面白くないラノベの見本

必ず一次選考落ちする作品
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SlapStick6

公開日時: 2023年4月5日(水) 06:00
文字数:2,593

「バーディはどう思うんだい? 彼のことをどう思っているのかな?」


 鮫は丁寧な口調で尋ねた。


「バーディ? 魔法少女なのにバーディ? 大丈夫か? そんな設定で。それにそのサメ、エイリアンの口調だぞ? 大丈夫か? そんな設定で」


 疑問を投げ連ねる。


「う、うーん……。ちょっと、気持ち悪い、かも……?」


 少女の言。


「ちょっとなんだね。一般人からすればかなり気持ち悪い部類だと思うけど……。ともかくアルビーが気持ち悪いと思ったなら、断った方がいいんじゃないかな?」


 人食い鮫。


「そ、そうだよね……。いきなりお家デートはいくらなんでも早すぎだよね……。もう少しお互いを知り合ってからじゃないと……」


「そういう意味じゃなくて、はっきり断ったら、ということなんだけど……。イーグリットも早すぎだと思うよ」


 円らな瞳が臀部を上に向けた横半月のようになる。


「おいサメ。次にお前がホーリーとか、ホリーとか、はたまたザ・ワンとか言ったら、お前を三枚に下ろしてフィレ肉にする。そして生まれて初めてサメの刺身を食べてこう言ってやるよ。『Holy mother ○uck me!? (なにこれバカウマじゃない!?)』ってな。そしたらお前の同類の人気が上昇して、キャビアどころじゃなくポップでキュートでサイコなマスプロが起きてbulk purchase(大量購入)されて、オイルショックの時のトイレットペーパーとかRolling blackout発表後のカップ麺みたいにカップ鮫とかになって、地球上の三分の二は当時の中東某国のスーパーマーケットみたいにすっからかんになっちまうんだ! どうだ? うれしいだろ? 自分の同類がそんなに人気者になったら、鼻が高いよなあ? ……まあ、お前らの鼻なんてどこにあるかよくわからないし、人気者になったら鼻さえポップミュージックになっちまうかもしれないなあ! ガハハハハハッ!!!」


 志津馬は物語作品に出てくる噛ませ役のチンピラだ。しかしなぜ志津馬はチンピラなのだろうか? 彼の性格を考えれば思惑があるに違いないはずだが……。


 相対するは興味の失せた円らな瞳である。


「起きないね。だって『これ』売れるどころか読まれることもないし、形になることもないからね。Aha-ha-ha-ha. Holy shark(cow)(笑).」


 人食い鮫の嘲りは何とも流暢なものであった。



「――Holy――mother ○uckッ!!!!!」



 志津馬は口喧嘩に負けた子供の形相と仕種でゴールデンバットの等身大人形を取り出し、力任せに地に叩きつけた。何度も。何度も。欲しいものを買ってもらえず、地団駄を踏む幼子のように。


「……My! Mother! Is! Pretty! Woman!!」


 ゴールデンバットは折れてしまい、上半身と下半身が分離してしまった。


「And cute. And beauty. And……. ――SUPER BOOBS!!!」


 スーパーサイヤ人になるときのポーズ。


「I'm not boobs man. I! am! boobsian!!!(私は巨乳好きではない。私は! おっぱい星人だ!!!)」


「お、お兄さん……! それ……お人形が大変なことになっていますけど、いいんですか……?」


「wha……?」と言って自分が掴んでいるゴールデンバットを見る。すると、


「ッファアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 大きく息を呑みながら人形を落とし、両頬に手を当てた。


「ゴ……ゴ……ゴゴ……ゴゴゴゴゴゴggggggg…………」


「何かが起きる前触れかな? それとも巨大ロボか怪獣が登場するのかな?」


 鮫が無表情に言った。


「――ゴールデンバットのゴールデンバットがありえない方向にィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイインン!」


 すかさずゴールデンバット傍にしゃがみ、ゴールデンバットを元に戻そうとする。


「しゅ、しゅしゅしゅ、瞬間接着らいで応急処置をしれ、あとで補強すれば!」


 が。


「「あ」」


「処女は見ちゃだめだ!」


 咄嗟に人食い鮫が少女の視界を胸鰭で遮る。


 奮闘空しく、ゴールデンバットは中ほどからぽっきりと折れてしまった。


「――あはぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああばばばばばばばばああばばばばばばばば!!!」


 膝をつき顔を覆って天に叫ぶ。


 しかしすぐに今一度ゴールデンバットを見やり、


「あはぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんぽぽぽぽぽぽぽppぽぽぽぽぽぽぽぽぽ!!!」


 またも絶叫。


 一頻り声を出した後、手をついてがっくりと項垂れた。


「よし――」


「……え?」


 フィリアが戸惑いがちに言った。


「話を戻そうか」


 キリッっとした表情でいつの間にか立ち上がっていた志津馬が言う。


「い、いいんですか……? あの大きな人形は……」


「いいんだ。もう終わったことだ。たとえ俺がゴールデンバットを完全に復元することのできる職人だったとしても、復元されたゴールデンバットはもう前のゴールデンバットじゃないんだ。それじゃ意味がない。意味がないんだよ。ゴールデンバットは不撓不屈。折れたりしないんだから。FEfateみたいに」


「ふぇふぇいと……?」


「はい! それではむしゃぶりつきたくなるお嬢さん。ご用件は何かな?」


 英国紳士のする所作で、腰に手を当て片方の手をそっと差し出した。


「え? そ、それは……」


「迷子の迷子の子猫ちゃん~♪ おなたのお家はどこですか~♪ おくち~に聞いてもわからない~♪ からだ~に聞いてもわからない~♪ にゃんにゃんにゃにゃん~♪ にゃんにゃんにゃにゃん~♪ な~いてばかりいる子猫ちゃん~♪ オ、ス、の~お巡りさん♪ 困ってしまってわんわんわわ~ん♪ わんわんわわ~ん♪ (数拍置いて)れおぱるど~♪」(れ《↓》お《↑》ぱ《↓》る《↑》ど~《↓》♪)


「ネコtawaワ――!」


「え?」


「ネコワワタシノモノダ――――――――――――――ッ!!!」


 骨肉を裂く不快な音が聞こえ、


「え……」


 フィリアが瞬きする間もなく、志津馬の首は刎ね飛ばされていた。


 首から下だけになって立ち、次の瞬間には力を無くし崩れ倒れた彼を見て、


「あ……あ……あ……」


「いやぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 少女は絶叫した。

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