――俺はあの戦いの後、姉さんのことを思い出していた。
俺の姉さん、橘楓は天才であった。
成績優秀、運動神経抜群、価値数字も高く、ランクはA。それはそれは、非の打ち所がない人だった。
俺と姉さんの仲はよかった、姉さんが学園に行くまでは……。
◆
――――あれは3年前の4月、俺が中学に入学した時の話。
「姉さん!機関が運営している学園に入学するんだって?」
「そうなの!やっぱり、私が特殊能力者だからだよね♪」
小躍りする姉さんの顔は、満面の笑顔でした……。
「はあ、姉さんってホント母さんに似てきたよね」
「えぇ?そうかなぁ。それは、ちょっと困るなぁ……」
姉さんは困り顔で頬をかいていたが、母さんに憧れている姉さんのことだから内心は喜んでいるに違いない。というか、明らかにわざとらしい困り顔だった。
「姉さん、本当にそう思っている?」
「もちろん、全く思っていないよん♪」
「やっぱりね……。でもまあ、いつも通りで安心したよ」
「何よぉ、やっぱりって……。別にいいでしょ、お母さんは私の憧れなんだから」
姉さんと同じく、母さんは頭が良くて運動神経抜群、価値ランクはA。特殊能力は能力解放で、自身のあらゆる能力を解放し、一時的に能力値が倍になる。
また、母さんは学校の先生なのだが、学校の場所は教えてくれない。
「まあ、頑張ってよ姉さん。俺も頑張るからさ……」
「ありがとう瑞人、お姉ちゃんは頑張ります!それと――」
姉さんは右手で敬礼し、張り切る。が、少し表情が寂しそうに見えた。
「ん?それと――?」
「瑞人はあんまり頑張り過ぎないこと。例え価値数字が0でも、瑞人は私の弟。だから、きっと大丈夫だよ♪」
「あはは。姉さんったら、母さんと同じこと言っている」
「まじかぁ。流石はお母さん、考えることは同じってことね」
なんだかんだ言って、姉さんは俺のことを心配しているんだ。そんな姉さんに、俺は感謝している。だから、ちゃんと言わないと……。
「――ありがとう姉さん、俺のこと心配してくれて。俺なら問題ないよ、だって姉さんの弟なんだから」
「うん、なんの心配もなかったようだね。――瑞人、頑張れ。お姉ちゃんも頑張るから」
「うん、わかっているよ。姉さん」
俺と姉さんは、お互いに手を出した。そして――――
――パチンッ!!
ハイタッチ後、姉さんは学園に行く為に支度を整える。
「――それじゃあ瑞人、行ってきます!」
「いってらっしゃい!」
俺は、寂しいのをこらえて姉さんを見送った。
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