッチが入っとる。
「もう、好きにしろ。行くぞセレネ」
「はーい」
結局こうなるのか。
みんなでわちゃわちゃと風呂に入ることになった。
その後はいつものように食堂へと移動。
扉を開けて驚いた。
「な、なんだとぉーー!」
舟盛りがあった。
テーブルの上には新鮮な魚介類の数々。
刺し身につぼ焼き、魚の串焼き、魚のソテー、煮付け、あら汁、鍋、フライ……
猛烈に感動した。
「本日はディアブロ様に仰せつかって海の幸をふんだんに使わせて頂きました」
そう言って現れたのは料理長のニクロスだ。
「良い仕事だ。ニクロス。素晴らしいぞ」
「勿体なきお言葉」
「ディアブロ、流石だ」
「アルス様のことを思えばこそ」
こういった気配りが出来るのはポイントが高い。
伊達にイケメンではない。
俺は新鮮な魚介類を堪能した。
米がなかったので寿司や海鮮丼がなかったのは残念ではあった。
醤油がちょっと違ったな。
醤油に近い感じではあるけど醤油っぽいんだけどソースよりな感じ?の物だった。
ワサビが本ワサビではなくホースラディッシュ的な西洋ワサビだったのも残念だった。
日本酒がなかったのがもっとも残念だったのだが、キリッと辛口の白ワインは絶品だった。
ワインが凄い美味しかった。
「私は生の魚や貝は苦手です」
あれだけ食べておいて何を言っているセレネ。
舟盛りの大半と、生牡蠣もどき?の殆どはお前の胃の中に消えたのだぞ。
生牡蠣もどきの貝殻なんて貝塚みたいになってたからな。
美味いものを食べたら、後はやることは一つ。
昼寝だ!
「食べたし昼寝をするぞ」
「はーい、アルス。」
ピタッ。
食堂から歩いて部屋に戻ろうと思ったのだがセレネがベッタリ引っ付いてきて歩き辛い。ので転移した。
「あー、もー、一緒に歩きたかったのにー」
「セレネが邪魔で歩きにくい」
「アルスの意地悪、ベェーーだ」
本当に可愛くない。
可愛くなかったので出ていた舌を指で摘んでやった。
「いひゃい、いひゃいえう」
「ははは、可愛くなったじゃないか」
舌を摘んでいた指を離してやる。
「ッ!」
いきなりキスされた。
「仕返しです」
「今のは可愛かったぞ」
キスを仕返す。
「ズルいです」
ちょっとだけイチャイチャしながら昼寝をした。
「アルス起きてください」
「ん?」
思ったよりしっかり寝てしまったようだ。
「見て見て」
「ん?」
「ほら、私達の子供です」
そこには微動だにしない亀がいた。
ピクリともしない。
セレネの発言にはあえてツッコまない。
亀を摘み上げてみた。
ツルンとしためちゃめちゃキャラクターっぽい亀だった。
ぬいぐるみとかそっち系の見た目だ。
デカイときのガチなイカツさは何処へ消えたのだ。
キュー、キュー。
鳴き声までキャラクターっぽい。
白虎も朱雀も青龍も小さくはなったとはいえガチリアル系な感じの見た目だったのにお前だけどうした。
あざといとしか思えんぞ。
「かわいーぃ!」
亀を奪い取られた。
セレネに抱かれてキューとか言ってやがる。
「まぁー、とりあえず仲間のところにでも連れて行ってやるか?」
「私も行きたーい」
「んじゃ一緒に行くか」
セレネと亀を連れてレジャー施設へと転移する。
「凄ーい、こんなところがあったんだぁー」
そうかセレネはここへははじめて来たんだったな。
「おまえら、しゅーごーっっ!!」
俺が号令を出すと白虎、朱雀、青龍が集まってきた。
白虎は虎すら越えて小さめの像ぐらいになっている。
朱雀も三メートルぐらいのサイズだ。
青龍もニメートル弱の立派な龍の姿になっている。
「お前らでかくなったなぁー」
「えっーこれってみんな霊獣さんですかぁー?」
嬉しそうにセレネにまとわりつく霊獣ども。
ガウガウ、ピーピー、シャーシャー、言ってる。
これに亀が加わり霊獣の四体が揃った。
「お前らの使命はセレネに力を与える事だ。決して忘れるな。いいな!」
ガウ!ピー!シャー!キュー!
良し!
それが理解出来ていれば良いのだ。
こうして俺とセレネは、しばらく霊獣達と遊んだのであった。
よろしければ↓の☆を付けて評価して頂けると嬉しいです。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!