――今日から始まる能力祭、俺の最初の相手は学園順位673位、仲野哲。特殊能力は硬度変化で、自分が触ったものの硬度を変えられ、右手で硬化、左手で軟化となっている。
「――おお、お前が噂の橘瑞人か」
坊主頭が似合う仲野哲は、ナックル使いだった。
「ああ、よろしくな……」
『――会場にお集まりの皆さん、大変長らくお待たせいたしました。これから始まりますはBブロック3組目、東ゲート、学園順位673位、【剛腕】仲野哲選手。西ゲート、学園順位1024位、【無能者】橘瑞人選手。この両者による個人戦です。今回、実況を担当しますは私、九重未智でございます。解説は橘希美先生です。』
『はーい、希美先生でーす!よろしくねぇ!』
先生(母さん)は、いつも通りの元気な声と人気だった。
「なあ橘、お前は優勝したら何を望むんだ?」
「は?なんのことだ?」
俺のその言葉に、彼は笑った。
「なんだお前、知らなかったのか?この能力祭で優勝すれば、ある程度の望みは叶えてもらえるんだってよ」
「へぇ、そうなのか、知らなかったよ。ありがとう、教えてくれて……。これでまた一つ、勝たないといけない理由が増えたな」
「なんだよ、まさか俺様に勝てるとでも思っているのか?」
彼は俺が思っているよりも、偉そうな感じだった。
「まあ、そうだね。俺は勝つよ、お前にね……」
俺の言葉に彼はまた、面白そうに笑った。
「ははっ!まあ、そうでなきゃ面白くないからな。少しくらいは楽しませてくれよ!」
彼はそう言うと、右手で空間を殴る。すると――。
「――なっ!?」
俺の腹を、ドンっと何かが殴りつけた。
「ははっ!驚いたかっ!俺様の硬化は空気にも使えるんだよ!」
「な、なるほどな……。これは驚いた、まさか空気にまで効果があるなんてな」
そんな使い方をするなんて、これには流石の俺も驚かされた。
「そうだろうそうだろう。硬化された空気は俺にしか見えないから、避けるのは不可能なんだよ!」
彼は、満足気にそう言った。
「それなら、避けなければいいだけだ……」
「はあ?お前、何言ってんだ?」
彼にはやっぱり、俺の言葉は理解できなかったようだ。
「わからなくていい。――能力解放。特殊能力発動、すり抜け」
俺が特殊能力を発動した瞬間、相手の攻撃が俺をすり抜ける……。
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