セナの伯爵家は子爵家へと降格処分になった。
セナ自身は戒律の厳しいことで有名な修道院送りになった。神殿からの去り際にレイはセナから鬼のような目で睨まれていた。
私は震え上がるレイの体を抱き締めながら、聞きたくなかったが、聞こえてしまったセナの心の声はと言えば...
『殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる...』
延々とレイへの呪詛にまみれていて、聞いた私は背筋が凍る思いだった...そう、その様子はあの時のカナと全く同じだったのだ...
このまますんなり終わりそうに無いと思った私は、もう一度カルロに相談することにした。
◇◇◇
今日は街の清掃活動を行う日だ。私達は市民ボランティアと一緒に大きなゴミ袋片手にゴミ拾いに勤しむ。
セナが仕掛けて来るならここだと思った。なぜなら明日にはセナは修道院に出発するからだ。
またレイを囮にするような形になって心苦しく思うが、憂いを断ち切るためだ。我慢して貰いたい。
今回私は片時もレイから離れることはしないつもりだ。これ以上のトラウマを植え付けたくないから。怖い目には絶対合わせたりしない。そう心に誓った。
しばらく経つと私達の周りに、明らかに市民ボランティアとは違う動きをする連中が近付いて来た。ゴミ袋がゴミで膨らんでいないのだ。
私は近くに隠れているカルロに目で合図を送った。カルロの公爵家の私兵がそっと周りを取り囲む。
私とレイはゴミ袋が一杯になったので、ゴミ箱の置いてある場所に移動した。不審な連中が後を尾けて来るが、カルロが付いているので大丈夫。
ゴミ箱に到着してちょっと気を抜いた時だった。ゴミ箱の影から小さな人影が踊り出て来た。手に刃物を握っている。真っ直ぐレイに向かって来る。
私は咄嗟にレイの前に出て、ポケットの中でずっと握り締めていた痴漢撃退用の目潰しスプレーを人影に向かって噴射した。
「ギィヤァァァッ! め、目が! 目がぁ!」
目を抑えながら地面を転がり回るのはセナだった。まさか本人が直接仕掛けて来るとは思わなかった。
後ろを見ると、セナが雇ったであろう輩どもがカルロ達に組伏せられていた。
「リタ! 怪我は無かったかい!?」
「えぇ、私は大丈夫。レイも無事よ。カルロ、この子をお願い」
私は未だに転げ回っているセナを指差した。
「分かった。任せといて」
「レイ、また怖い目に合っちゃったけど、大丈夫だった?」
「は、はい、大丈夫です。聖女様が守って下さいましたし」
良かった。私はレイを優しく抱き寄せた。
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