でかい門をくぐり城の中へと入った。
入ってすぐ、かなり広いエントランスホール。
入口の扉の左右両隣には全長五メートルはある巨大な鎧があった。手にはでかい剣。大きな盾を持っている。
「万が一に備え侵入者対策の守護者にございます」
番犬ならぬ、番鎧。
絶対に侵入者が来ることは無いだろうけどご苦労さま。
引き続き頑張ってくれ。鎧くん。
エントランスホールの正面には大きな扉、そのすぐ両側の左右には二階へ登る階段、階段を登った先の二階にも大きな扉からある。
エントランスホールからは左右に通路が伸びている。
「目の前の扉の先は中ホール、二階の扉の先は大ホールになっております。入り口の広間から左側へ伸びる通路沿いは女性のお客様用の客室、更に奥は調理場となっております。右側へ伸びる通路沿いは男性のお客様用の客室となっております。更に奥は浴室となっております」
外から見た感じででかい城だとは思ったがかなりの大きさだ。
まずは一階からひとつずつ確認しながら見て回った。
中ホール、中ってなによってぐらいでかかった。
俺の認識だとサッカーコートより大きい広さ。中央には豪華なシャンデリア、赤い絨毯が敷き詰められパーティールーム的な感じの作り。
客室もでかい。どこのスイートルームだよ。もはや客室ではない家だ。ざっと6LDKぐらいか。と言っても一部屋のデカさがエゲツない。家族どころか二世帯以上も余裕で過ごせそうな広さ。風呂は三箇所、トイレは四箇所ある。王族や貴族対応の部屋だそうだ。護衛や使用人も生活できるようになっているらしい。通路を挟んで左右に十つずつ。男部屋二十、女部屋二十、男女合わせて四十部屋。
キッチンはどこの工場だってぐらいのサイズがあった。よくわからん設備がいたるところに配置されているが使用感はゼロ、ピカピカだ。
そして風呂がでかい。純和風のでかい露天風呂だった。城の作りは洋風ホテルのような作りなのになぜ風呂だけ純和風。前世が日本人の俺は大好きな作りだけど。脱衣場は大衆浴場のそれというよりどこかの高級エステサロンみたいな作りで整っていた。
「なんだこれ」
正直な感想だ。豪華過ぎる。
「二階も同じような作りになっております」
「そ、そうなんだ」
前世で本物の城なんて見たことない。写真やテレビぐらいの知識しかないけど、ここまでの広さはないのではないだろうか。
二階の大ホール、先程の中ホールの約二倍のサイズ。野球だって余裕で出来そうな広さ。天井も高い。真っ先に浮かんだのはドーム球場。
二階の客室は個人向けらしく大きめの1LDKタイプ。男女合わせて全八十部屋。
左側通路の奥には一階の半分サイズのキッチン。
右側通路の奥には室内タイプのスーパー銭湯があった。
「なんじゃこれ」
「気に入って頂けませんでしたか?」
「そーゆーのじゃなくて広過ぎない?」
「アルス様の城と考えれば狭いぐらいかと」
「見て回るだけで疲れるじゃん」
「皆、転移の魔術が使えますので」
本当なんでも設定だなぁー。
「玉座の間が見当たらなかったんだけど」
「一階と二階はお客様用のスペースになります。玉座の間を含めたアルス様の空間は三階より上になります」
「ってこの城は何階まであるの?」
「地上七階、地下六階ございます」
「デカすぎるよ!誰だよこれ作ったのは」
「私でごさいます、アルス様のお目覚めに合わせて三倍ほどに拡張いたしました」
おまえかぁー!
