面白くないラノベの見本

必ず一次選考落ちする作品
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SlapStick8

公開日時: 2023年4月15日(土) 09:00
文字数:1,424

 気を取り直した志津馬はビルを眺めて言った。


「あの役立たずが……」


 首を下に曲げてため息をついて間を置き、


「わかった。これからは俺がシリアスになる。いや、シリアスをやる。違うな、シリアス担当をする、これだ」


 真摯に宣言した。

 そして徐にクラウチングスタートの構えを取り、巨漢とアマテラスを睨んで……。

 地を蹴り、光のような速さで駆け出した。


「志津馬さん応援に駆け付けましたよー」


 しかし突如現れた人影を避けようとして――、

 足がもつれて転んだ。

 あまりの勢いに回転が止まらず、その間に頸椎、腰椎、四肢の複雑骨折、それを繰り返し、果ては瓦礫から突き出ていた杭のような鉄塊に胸から突き刺さり、目を見開いて「ゴハッ!」と血反吐を噴き出した後、刺さったままぐったりと脱力した。


「あらあら~」


 突如現れたガウン式患者衣を纏った少女は、口に手を当てて暢気そうに驚き、


「まるでタッカーとデールみたいですねー」


 と、さも楽しげに笑った。





「「「おはあぁぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 志津馬の串刺しを見ていた街は阿鼻叫喚の巷となった。


「志津馬さん、あの志津馬さんはどうするんですかー?」


 白衣の少女が群衆に向かって訊いた。


「ああ、あいつは放っておこう。不運な出来事が続いたせいで、立ち直れなくなったんだ。しばらくあのままにしておいてやった方がいいだろう」


 その一人が言った。いつの間にか群衆はすべて志津馬になっていた。


「これ、ネオがアーキテクトに会ったときがネタだろ」


 と他の志津馬。


「何言ってんだお前。あの時は首から上しかなかっただろうが」


「ああ! さっきのあいつみたいにな?! イヒヒヒッ!」


「そうだっけ? 胴体もあった気がするぞ」


 好き勝手にしゃべくる同形の者たち。

 その間に白衣の少女は姿を消していた。


「あれ、しおりちんはどこ?」


「あっちでキングゴリラと武蔵伝のラスボスの炎バージョン、というかRPGゲーのイフリートみたいなのと戦ってる」


「しおりちんって戦えるん? 普通の女の子だと思ってたんだけど」


「なんか吸血鬼がコウモリになって敵の攻撃回避するみたいに塵か砂になって応戦してる」



「オーマイ……」


 串刺しの志津馬が顔を上げて言った。


「Oh My――」


「ぬるぽ」


 他の志津馬。


「ガッ――」


 一瞬で体を鉄塊から引き抜いて、地団太を踏みながら、


「ガッ――ガッ――ガッ――――――goddess!!! damn it! got damn it! FUCK! FUCK'N FUCK!!!」


「語彙が貧困だな。ってこのセリフ、『The Boondock Saints』でも言ってなかった? Ⅱかな?」


「やっと運命の人に出逢えたと思ったのに! せっかく普通の人間の女の子と巡り会えたと思ったのに!! 誰も彼も――誰も彼女も人外みたいなのばっかりかよ!!!」


 と言った直後にハッとして、


「待って……花崎は……? 花崎はまだ来ないの?」


「花崎さんは設定が固まってないので来ませーん! 花崎さんは人気が出なさそうだからどうしようかなーとかなんとからしいでーす!」


 金剛石〈ダイアモンド〉よりも固い爪を伸ばし、アマテラスの鎧に傷をつけ、巨漢をも後退りさせながら間延びした大声を出す。


「……なんて……なんて……」



「――Kiss My ass! ――deity!!!」




 女神……つまり、俺の嫁(ある界隈での用語)ということらしい。

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