一際高い高層ビルの屋上。
給水塔に、クレイアニメの芋虫になって寝そべっている志津摩が街と目映い夜明けを眺めていた。
「はぁ……。どこの誰とも知らない、素性もよくわからない超能力女子を助けろって? ……それどんなラノベだよ……どんなギャルゲだよ……どんなハーレムエンドだよ……」
言い終えると、人型の全身タイツの如き姿になっていた彼はすっくと立ち上がり、
「ふぅ。……最後のは違うかな」
宙を歩くかのように自然と一歩を踏み出して垂直落下で給水塔から降り、
「んじゃまとりあえず……」
「――自分に勝つ所から始めますか……!」
悠々とした足取りで屋上の端の方へ歩んでいき、
くるっと顔だけ振り向いてお道化た様子で視線を寄こし、
「――なんてね!」
飛び降りた。
下を覗き込むと……。
彼は突如開いたワームホールに入〈落ち〉るところだった。
左手でサムズアップをして、右手で投げキッスをしながら。
消えた志津摩の後に声だけが響く。
――――何度死んでも生き返れ。
――彼が飽いていたかどうかの答えが出ていない、だって?
何を言うんだ。
それは君自身がよくわかっているはずだ。
他ならぬ、君が。
そうだろう?
演者は消え、其処に在るのは獣のみ。
誰一人としてそれを識らぬ者はおらず、また、誰一人としてそれを知る者はいない。
斯くして、筆は折られた。
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