――Bブロック決勝が始まり、俺は貸し出し用の刀で対応できるかを試していた。
「ねえねえ橘君、そんな刀で僕に勝てると思っているの?」
「わからないですね、やってみないことには……」
彼女の言葉に、俺は苦笑しながら答える。すると彼女は、面白がるように笑いながら俺に言った。
「あはは、確かにそうだね。やってみなければ、わからないこともある。でも、それは相手が僕じゃなければ、だけどね♪」
「それほど貴方は、強いってことですか?」
「うん、これでも一応学園順位13位だからね。君が思っているよりも、強いと思うよ」
「わかっています。でも、俺はこれでやりますよ」
「そう、それなら僕は本気を出して君を倒しに行くから」
そう言って彼女は俺に向かって、切りかかってくる。
「――くっ!このくらいなら、まだ大丈夫だ……」
「そうは言っているけど、本当は抑えるだけで精一杯なんじゃないの?」
「そんなことない。この先どうするかを考えているだけだ」
そう言っているが実際は、相手の攻撃を刀で抑えるのが精一杯だった……。とはいえ、この先どう攻撃するか考えているのも本当である。
「強がっていないで、君も本気を出しなよ。じゃないと、負けちゃうよぉ?」
確かに彼女の言う通り、このままだと負けてしまう。実は闇桜でも勝てるかどうかわからない程、彼女は強い。今のままだと、学園の四天王には勝てない。だからこそ……。
「俺は、闇桜を使わずに勝ちたいんだよ!」
「…………。はあ、僕はちょっと失望したよ。そんな甘い考えだから、君の価値は低いんだよ!」
俺は彼女の豹変ぶりに驚いた。人は見た目で判断してはいけないとは、このことを言うのか。と思ったくらいだ。それでもまだ、俺は冷静でいられた。そう、この時までは……。
「人は常に本気で戦って、勝たないと意味がない。本気じゃない相手を倒しても意味がないんだよ!君みたいな考え、僕は絶対に認めない!」
俺はその時、思い出してしまった。あの日のセリフを……。
――――あんたなんか、認めない!早く私の前から消えて。
「――なあ、なんでお前に認めてもらわなきゃいけないんだ?おかしくないか?俺はお前に認めてほしい訳じゃない。なのに、なんでそんなこと言われないといけないんだ?」
「は?そんなの、君が本気を出さないからに決まっているじゃない」
「……。わかった、本気出せばいいんだろ?」
「僕は最初からそう言っているじゃん」
「それなら、本気でお前を殺しに行く。もう、手加減はしない。――来い、闇桜」
俺がそう言うと、目の前に一本の刀が現れた。
「それが君の刀なんだね。ところで、僕の刀も紹介した方が……」
彼女の言葉を途中で遮って、俺は言う。
「別にいい。――――喰い殺せ闇桜、黒峰!」
俺の刀の本名は、『闇桜・黒峰』
「な、何よ、その黒い刀……。そんなの見たことない!」
黒峰の黒さは漆黒で、妖刀に近い代物。
「もう遅い、お前はこいつの生贄だ!」
――――スンッ!
俺は、刀を振り下ろす。そして彼女は……。
――――惨たらしく切り刻まれた。
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