一日を遊び倒すと決めた俺は城のボーリング場へと来ている。
なんで城にボーリング場?
中世ヨーロッパなのにボーリング場?
そんな疑問や質問は受け付けない。
あるものはある。以上だ。
俺たちが使うのは第一レーンと第二レーンの二つだ。
みんなで靴を履き、さあ始めようか、と思ったら問題が起こった。
みんなルールを知らない。
そりゃそうだ。
知ってるやつなんているわけがない。
のでまずルールを教えた。
ボールの持ち方や、投げ方。
下から投げてピンを倒すこと。
ボールを浮かして床に落とすのはマナー違反だから注意すること。
一投でピンを全部倒したら終了。
ピンが残った場合はもう一投。
投げる順番、得点はモニターに出るからそれを確認すること。
人の玉を勝手に投げないこと。
前にある線を越えるとファール。
飲食物をボーリングエリアに持ち込まない、フードエリアで飲み食いすること。
簡単なピンの狙い方などを教えた。
その後は軽く練習投球。
そして本番開始だ。
おい、ディアブロいきなりストライクを連発するな。
俺のやる気が無くなる。
エイア、体がスライムだから手に力が入らないのかもしれないが、いきなりボールを後ろに飛ばさないように。
ちょっと怖かったぞ。
メティスはあざといぐらい女の子っぽい投げ方だな。
キリッとした綺麗なお姉さんのちょっと不格好なところは可愛くて良いな。
投げた後の恥ずかしがる姿もたまらん。
見る奴が見たら一撃で落ちるな。
癒やされる。
セレネは投げる度に叫ぶな!
煩い!
おい!ラミアさん!
ボールを持った腕を一周回すんじゃない。
ボーリングの玉でウィンドミル投法なんて始めて見た。
しかも投げた玉が途中でホップして浮いたぞ。
噂に聞くライジングボールじゃないか。
玉がぶつかった壁にはぽっかりと穴が空いたぞ。
空いた穴はすぐさま魔術で塞いでおこう。
結果的に、浮き上がった玉のせいでピンにはかすりもしなかったのは最早見事だ。
確かに俺は下から投げろ、途中で床に落とすなと言った。
まさかウィンドミル投法を編み出してピンをちょくで狙ってくるとは思わなかった。
考えや発想は素晴らしい。
実行出来る腕力や体感も素晴らしい。
だがラミア、残念ながら警告だ。
ニクロスや鎧くん、俺は至って普通。
ごくごく普通だ。
毎回ストライクのディアブロにはリアクションはないが、他のヤツがたまに出すストライクやスペアにみんなでハイタッチをする。
なんだろうなこの謎の一体感。
第一ゲームを終えてみんな揃って得点は百点前後だった。
いやぁ、楽しかった、あいつがいなければ。
誰がいきなりパーフェクト出しとるんだ。
やっぱあいつとは遊ばん!絶対負ける。
軽く休憩がてら、どんな店があるのか覗きに行った。
手に持って食べれる、フランクフルトや串焼きなどがメインだ。飲み物はソフトドリンクにアルコールもあるな。
そういえばパン屋はあるのにハンバーガーやホットドッグが無いな。
「ニクロス、ハンバーガーやホットドッグはないのか?」
「ハンバーガーにホットドッグでございますか?」
「丸いパンを半分にカットして野菜やトマト、ひき肉を固めて焼いたハンバーグや薄切りの肉なんかをソースで挟んで食べる物がハンバーガーで、長細いパンに長いウインナーを挟んで上からソースをかけた物がホットドッグだが、知らないか?」
「始めてお聞きしました。今すぐ試作を作らせていただきます」
「いや、今度でいい」
「申し訳ありません。新しい料理を作ることが私の生きがいでございます。本日はこれで戻らせていただきます」
「そ、そうか。楽しみにしているぞ」
「お任せください。では失礼致します」
ニクロスは転移していった。
なんなんだ。あの情熱は。
ちょっと羨ましいぞ。
食べたくなったものがあったら言えば作ってくれそうだな。
感謝だ。
「私も一旦失礼させていただきます」
「どうしたディアブロ?」
