……コロシテクレ……もう、コノセカイにイタクナイ……イキテイタクナイ……。
「ああ! あともう一つ! 君に伝えなければいけないことがあったのだ! 君の苦痛と悲劇が、進化の礎になればいいんだが……」
……ソレデモ……ヤッパリ…………――――シニタクナイ! 死にたくない! 死ぬのが怖い! 消えてしまうのが怖い! 死んでしまったらどうなる!? 何も残らないのか!?
僕は、ぼくは……死にたくない! 怖い! 死ぬのは怖いんだ!
コワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイコワイ………………。
ぼくは、生きていてはいけない存在なのですか?
「……もし、先ほど言っていた君の異常が本当に異常なら――それがアポトーシスの原因なのだとしたら――、……私は――君は……生きていてはいけない存在なのかもしれないね」
助けてください! 博士! あなたならそれができるでしょう!?
…………。
「ああ、できるとも。だか今はまだ無理なのだ。すまない。本当にすまない……」
いやだぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! しにたくない! しにたkない! しにたくないぃいいいぅぅううううぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
「まだ気づかないのかね? 自分が自分ではないことに。君は君ではないことに。キミは七緒水月君を救ってなどいない。世界も救ってなどいない。救ったという記憶があるだけだ。そう思い込んでいるだけなのだよ」
キキタクナイ! キキタクナイ! キキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイキキタクナイィぃいいいいいあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!
「……そう、君は君が思っている志津馬〈オリジナルのコピー〉ではない。今回、シグマに入っていたオリジナルのコピーではないんだ。……ここまで言えばもうわかるだろう? キミはね……」
――――志津馬のコピー〈使い捨て〉のコピー〈使い捨て〉なんだ。
タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテェえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!
……ああ、キミ(ワタシ)を助けよう、志津馬。
男の声が終わった直後、ナノマシンによる生命維持は停止し、彼の瞳は慟哭が止むのと同時に光を失った。
開いたままの目を男が指で閉じ、母親〈ヒューマノイド〉が歩いてきて、縮小され、自身に格納されていたコールドスリープを取り出して元の大きさに戻す。
それを半ば視界に入れながら、悪癖のように眼鏡を整え、俯きがちになる男。
……何が間違っているというのだ。私の何が……。
そもそもこの方法では進化は促せないのか……? それとも試行回数が足りない……?
母胎のサンプルを増やすか……? しかしそれではまた最初からということに……。
いや、最初の段階など疾うに過ぎている。
ここまで来て後戻りなどできるはずがない……!
私は進み続けなければならない……。
こんなところで止まっているわけにはいかない……!
ならば、そう……繰り返すだけだ。
何度でも繰り返す。
何度でも何度でも何度でも何度でも……!
私は誓ったのだ! 全ての人達に!
諦める事など許されてはいない。
完成させねば。この研究を。
失敗は余すことなく糧にすればいい。
辛酸はすべて呑み込み原動力としてくれよう。
他者を犠牲にしても、世界を犠牲にしてでも、私は生存することを選択した……。
故に、あらゆる可能性を網羅し、我々(わたし)は次の段階に進む!
グラスから覗く青い瞳は、三色に移ろい、光り輝いているように見えた。
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