三階に上がり、第二会議室まで足を伸ばした。
会議室という大きな部屋の隣にあるのが第二会議室だ。その部屋は幾つかの教室に隣接されている準備室ほどの広さになっている。使用方法は会議室で使う備品(会議用の机にパイプ椅子、プロジェクターなど)を保管し、収納する、といったところだろう。それならネームプレートには倉庫、とか、会議準備室、と彫るのが適当だったのではなかろうか。第二会議室が会議室として使われている形跡がなかったので、思ったまでだが。
と、扉の前で逡巡していても仕方がない。意を決して、引き手を引いた。
すると、中には七緒水月がいた。
彼女は眼鏡を掛けておらず、髪もポニーテールに結っていない。
七緒は部長の時と同じく奥の席に座っており、手を膝の上に乗せて折り目正しくしている。しかしこちらに気づくと顔を上げ、視線をそっと重ねるように合わせてきた。
「…………」
どう呼ぶべきか一瞬考え、そのおかげで話し始める機を逸してしまう。
見つめ合っていると、物腰柔らかに立ち上がり、申し訳なさそうに口を開いた。
「志津馬さん。良ければなんですけど、これから私に付き合ってもらえませんか」
その、綽約たる風姿の彼女の言葉を聞き、戸惑うことなく返事をした。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!