訪れたドワーフの国で突然起こった爆発イベント。
その犯人であるドワーフの姫を捕らえて、ディアブロの案内の元、俺はドワーフの長の所へと向かった。
洞穴を利用しているというだけはあり、洞穴の中は天然の迷路のようになっていた。
「なんか洞穴の割に壁や天井に照明が付いていて多少は明るいしダンジョンっぽい雰囲気だな」
「さすがアルス様、ここは元々ダンジョンだったのでございます」
へぇー、それでか。なんか見覚えがある照明とかがあるなぁ、とは思ったんだ。
「遥か昔、このダンジョンを制した者がドワーフの為に住みやすく改装して譲り渡したそうです」
ふーん。そうなんだ。
だからといってそういう歴史にはまったく興味がない。
「貴様、何を言っている! 違うぞ! 迫害を受けていた我が先祖達が新たな住処を求めて、ここを開拓し、我々が住める環境にしたのだ」
「多少の語弊がございますね。迫害を受けていたのは事実にございますが、このダンジョンを制した者が、中にいた魔物を追い払い、住みやすい場所に変え、ドワーフに譲り渡したのです」
こいつマジでなんでも知ってるから嫌だ。
多分、正しい歴史を述べているのだろうが、イケメンに言われるとマジで嫌だ。
理屈ではない。俺はこいつ嫌いだ。
「こちらでございます」
どうやらいろいろと喋りなが歩いているうちにドワーフの長の部屋へと到着したようだ。
目の前には威圧感のある、それでいて装飾に凝った大きな扉がある。ダンジョンのボス部屋の扉って感じの作りをしている。
扉が勝手に開き、俺達は中へと入った。
「「「ようこそ起こしくださいました」」」
なんかちっさいオッサン達二十人ほどが揃いも揃って膝まづいていた。
「なんじゃこりゃ」
思わず心の声が漏れてしまったがそれ以外に表現のしようがない。
「ははは、アルス様がお起こしになられたのです。ドワーフの長としては当然の行動ではございませんか」
おい、まじでこいつ何を言ってるんだ?
「この度は我が娘が魔王様にご迷惑をお掛けしてしまい誠に申し訳ありません。それに伝承通り、神の奇跡までご使用していただき誠にありがとうございます」
全然会話の流れについていけない。
確かに、娘は迷惑過ぎるから動きを止めて張っ倒して拘束しているが何を言っているのだ?
これは俺がおかしいのか? いや、こいつ等が全員おかしいと思う。
「本当に何を言ってるか全くわからん。俺にもわかるように話せ」
「はい魔王様、この地には古くから伝わる話しがございます」
そう言うとドワーフの長は語り出した。
昔、ドワーフ達は小さな身長、異様に発達した筋肉、力が強いだけで鍛冶しか出来ない不器用さから他の種族、エルフや獣人達から酷い迫害を受けていた。
来る日も来る日もイビられ逃げ出すドワーフもいたし、死んでしまうドワーフもいた。
このままではドワーフ族の存続に関わる。
そう決意してドワーフ達は住んでいた土地を捨てて新たな土地を探しに旅にへと出た。
だがその旅は想像以上に過酷を極めた。
時に大陸特有の猛吹雪に襲われ、時に野に生息する魔物の群れに襲われ、みんな傷つき倒れ、どんどんとドワーフ達の数は減っていった。
もうダメだ。
そんな時に謎の青年が現れ一族を 助けてくれた。
彼は疲れ果てていたドワーフ達に、食料を与え、怪我を治療し、その後の旅でも魔物の群れからドワーフ達を守った。
最終的に謎の青年はドワーフ達に住む場所まで用意してくれたのだ。
それが現在のドワーフの国のある、この洞穴だった。
洞穴の中で少しずつ基盤を作り、ドワーフ達の生活が安定してくると、いつしか謎の青年の姿はなく、正体もわからないままとなってしまった。
そんな青年に対する感謝の気持ちを忘れない為に、ドワーフ国の神として位置づける事とし、国民の信仰の対象となったそうだ。
「はい、0点! 話しが長い! しかもオチがない!」
そんなありきたりな話しを長々話すな!
