――姉さんが学園に行ってから半年が経ち、世間では夏休みに入っていた。
「はあ、夏休みって意外とやることないなぁ。遊ぶような友達なんて、俺には一人もいないし……」
俺は夏休みに入ってすぐ、学校の宿題を片付け、暇を持て余しているそんな時だった。
――――ガチャ。
「ただいまぁ……。瑞人、お姉ちゃんが帰ってきたよぉ」
学園の寮で生活をしているはずの姉さんが、帰ってきた。
「あれ、姉さん。学園にも夏休みってあったの?」
「いや、無かったら死んじゃうから……」
「てっきり俺は、姉さんなら夏休みなんていらないとか言って、ずっと勉強しているもんだと思ってた」
「ちょっと、それじゃあまるで、私が勉強狂いみたいじゃん」
「いや、みたいじゃなくてそうじゃないの?」
「はい、違いますぅー!私だって遊んでいる方が好きなんですぅー!」
姉さんのテンションは、明らかに学園へ行く前よりもおかしくなっていた。
「姉さん、学園で何かあったの?テンションが前よりもおかしいけど……」
「ええぇ、そんなことないよ。私はいつも通り元気だよ……」
姉さんはそう言って、自分の部屋に戻っていった。姉さんが部屋に戻る姿は、どこか俺に不安を感じさせた。
◆
あれから数日が経ち、夏休みも終わりに近づいていた。それと同時に、姉さんとの別れの時間も近づいていた。
「姉さん、本当に何もないんだよね?」
「瑞人もしつこいなぁ、何もないって言っているのに……。それじゃあお姉ちゃんは、そろそろ学園に戻るね」
「……う、うん」
姉さんの言葉に、俺の返事は曖昧なものになってしまった。それほどに俺は、姉さんの様子に不安を感じていたのだ。
――まさか俺のこの不安が、あんな形で襲ってくるなんて、この時の俺にはわかるはずも無かった。
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