今日は王宮に来ている。
王妃様のお茶会にお呼ばれしたのだ。普通なら伯爵令嬢である私なんか、王妃様からお声が掛かる立場のはずはないんだが、そこはほら聖女としての認知度のお陰ってヤツだ。
正直言って、あんまり嬉しくはないんだけどね...王妃様の目の前なんて緊張するだけだし、作法にも気を遣わなきゃなんないし、疲れるだけなんだよね...
そしてなんと言ってもこれ。
「やあ聖女様。今日もとっても麗しい。まるで美の化身のようだよ。是非とも私にエスコートさせて欲しい。向こうで二人っきりにならないか?」
この歯の浮くようなセリフを臆面もなく吐いて来るのは、この国の第2王子ルイス様だ。会う度になぜか私をこうやって口説いて来る。
もっとも私というよりも、聖女というブランドに興味があるってだけの話なんだけどね。心の声を拾ってみれば良く分かる。
『今日こそはなんとしても聖女をモノにしてみせる! 聖女という称号を持つ女は我が王族にこそ相応しい! カルロなんかには勿体ない! 聖女を我が手に出来れば、王位継承権争いでも有利に立てる! 私が王位に就くためには、聖女を伴侶にするのが一番の近道なんだ! この女に興味は微塵も無いが、モノにしてしまえばこっちのもんだ! お飾りの妻にして欲望の捌け口には愛人を何人か囲えば良い! フフフッ! 私のこの美貌と王子という立場でアプローチすれば、堕ちない女なんか居るはずがない! 覚悟しろ!』
なんだかなぁ...私を政治の道具にしようとするのはホント勘弁して欲しい...お飾り妻ってなんだよ...愛人を囲うってのも...女をバカにするのもいい加減にしろ!
そりゃまぁ確かに、金髪碧眼のキラキラ王子様スタイルの外見は良いよね。外見だけはカルロとタメ張るかも知れない。だけど中身がこんなに腐ってるんじゃあね。百年の恋も冷めるってもんだよ。そう思わない?
だからここはキッパリお断りする。
「すいません、殿下。私の婚約者はとても嫉妬深いんで、殿方と二人っきりになったのがバレたりしたら大変なんです。どうかご容赦下さい」
「ハハハッ! カルロに気を遣っているのかい? 大丈夫だよ。黙ってりゃバレたりしないって。もしバレたりして、カルロが何かごちゃごちゃ言って来たりしたら私がビシッと」
「僕がどうかしましたか?」
「「 カルロっ! 」」
「やあ、リタ。遅くなってゴメン。会議が長引いちゃってね」
「ううん、いいのよ。来てくれてありがとう」
そう、今日はカルロも王宮に用があったので、終わったら駆け付けてくれるように頼んでおいたんだ。間に合って良かったよ...
「それで? 殿下? 僕がどうしましたか?」
「い、いや、なんでもない...」
フウッ...なんとかこの場は凌いだけど、ルイス王子はきっと諦めてないよね...
これから厄介なことにならなけりゃいいけど...
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