犯人は爽やかイケメンのイケメンスマイルで自供した。
「わざわざ拡張してくれたのね」
「以前は地上四階、地下一階の素朴な作りでございましたので」
「充分だよ、そのままでよかったよ」
「拡張の折り、見た目や使い心地をアルス様の好みに合わせさせていただきました。」
「あ、ありがとう」
「お気に召していただけたなら光栄でございます」
「あ、ありがとう」
ってゆーか来客って絶対来ないだろ。
この一階と二階は、要らん。
そもそも一度も使ってないだろ。
今後も使うことはない気がする。
通路の至る所、部屋の至る所に配置されている鎧くん以外の使用人の姿がまったくない。当たり前だが使用感もゼロ。
「で、三階へ上がる階段と地下へ降りる階段が見当たらなかったんだが?」
「防犯性を考えて階段は作っておりません」
「どうやって行くの?」
「転移の魔術を使います」
それ言ったら入り口も他の階の階段もいらなくなる。
「他の階の案内も頼む」
(以下、要点をダイジェストでお届け致します)
三階、美術館。壁には大小数々な絵。魔物の剥製多数、バカでかいドラゴンの骨格標本みたいなのもあった。パッと見た感じはもはや動物園。侵入者が入ると魔物の剥製やドラゴンの骨格標本が動き出し侵入者を撃退する機能搭載。
四階、図書館。まんま完全に大型の図書館。ある意味一番安心した場所。大きな音をたてると強制的に外に追い出される仕組みがあるらしい。当然、飲食物、戦闘から痴話喧嘩に至るまで一切持ち込み禁止。
五階、レジャーランド。遊戯施設(カラオケ、ボーリング、ビリヤード、ダーツなど完備)、大型アスレチックコース、大型プール、ウォータースライダー、流れるプールあり。侵入者がアスレチックコースの攻略に失敗すると強制的に城から追い出される防衛システムがあるらしい。風雲な城のあれである。
六階、食堂。大露天風呂。俺の居住区。俺の居住区の空き部屋の一つに勇者の寝室あり。あいつは俺の居住区に泊まっていたらしい。俺の生活空間。
七階、玉座の間。玉座の間の扉を出ると左右行き止まりの通路。通路を挟んだ奥にはかなり広めのバルコニー。
(ここからは地下。)
地下一階、執事含む使用人の男性居住区。単身用の部屋が多数。
地下二階、メイド含む使用人の女性居住区。同じく単身用の部屋が多数。
地下三階、キッチン。生活用品含む食料庫。使用人達専用の大浴場完備。
地下四階、闘技場。見たまんまコロシアム。
地下五階、宝物庫。入り口の広間だけ見て残りは後回し。
地下六階、最終決戦の広間。広いだけの謎の空間。
(以上、こだわりの全十三階)
疲れた。
隅々まで見てたら一日あっても終わらないだろ。
それよりも半分以上がいらない階がある。
流れるプールの必要性はどこにあるのだろう。
完全にふざけている。
無駄に外観をでかくし過ぎて適当に、無理やりにフロアを埋めて作られているような気すらしてきた。
俺の今までの行動範囲は七階と六階だけだ。
五階以下はいらんよ。
なんだよ地下七階の最終決戦の広間って。
コロシアムもいらん。
宝物庫は後でひとつずつゆっくりと見て回るために、今からもう一度見に行く予定だが。
まぁ図書館ぐらいはあってもいいか。
使用人達のフロアぐらいは必要なのか。
となるとキッチンもいるか。
ん?半分はいるかもしれない。
「にしても、こんなに階数いらないだろ。減らせないのか?」
「アルス様の城ですので最低でもこれぐらいは必要です」
「俺の行動範囲って上の二フロアだけだぞ」
「それでもです。全十三階。素晴らしい響きです」
「響きなだけかよ」
「左様でございすが」
そんな、何かご不満でも?みたいな顔をされても困る。響きだけで十三階にする意味がわからない。
「理由は全く理解出来ないが十三階の必要があるからこの作りってことな。管理は任せた」
「勿論でございます」
なんだその自信満々な態度は。
イラッとしたけど管理をしてくれるというのなら好きにさせよう。俺に被害がなければ良い。
「では宝物庫へ行く」
「はっ」
転移して宝物庫へとむかった。
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