家で飼ってる犬がさ、寂しくて吠えるから、夜は勝手口に入れてるのよ。で、俺が夜のお仕事から帰ってきたら、親にばれないように勝手口からこっそり入るわけ。するとね、カカオ(犬の名前ね)が外に出ようとするのよ。多分、俺が散歩に連れて行ってくれるとか勘違いしてだと思うけど、隠密行動してる俺としてはね、カカオが外に出ちゃうといろいろとマズイわけですよ。中に戻そうとしてごそごそしてたら親にばれちゃうかもしれないし、カカオが外に出たままだと野良犬か野良猫に襲われちゃうかもしれない。だから足で、外に出ないようにして入るわけなんだけど、カカオも散歩行きたいからか負けじと出ようとするわけ。そんなこんなで前に勝手口から入ろうとした時なんかはさ、カカオが出ないようにしてたら首を両足で挟んじゃってね。さすがのカカオも身動き取れないから、これヤバくね? って感じたらしく、首を引っこ抜いて諦めたわけですよ。で、戸を閉めたら、しょんぼりした様子でいつも座ってるクッションのところに戻って、むすっとした表情でドカッと座り込んだんだ。事故とはいえ、首を締めかけた罪悪感があったからね、俺は小声でカカオに言ってやったんだ。
「……カカオ。今のは確かに俺が悪かったかもしれない。でもな、出たいのはわかるけど、それでオスの野良犬にレイプでもされたらどうするんだ。そいつが好みのタイプじゃなかったらどうする? 嫌いなタイプだったら? 好きでもないヤツの子供ができて、そいつらの面倒見なきゃならなくなるんだぞ? 俺や父さんや母さんも含めてな。それがわかってんのか?」
そしたらカカオ、なんて言ったと思う?
「……その時が気持ちよければいい」
俺は自分の耳が信じられなかったよ。正直、入学して少し経ってから、先輩に「あの教頭カツラやぞ?」って言われた時より信じられなかった。(あんなにふさふさなのに……)だから俺はカカオの言葉を聞いて思考と呼吸が一瞬止まっちゃってね。リアクションにかなりの間を要したよ。
「wha――デュハァアアアアアアアアア!? (息を吸いながら出す声ね。この小説には幾つか使われてる)」
そして言ってやった。
「なんてビッチなんだ! カカオ!」
言ってから気づいて、
「あ、ビッチだったわお前……」
目を瞑って独り言のように呟いたら、
「あたしビッチじゃないわよぉ? クソご主人様ぁ。まあ、ビッチだけど」
カカオがケモミミしっぽ付きのないすばでーに擬人化していた。
「わぁあああああああ――まぉああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!???!!」
途中から口押さえて叫んだから、親が起きてくることはなかったよ。奇跡だね。
「ここ最近、寝てるあたしを起こすばかりして、そういうプレイが好きなのぉ、クソご主人様ぁ?」
ふさふさのしっぽがふりふり。もふもふのおみみがぴこぴこ。
これが――。
これこそが――――。
「……なんて! ……なぁんて!! ――なんてビッチなんだカカオ!!!」
久しぶりにカカオを目一杯構ってやった。
――――この小説の真のハッピーエンドだ。
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