マナはセナと同じ精神病院送りになった。
セナと同じく一生出て来れないだろう。大司教様の命を狙ったんだ。オマケに私の命も。処刑されなかっただけマシかも知れない。
マナの実家の侯爵家は一気に二段階降格して子爵家に格下げになった。こちらも取り潰しならなかっただけマシというものだろう。
こうして一連の騒動に片が付き、聖女見習いの少女達も修行に集中できる...
「ちょっとアンタ! レイって言ったわね!? アンタ貧乏人のクセにデカい顔してんじゃないわよ!」
と、思っていたのだが...
「そ、そんなつもりは...わ、私はただ自分のことは自分でするようにと言っただけで...」
「うっさい! アンタら貧乏人はアタシらの言うこと聞いてりゃいいのよ! ウチのパパがどんだけ教会に寄付してると思ってんの!? アンタらがこうしてヌクヌクと修行できてんのも、パパがお金を出しているからなのよ! それ分かってんの!? 理解してる!? ならアタシらの仕事はアンタらがやるのが当然でしょうが! どうよ!? これでまだ何か文句あるって言うの!?」
私は頭が痛くなって来た...一気に捲し立てたのは平民の中でも富裕層である豪商の娘アミだ。取り巻きどもと一緒になって、レイを筆頭とする裕福とは言えない家の娘達と対峙している。
レイの実家は確か母子家庭だと聞いている。貧しい中でもレイを真っ直ぐな娘に育て上げた母親は尊敬に値すると思っている。
今度は身分差ではなく貧富の差か...どうやら人間というのは何かで差別しないと生きられない生き物らしい。ため息しか出ないが、哲学的に達観している場合ではない。
今まで私は聖女として聖女見習いの少女達の誰か一人を贔屓しないように心掛け、常に一線を引いて構えていた。それはレイに対しても同様で、レイの身に危険が及ぶような時は庇ったが、それ以外では平等に接して来たつもりだ。
だがもう止めた。大司教様があそこまで思い切った改革を始めたんだ。私も変わることにした。
「いい加減にしなさい!」
「えっ!? 聖女様!?」
今まで声を荒げたことが無い私が大声を上げたことで、アミはビックリしたような顔をしている。だがその程度で終わらせるつもりは勿論ない。
「あなた達、恥ずかしいと思わないの!? もしかして聖女の座がお金で買えるとでも思ってるの!? 全く嘆かわしい! あなた達のような汚い心根の持ち主は聖女に相応しくないわ! 即刻出て行きなさい!」
アミ達は真っ青な顔になって立ち竦んでいた。
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