面白くないラノベの見本

必ず一次選考落ちする作品
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FAll of You3

公開日時: 2022年11月28日(月) 00:00
文字数:1,515

 図書館に着くと、七緒は駐車場の前で立ち尽くし、入り口を見た後に建物全体に目を向けた。それが終わると、また次の場所へ向けて歩き出す。


 きっと、というかそれ以上の確率で、次の行き先はペットショップだろう。その次にどうするのかは予想がつかないが、ほぼ確定だと思う。


 即かず離れず付いて行きながら、図書館で起こったことを回想した。

 まず、部長が単独行動をした。本を返却して振り返ったら、忽然と姿が消えていたのだ。奥の席に陣取り、図鑑と睨み合っていた。その行動もかなり常軌を逸したものだったが、どうやらどこかで計算をしていたらしい。花崎が座っている席の隣の机に陣取るという行為がまさにそれだろう。

 花崎が笑いやすい人間だということをあらかじめ調べていたのかもしれない。その上で俺を緩衝材とし、笑わせることで打ち解けようとした。ふざけたやり方だったが、部長の思惑は結果、当たった。

 俺を間に入れたのは他にも意味がある気がする。花崎が七緒水月を知っているか否かの判断がついていなかったため、俺を利用して小手調べをしたのだ。そうすることで、変装がばれていないかを判断し、七緒水月を知っているかどうかも探りを入れた。ほとんど賭けのような企みではあったが、部長が、図書館に足繁く通っていただろうことを加味すると、それも目論見通り、と言えるかもしれない。





         ◆





 商店街に入り、まだそれほど混雑していない人波をすり抜けると、ペットショップ、モモ&ココに到着した。


 例のごとく七緒は店内を見やり、ただそれのみで中に入ろうとはしない。


 店内であの女性店員と客が仲良く話すのを眺めながら、疑問と格闘を始めた。

 昨日の出来事の中で、ここに来たことだけが合理的でない。全体的に見ても行き当たりばったりで計画性がないように思えるが、目的だけは達している。しかし、ここに来たことはほとんど成果を残していない。少なくとも部を作るという目的に関しては(俺が辞めないように、という行動とも考えられるが)。

 ここであったことはなんだったか……。店員と仲良く話した。猫と戯れた。あとは……そう、部室でできなかった自己紹介をしようとした。だが部長がまたふざけ、結局お流れとなった。

 この場所のキーワードはまさに猫。それしかないだろう。猫、ねこ……。猫という単語が出てきたのは部室を出る前。つまり最初の自己紹介が破綻してしまった後だ。そういえば、部長は俺が読書をしている間に……が好きだ、と言った。後から訊くと子猫のことだと言い……。


 自己紹介。猫。


 要するに、そういうことか。

 ここに来たことは、計画でも企みでもなかった。ただ純然に、気持ちの向くままに訪れた。理由は、言わずもがな。そして計画も企みもなくそこにあったものは、偽らざる気持ち。

 あるいは思惑すらなかったのかもしれない。ただその気持ちがあるだけで無意識的に行動を起こし、あとから見れば結果としてそうなっていたように。


 部長は、この場所では、七緒水月という一人の女の子だった。だからだろう。俺が心ない発言をした時、手痛い仕打ちを受けてしまったのは。

 あの発言は、純粋な女の子の気持ちを顧慮しない、それこそ子孫七代まで祟られても不思議ではない、無分別な行動だったのだ(人の感情を顧みない、という点は笑い事では済まされない、非人間的行動である)。手痛いどころか、手酷い仕打ちを受けてしまっても、それはやむなし、よんどころない、と言ったところだろう。


 しくしくと疼く下顎の辺りをさすりながら、店員が抱いている子猫がじゃれつく姿をしばし眺める。


 七緒は鞄につけたストラップを揺らし、また違う場所へ足を向けた。


 一目見ただけではわかりづらい、銀色の猫のストラップを揺らして。

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