エフォート・バリュー ~断罪世界~

抹茶
抹茶

7話 本気。

公開日時: 2021年2月27日(土) 04:34
更新日時: 2021年3月13日(土) 12:28
文字数:1,237

――Bブロック決勝が始まり、俺は貸し出し用の刀で対応できるかを試していた。


「ねえねえ橘君、そんな刀で僕に勝てると思っているの?」


「わからないですね、やってみないことには……」


 彼女の言葉に、俺は苦笑しながら答える。すると彼女は、面白がるように笑いながら俺に言った。


「あはは、確かにそうだね。やってみなければ、わからないこともある。でも、それは相手が僕じゃなければ、だけどね♪」


「それほど貴方は、強いってことですか?」


「うん、これでも一応学園順位13位だからね。君が思っているよりも、強いと思うよ」


「わかっています。でも、俺はこれでやりますよ」


「そう、それなら僕は本気を出して君を倒しに行くから」


 そう言って彼女は俺に向かって、切りかかってくる。


「――くっ!このくらいなら、まだ大丈夫だ……」


「そうは言っているけど、本当は抑えるだけで精一杯なんじゃないの?」


「そんなことない。この先どうするかを考えているだけだ」


 そう言っているが実際は、相手の攻撃を刀で抑えるのが精一杯だった……。とはいえ、この先どう攻撃するか考えているのも本当である。


「強がっていないで、君も本気を出しなよ。じゃないと、負けちゃうよぉ?」


 確かに彼女の言う通り、このままだと負けてしまう。実は闇桜でも勝てるかどうかわからない程、彼女は強い。今のままだと、学園の四天王には勝てない。だからこそ……。


「俺は、闇桜を使わずに勝ちたいんだよ!」


「…………。はあ、僕はちょっと失望したよ。そんな甘い考えだから、君の価値は低いんだよ!」


 俺は彼女の豹変ぶりに驚いた。人は見た目で判断してはいけないとは、このことを言うのか。と思ったくらいだ。それでもまだ、俺は冷静でいられた。そう、この時までは……。


「人は常に本気で戦って、勝たないと意味がない。本気じゃない相手を倒しても意味がないんだよ!君みたいな考え、僕は絶対に認めない!」


 俺はその時、思い出してしまった。あの日のセリフを……。



 ――――あんたなんか、認めない!早く私の前から消えて。



「――なあ、なんでお前に認めてもらわなきゃいけないんだ?おかしくないか?俺はお前に認めてほしい訳じゃない。なのに、なんでそんなこと言われないといけないんだ?」


「は?そんなの、君が本気を出さないからに決まっているじゃない」


「……。わかった、本気出せばいいんだろ?」


「僕は最初からそう言っているじゃん」


「それなら、本気でお前を殺しに行く。もう、手加減はしない。――来い、闇桜」


 俺がそう言うと、目の前に一本の刀が現れた。


「それが君の刀なんだね。ところで、僕の刀も紹介した方が……」


 彼女の言葉を途中で遮って、俺は言う。


「別にいい。――――喰い殺せ闇桜、黒峰!」


 俺の刀の本名は、『闇桜やみざくら黒峰くろみね


「な、何よ、その黒い刀……。そんなの見たことない!」


 黒峰の黒さは漆黒で、妖刀に近い代物。


「もう遅い、お前はこいつの生贄だ!」


 ――――スンッ!


 俺は、刀を振り下ろす。そして彼女は……。





 ――――むごたらしく切り刻まれた。

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