ワームホールの中で。
「――何が! どうなって! ――なんで! こうなった!?!」
「デュフフ……。私がこんな面白そうなことに首を突っ込まないとでも? ――甘い! 蜜月旅行〈ハネムーン〉真っ最中の新婚さんくらい甘いよキミィ!!」
「……わかってた。――わかってたよ! だってセンサーにも反応あったし、思いっきりルパンダイブして来てるの見えてたもん!! 全部見えてたんだもん!! でもどうしろってんだ!? また怪獣大決戦みたいなことおっぱじめて、『世界滅亡の予兆か』みたいな速報流されろってのか!? マーフィの魔法はあれっきりかもしれないんだぞ!? 今度またあんなのが起きたら、俺じゃ元に戻すのにどれだけかかるかわかんないんだよ!! わかる!? この地球破壊兵器を背負わされてる重圧と苦悩!! わかるわけない!! 眼が眩むほど綺麗な蛾の羽を開いて『ハハハ! こいつウケる―!』とか思ってる君たちにわかるわけがない!!! なんで俺は――」
「志津馬君はなし長い……。それに前々から思ってたけど誰と話してるんだ? 別人格? 番組の視聴者? ハハハハー! 志津馬君の方がよっぽど頭おかしいんじゃないか? 精神鑑定でも受けた方が――ってなんだあの世界! まるでファンタジーじゃないか……面白そう……!」
「そこ! 一人で勝手にワームホールから出ようとしない!! 五歳児のピクニックじゃねえんだよこれは!!」
「わかってるさ。私はタイムトラベルがとても重大なことだとわかってるし、ワームホールの途中で他の世界に飛び込めば、何がどうなるか予想もできないってことも重々承知してる。だから、今だけは、志津馬君の言うことを聞いて、自分が好奇心の塊だという事実を重く受け止めるふりをしながらその心を柳のように受け流してありのままの自分で行こうと思うんだ」
「ダメだろうがそれじゃ!!!」
「だいじょ~ぶ。飽きたらすぐに戻ってくるから~」
言いながら部長はワームホールの外へ出て行ってしまった。
………………。
「Wha――何が! どうなって! ――――なんで! こうなった!?! FUCK!!!」
「フゥー! フゥー! フィーすぅううはぁあああああああああーーー」
「……それはそれとして」
志津馬は頭を捻じり回すようにして急にこちらを向き、
「大事なことだから二回言うね」
「I FUCK'n love you so much.」
そういった後、振り返って部長が消えたあたりに向かいながら、
「ともだちひゃくにんできるかな~♪」
ワームホールの端に張り付いて首だけを突っ込んで、
「部長ー? まだいますかー? このまま放置して別のヒロイン作る計画を思いついたんだけど、聞こえてるー?」
「……………」
「――Got it!!!」
「よく聞こえないよ志津馬く~ん! こっちに来れないか~!? ここはすごいところだから君も来た方がいいぞ~!」
くぐもった声が聞こえた。
「Shit FUCK!!」
期待を裏切られ汚泥を吐き散らすように呟いた。
「じゃあ今からそっちに行きます部長ー! 今から――Wha――!?」
ワームホールから出ようとした瞬間、ダイオウイカのごとき怪物か何かの触手か何かに全身を絡めとられ……、
志津馬の姿は跡形もなく消えた。
「アハッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー?!?」
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