説明しろと言ったのは俺だが話しは短くていいのだ!
虐められた、旅に出た、思ったより大変だった、だから困った、そしたら助けてもらった、だから感謝している。それだけの話しだろ。しかも大昔の。アホか!
「魔王様、大変申し訳ございません」
「で、何故に俺に頭を下げている」
「改めて続きをご説明させていただきます」
そう言うとドワーフの長は語り出した。
ドワーフ達を救ってくれた謎の青年。
彼が魔術を使用すると体から不思議な光が溢れ出す。
他の者が使う魔術とは似て異なる魔術ある。
その魔術の効果は凄まじく余りにも絶大である。
そしてそんな魔術を使っても疲れ一つ見せず平然としている。
そして謎の青年は今後ドワーフの国に危機が訪れた時に再び現れる。
「はい、0点! 意味がわからん」
何を言っているのだろう。確かに精霊大陸の一件から魔術を使うとたまに俺の体も光る事があるが、俺はそんなもん知らん。
「で、さっきの俺の魔術を見て、俺がその神だと言いたいのか?」
「はい、我らの伝承通りであれば魔王様こそが我らが神にございます」
なんなんだ?
精霊大陸の奴等は何故にそこまでして俺を神にしたがる。
わかっているのか、俺は魔王だぞ?
なんで魔王が神にならんといかんのだ?
というより最大の問題は俺に全く見に覚えのない件で神にされそうな事だ。
心当たりがあれば多少は飲み込めるが、流石にこれでは受け入れられん。
そんなに俺の心は広くも余裕もない。
「まったく話しがわからんが、ひとまず報告をしておく。この精霊大陸で奴隷を扱う事は出来ないように既に俺の魔術で縛ってある。今後も含め、人を人として扱わないような事は俺が許さない。勿論種族を問わずだ。忘れずに守れ。俺からの報告は以上だ」
「……我らが悲願。叶えていただき、誠に感謝いたします」
だから何故にみんな泣く。
恐ろしいくらいに話しが噛み合わない奴らだ。
「それと別件だが、精霊の川とやらに行きたいのだが許可を貰えるか?」
「勿論でございます。我らが神、魔王様の自由にされていただいて結構でございます」
くそ、どう頑張っても会話のキャッチボールが出来ん。
よくもここまで会話が噛み合わないものだな。
でもまぁ、行っていいと言うなら行くことにしよう。
「もうここには用はない、行くぞディアブロ」
「待って!私も連れて行ってくだざッッ」
バチィーーン!
「なんで俺が、自分の国を破壊するようなヤツを連れていかんといけないのだ。ふざけるなよ」
特に理由はないが面倒くさいので一発叩いておいた。
こんなアホはいらん。
セレネで充分過ぎる。
俺はディアブロの案内の元、精霊の川へと転移した。
訪れたのは至って普通の川だ。
人の手が加わっていない自然の川。
水はキレイだし景色も良いのだが特別な何かは感じはない。
「ここが精霊の川なのか? 特に何も感じんのだが」
「普通の川にございます。名称が精霊の川という川でございます」
なんじゃそれ!
作業に必要な水がある所に精霊の川と名付けただけという事か?
んじゃただの川じゃん!
「ここでオリハルコンの精製をするのか?」
「左様でございます」
「特別な何かを含んでいる訳じゃないのか?」
「いえ、普通の川にございます」
うん。て事はどこでやっても一緒なんだね。
多分、中途半端な技術者かなんかがオリハルコンの精製方法や加工方法、そのノウハウを独占するためにそんな噂を流したのだろうな。
まさかここまで来てなんの収穫もないとはな。
完全な無駄足だ。
城で霊獣達と遊んでたほうがまだマシだった。
はぁー、俺は大きなため息をついて魔王城へと帰るのであった。
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