結局その日は、更なる情報収集を続けるということでお開きになった。
相手がどんな手を使って来るのか予想できればいいんだが、そう上手くは行かないかも知れない。心の声を拾えればベストなんだけど、アイツらとは接点が無いから近寄れない。
変に周りをウロ付いて警戒されても困るしね。そもそも私が近寄りたくない。アイツら女と見れば決まって嫌らしい目で見て来るんだもん。不快感しか感じない。
そうこうしている内に、対抗戦の日が近付いて来た。ユミ王女はその頃になってようやく登校して来るようになった。
すかさずマリオ以下取り巻き連中が、ユミ王女に纏わり付くようになった。観察していると、やっぱりユミ王女には相手にされていないみたいだ。
それでもメゲずに纏わり付いている。ある意味健気というか諦めが悪いというか、判断の難しいところだ。
さすがに一国の王女にストーカー行為まではしてないと思うけど。そんなことしたら国際問題になるから、そこまでバカじゃないと思いたい。
◇◇◇
そしていよいよ対抗戦の日を迎えた。この日まで情報収集した結果、予想通りマリオは他のメンバー達に自分がカルロと戦うと宣言したそうだ。
それ以外は大した情報は集まらなかった。どういう手を使って来るのかも不明なままだ。
なので私は、カルロの婚約者という立場を利用して、選手の控え室に応援に赴いた。
「カルロ、しっかりね。怪我しないように」
「ありがとう。頑張るよ」
私はチラッとマリオ達の方に目を向ける。そして心の声に耳を澄ます。
『へへへっ! 仕込みは完璧だぜ! ヤツの剣には細工がしてある。一合切り結ぶだけで折れる仕組みだ。へへへっ! 見てやがれ! 大衆の面前で赤っ恥掻かせてやらぁ!』
なるほど、剣に細工したか。試合では真剣じゃなく模擬剣を使うから、途中で剣が折れても怪我することは無いが、整備不良ってことで不名誉な敗戦を喫するだろう。それを狙ったか。本当にゲスなヤツだ。
もちろんそうはさせない。
「ねぇカルロ、これが試合で使う剣?」
「あぁ、そうだよ」
「カルロが怪我しないように聖女の加護を付与しとくわね」
「それは助かる。よろしく頼むよ」
そう言って私は背を向けてカルロから剣が見えないようにした。加護を付与するフリをして、隣にあった予備の剣とすり替える。
「はい、終わったわ。頑張ってね」
そして細工されてない予備の剣の方をカルロに渡す。
「あぁ、頑張るよ」
良し良し。これでヤツらの企みは阻止できた。
試合が楽しみだ。
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