――能力戦が始まり、初戦を勝ち抜いた俺は学園の有名人になっていた。
「なあなあ、橘ってすげぇ強いんだな!俺、ビックリしたよ」
「そうそう橘君、あの刀見せてよ。すごくかっこよかったなぁ……」
俺の周りには、たくさんの人が集まっていた。昔の俺からしたら、あり得ないことだった。
「あの刀は危険だから、普段は異空間に封印しているんだ。だから、むやみに出したりできないんだよ」
「なーんだ、そうなのか。残念だなぁ……」
そう言って皆は、ガッカリしながら自分の席に戻っていった。
◆
――そしてあれから俺は、二回戦三回戦四回戦と順調に勝ち進み、五回戦。相手は学園順位48位の霧ヶ峰咲人。やはり五回戦だけあってこの人は、これまでの4人とは強さが違った。でも、俺からしたら余裕だった。
そして六回戦、今回の相手は学園順位13位の天津凪。使用武器は俺と同じで刀、能力は瞬間移動。今回は、なかなか苦戦しそうな相手だった……。
『会場皆さん、今回はBブロック決勝。対戦カードは学園順位13位、【閃光】天津凪選手対、学園順位1024位、【無能者】橘瑞人選手です。今回の実況も私、九重未智が担当します。解説には……』
『はいどうも、水越和也です。今日は目一杯楽しませてもらいますよ』
俺は実況者のセリフを聞いて、前から思っていたことがあった。
「……俺っていつまで無能者なんだろうか。ていうか、無能者ってなんだよ」
「――やあ、君が橘君か。君って今、すごい有名人になっているんだけど、知っていた?まあ、知っているよね。実は最近、僕の周りでも君の話で持ち切りなんだよぉ」
「は、はあ、そうなんですか。まあ、俺が有名なのは知っていますけど……。てか、先輩たちも俺のこと知っているんですね……」
そう言いつつ、俺は心の中でめっちゃ喜んでいた。
「そっかぁ、そうなんだよ。……まあでも、今回の戦いで君の時代は終わっちゃうんだけどね♪」
そう言って刀を鞘から抜いて構え、眼鏡を外した彼女の顔つきは、変わっていった。
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