家に帰ると三人娘が待ち構えていた。
何事!? と警戒したら、
「お、お姉様! お願いです! 聖女様の癒しの力で私を治して下さい! もう辛くて辛くて! もう嘘は吐きませんから! もうお姉様の持ち物を欲しがったりしませんから! お願いします!」
「り、リタ様! 私も是非ともお願い致します! 目を開けようとするともう痛くて痛くて! どうかどうか聖女様のご慈悲を! もう我が儘言ってカルロお義兄様を困らせたりしませんから!」
「り、リタ! 私達って幼馴染みで親友よね!? お願いだから聖女の力で私を治して! 瞼が塞がって前が見難いのよ! お願いよ! もうあなたとカルロの邪魔はしないから!」
なんのことはない、私に泣き付いて来たようだ。こんな時ばっかり下手に出るなんてね。しかも心の中では、
『フンッ! 今だけ! 今だけよ! この目の腫れが治まるなら、頭くらい幾らでも下げてあげるわよ! 約束? そんなもん誰が守るかっての! 治療させるための方便よ方便! ってかさ、可愛い妹がこんだけ苦しんでんだから、言われなくてもさっさと治しなさいよね! 全くもう! 気が利かないんだから!』
『フンッ! 治して貰えばこっちのもんよ! あんたの聖女の力はこういう時のためにしか役に立たないんだから、とっとと治しなさいよね! こんな顔じゃカルロお義兄様に顔向け出来ないじゃないのよ! 治ったらカルロお義兄様にうんと甘えるんだからね!』
『フンッ! 治して貰えばこっちのもんよ! 私はまだまだあんたの悪い噂を沢山流さなきゃならないんだから、立ち止まってる暇なんかないのよ! 治ったらもっともっとカルロにくっ付いてやるわ! コイツらに遅れを取った分を取り戻さないとね!』
こんなヤツらを治してやりたいなんて誰が思うよ? 私は聖女の力をこんなクズどものために使うなんて真っ平ご免だった。なので...
「う~ん...場所が目だけにデリケートな部分があるから、少しずつ治して行くしかないわねぇ。これから毎日私の所に来て頂戴。ちょっとずつ聖なる力を流し込んであげるから」
もちろん大嘘である。私なら一瞬で治せる。
「「「 そ、そんなぁ... 」」」
「嫌ならいいのよ? 無理にとは言わないわ。それとも強引に治療してみる? 失明しても知らないわよ?」
三人娘が無言になった。さすがに今のは堪えたようだ。ちなみにこんな腫れなんて時間を置けば自然に治る。私が何もしなくても。
それを知らないコイツらは、腫れが引くまで学校を休むだろう。その間、私はカルロとラブラブなバカップルを演じて楽しもう。
ざまぁ!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!