「ニクロスにハンバーガーとホットドッグの作り方を教えてきます」
「は?作り方わかるの?」
「勿論でございます。アルス様がお喜びになる食事をご用意させますので、一旦失礼致します」
ディアブロも転移していった。
あいつはあいつでいろいろとバグってるんだよなぁー。
みんなで飲み物を飲んで軽く食べ物を摘んで休憩を挟んでから第二ゲームへと突入した。
俺も含めみんな少しずつ慣れたことで最初よりはストライクやスペアの数が増えていく。
当然少し点数は伸びるのだが、ついて来れなくなった者が出始めた。
セレネとエイアだ。
早い話しが力が弱くて玉が遅い二人だ。
落ち着いてゆっくり狙えばいいのにめちゃめちゃ全力で投げている。
遅い玉が狙いを外して転がっていく、当然ピンは倒れない。
軽く狙って投げるように言ったが聞く耳を持たなかったので好きにさせている。
点数が全てではない。
楽しめればいいのだ。
とはいえ、現在第六フレーム。
俺、ラミア、メティス、鎧くんの点数は横並びだ。
負けられない戦いがここにはある。
続く第七フレーム。
ラミアが無難にスペアを獲得し、皆にプレッシャーをかける。
続く鎧くんは無難に8ピン。
メティスは7ピン。
そして俺の番である。
慎重に立ち位置を確認し狙うのは手前の三角の印だ。
心を落ち着かせて投げる!
ぐあっ、1ピン残ったか。
だがこれはイージーだ。
俺なら取れる。
と思ったら横で投げているエイアが目についた。
腕をスライム状にしてボールを取り込んだ。
そして投げるのではなくペッと吐き出した。
吐き出された玉は勢いよくピンの中心に当たり全て弾き飛ばした。
ストライクだ。
なんて技を編み出しているんだ。
あまりの光景に動揺してしまった俺は残った1ピンを外した。
緊張した投球が続き、ついに最終フレームへと突入した。
結局はみんな僅差である。
まず現在トップのラミアだ。
一投目でまさかのスプリット。
ピンが割れた。二投目は無難に多く残った方を取りに行き9ピンで終えた。
鎧くん、メティスと9ピンが続いた。
最後は俺の番だ。
まずはスペア以上は必須だ。
慎重に狙いを定め渾身の一投を放つ。
パカーーーン!
おっしゃ!見事ストライクだ。
これでメティス、鎧くんに負けることはなくなった。
後はラミアを倒すのみ。
8ピン以上で勝ちは確定する。
しかも俺にはまだニ投ある。
大丈夫だ。イケる。
後は自分との勝負だ。
いっけぇー!
くそ、9ピンか。
これで俺の勝ちは決定したがまだまだスペアのチャンスがある。
最後は綺麗に閉めようじゃないか。
パカーン!
よっしゃーー!
これで俺の一位が決まっただろう。
みんなとハイタッチを交わして隣のレーンが終わるのを待った。
のだが、エイアがヤバかった。
玉を取り込んでから発射する投法を編み出してからストライクを量産していた。
一気に俺の点数まで追いついていたのだ。
その後もストライクを連発したエイアが今回の一位に輝いた。
まじ悔しい。
普通に負けてしまった。
まさかあんな技を編み出すとは。
この後もニゲームやったがエイアのぶっちぎりであった。
三ゲーム四ゲームともにラミアにも負けたし、四ゲームはメティスにも負けた。
悔しすぎる。
だが、勝ったメティスが落ち込んで座っていた俺を優しくハグしてくれたからチャラだ。
めちゃめちゃ胸に顔を押し付けられてグリグリしてくれた。
なんならハグのために今後、俺はわざとメティスに負けようかとと思うぐらい得をした気分だ。
そんなこんなで俺達のボーリングは終了した。
が、他のレーンではいまだに名前を賭けた戦いが繰り広げられていた。
白熱ぶりが凄いぞ。
他の奴等も上手く息抜き出来ればいいのだがな。
まあ、適度に楽しんでもらおう。
俺たちはボーリング場を後にしたのであった。
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